恋と暴力と日だまり( #noteでBL 3つのお題)
こんにちは! 今日はなみさんと楓莉-フウリ-さんの素敵企画 #noteでBL で小説を書いてみました。どうぞよろしくお願いします。これから毎月1回は書けるといいなーという願望。がんばります…! ここから他の参加者さんの作品が読めるようです↓
今回たくさんの参加者さんがいらっしゃるようで、緊張してます… ツイッ○ーであるジャンルのワンドロなどに参加したり主催したりはあるのですが、また別の緊張感がありますね。というか、お題が3つあってしかも一次のBL? なにそれハードル高くない? できるのかこの私に…と思ったんですが、せっかくの機会なので無謀な挑戦をしました() それでは、どうぞ。
「なあ、もういいかげんに帰れよ」
僕はブツブツ文句を言われながら、クッションを両腕で抱えて彼の部屋でごろごろと転がっていた。ここは日当たりもよくて居心地がよく、訪ねるといつも長居をしてしまう。
カイは口ではそう言いつつ、しょうがないという様子で本を読んでいた。
僕はSEプログラマーでリモートワークもできるので、パソコンを持ち歩けばどこででも仕事は可能だった。帰るきっかけを失って、もう3日になる。カイは塾の講師をしていて、昼間は空いているのでそれほど文句を言われなかったが、さすがに長居しすぎかなと自分でも思う。
けれど、すぐそばに彼がいてくれて、うららかな秋の日だまりでのんびりくつろげる時を手放してしまうのは、なかなか惜しいものがあった。
「そろそろ仕事に行くの? 留守番していようか」
「そうじゃねえけどさ。1人の方が落ち着くんだよ」
「だって、今日は会って1周年だろう? それにいい夫婦の日だから、一緒にいたいんだけど。これって、僕たちのためにあるようなものじゃない。
もしかして今日って休み? なら、記念でどこかへ行かないか。君と何か美味しいものでも食べたいな」
「え、なんで。俺達付き合ってないだろ」
僕が期待を込めながらまだ一緒にいたいと駄々をこねると、けげんな顔をされた。
「…え、そうなの」
僕はそれを聞いて固まってしまう。
「週2で致してるのに?」
「それは、今は関係ないだろ」
あれ? なんだか雲行きが怪しいような…
「いや、ものすごくあるよね、この話題。付き合ってなかったら普通しないでしょ」
「え? 俺らってセフレじゃなかったの。大体付き合おうなんて一言も言ってないぞ」
僕は、彼との著しい認識の隔たりに愕然としてしまう。
「ひどい… カラダだけが目当てだったんだ」
ショックを隠すため、とっさに両手で顔を覆って泣くふりをする。
「そこまでいい体してねえだろ、多少タッパはあるけど。大体この関係が始まったのだって、勝手に家まで来たお前が上に乗っかっt…」
「わー! 自主規制パーンチ‼︎」
僕はついカイの頬を殴ってしまった。
「‼︎ いってえ…お前、不意打ちすんなよ」
くそ、きれいな右ストレートだなと口の中の血をペッと吐く。
「…ごめん、大丈夫?」
「このくらい何ともねえよ。それより、俺はお前の事を何とも思ってないし、大体ササハラさんの事が…」
と言いかけて、口をつぐむ。
「え?」
「いや、何でもない」
彼はひらひらと手を振った。
「あの人とはもう別れたって言ってなかったっけ」
「…一方的にな」
僕はため息をつく。
「とっかえひっかえいろんな奴と会うのを止めればいいのに…」
「それは無理」
と即答された。
そう、カイはいわゆるビッチなのだ。しかも顔が整っていて両刀なので、残念ながら引く手あまたである。さっきの会話で、大変不本意ながら僕もその中の1人だった事が分かってしまったが…
ササハラさんというのは、カイの知り合いで警官というか刑事さんらしい。何年か前に組同士の抗争で、カイも構成員で戦っていた時に検挙され、その担当の1人が彼だった。そこで知り合って親しくなり、付き合う事になったようだ。
けれど、カイは交際中でも前と変わらずに誰彼かまわず会っていたので、愛想を尽かされてわずか数カ月で別れてしまったらしい。
遠目で何度か目撃した事があるけれど、僕よりやや背が低いものの(といっても僕も190センチ超えだが)、スラッとして弓道が似合いそうな人だった。直接話した事はないが、聞いた限りでは彼も未練があるようだ。そして、どうやらカイもたまにアプローチをしているらしい…
僕とカイはと言うと、マッチングアプリで知り合った。大学を卒業して、仕事を始めてもずっと恋人ができないので
「そんなんじゃ、一生結婚できないぞ」
と心配した友達があるアプリをスマホに入れてくれた。僕はそこで真剣に交際相手を探したが、残念な事にそこはヤリモクの輩が多かった。それで、カイにうっかり引っかかってしまったという訳だ。
僕は奥手で今まで誰とも付き合った事がなかったけれど、カイのプロフを見て会ってみようという気になった。彼の写真は目元を隠した状態で『素敵な時間を過ごしたいです』とだけ書いてあった。普通はそんな人はスルーするのに、顔を全て映していなくてもわかる器量の良さと、そのコメントに心を惹かれ、いいねを押してしまった。もしかすると、少し疲れていたのかもしれない。
そして会ってみたらトークもうまくて、すっかり虜になり、会って3回目で家に押し掛けて関係を持ってしまう。粗野だけどどこか寂しげな雰囲気で、自分と似たものを感じたのだ。
けれど、今はこんな状況になって早まったかな…と後悔している。
僕の両親はいわゆるネグレクトで裕福ではあったが、物さえ与えておけば子どもは満足だろうという考えだった。夫婦仲もよろしくなく、父は仕事を理由にほとんど帰ってこなかったし、それをいい事に、母も好き放題していた。
そんなケースを間近でずっと見ていたので、結婚願望がひとかけらもないまま育ってしまった。けれど、独り立ちして自活を始めると、人恋しさが募ってしだいに恋人が欲しいと思うようになったのだ。たとえ不誠実な恋人だとしても…
「君がいろんな奴と会っているのは薄々分かっていたけれど、浮気性なんだとばかり思っていた」
「いや、気づくだろう普通」
日頃の行いを棚に上げ、カイは突っ込みを入れてくる。「それに、どこにも出かけたりしてないだろ」
「え? そんなに行ってないかな」
思わず耳を疑う。
「だってそうだろう。俺かお前の家か、ラブホのどれかじゃん」
僕はガーン!と頭を殴られたような気がした。
「そ、そんな……僕は君の家に招ばれたり、招んだりできて嬉しいと思っていたのに」
確かに、屋内デートが多いなと思っていたけれど。あと、会う度にえっちしてるなあと……でも、比較できる対象がなかったから、付き合うってこういうものなのかと思っていた。まあ、何となくおかしいなと感じていたが…
「認識の食い違いって恐ろしいなあ」
うんうんと頷きながら、腕組みをしている。僕は悔しくて、他人事みたいな彼の態度を恨めしげに見つめた。
「じゃあ、お互いの認識を擦り合わせるために、とりあえずキスからはじめようよ」
近づいて顔を寄せようとすると、やめろ、とパンチが飛んできた。
「痛い! 殴ることないだろ⁈ 君のは重心がブレてなくて重いんだよっ」
「わりい、つい」
彼は誰とでも寝るくせに、あまりキスをしたがらない。
もともと武闘派で危ない仕事をしていたが、ササハラさんと知り合ってからは彼に振り向いてほしくて、塾の仕事に転職したらしい。
彼の事は何となく耳にはしていたけれど、悪癖に呆れられてフラれたと聞いていたからホッとしていたのに──今日はいい夫婦の日でもあるから、どこかの洒落たお店で夜景でも見ながら一緒に祝いたかったな。あーあ。
「僕は君の事をこんなに想っているのに、君は暴言とパンチばかりだね。愛し愛される日はいつ来るんだろう」
そうつぶやくと
「図体はでかいのに、ポエミーな事を言うんだな」
と言う。
「一応インテリキャラですから」
「フランケンみたいなのにな」
…ひどい。僕の恋人、暴言が過ぎませんか。──あ、彼氏じゃなかったんだっけ。とがっくり肩を落としてうなだれる僕に
「今度ハロウィンが来たら、頭にボルトが刺さってる風のカチューシャでも作ってやるよ」
ついでにツギハギのメークもしてやろうかと破顔する。無骨なのに手先はとても器用なのだ。
そのギャップさえ僕には刺さってしまう。それで素直に感謝を述べた。
「すき」
「知ってる」
…うわーっ‼︎ ありがとうと言おうとして、うっかり本音を言ってしまった! しかも『知ってる』って間髪入れずに!ちょっともうやだ…
「は? 何なの。バカなの。◯ぬの?」
「なんでキレてんだよお前。さっきも似たような事言ってただろ」
当然だと言わんばかりの顔でこちらを見ている。うわ、憎たらしい…
あーあ、なんでこんな人を好きになったんだろう。両手で顔を覆う僕に
「あれ、照れてんの?」
と冷やかすように言う。その嬉しそうな顔につい見とれてしまった。
ああ、敵わないなあ。どんなプログラミングより君の方が難解だよ。
──でも、いつか君が僕のことを振り向いてくれますように。
僕は、神様だか仏様だかに叶いもしない事をつい願ってしまっていた。
了
いい夫婦の日
右ストレート
ポエム
3つのお題でBL小説を書く
最後まで読んでいただきありがとうございました! 簡単にキャラクターの紹介をします(読まなくても大丈夫です)
ナオ:腕ききのプログラマー 頭がいい 身長190センチ位 人間関係がからきし苦手(なるべく人と関わらない仕事を選んだ)
奥手だが好きになると一途 今はカイに夢中
カイ:ナオの想い人 あまり表では言えない仕事をしていた。今は塾の講師。
ササハラの事が好き セッ…依存症ぎみ(過去に何かあった)男女構わず来る者は拒まず
ササハラ:ノンケだがカイの元恋人。絆されて付き合った。未練はあるが、カイが誰とでも寝るのは受け入れられない。元四課の刑事
二次のBLはよく書いているのですが、今回一次という事でなかなか筆が進まない…もっと長くしようとしたんですがすみません!💧もっと精進します。