罪悪感(ゲ謎二次創作 父水(若干センシティブ)
こんにちは。今日は二次創作小説を投稿します。ゲ謎で父水です。ややセンシティブなので、12歳以下の方はすみませんが読むのをご遠慮願います🙏
「っふ、ん…」
くぐもった声と、ちゅぷちゅぷという水音が聞こえる。水木はゲゲ郎の腕の中でどろどろに溶かされていた。
「んっ、む…」
口を合わせるたび、彼は素直に反応して体を震わせる。
「は…っ、」
それを感じるたびにゲゲ郎は自分の低い体温が上がっていくのが分かった。
彼の口内にぬるり、と長い舌を押し込む。
「んんっ…!」
水木はうっとりと半開きになっていた瞳を一瞬見開くが、また恍惚(こうこつ)とした表情でそれを受け入れた。
熱い。火傷しそうだ。
ゲゲ郎はぼんやりとそう思う。水木はこの舌を冷たいと思っていないだろうか。
そう感じると、こんな異形のものが懸想(けそう)して申し訳ないという気持ちが頭をもたげた。
儂(わし)の事を気味がわるいと感じないだろうか。蛇や爬虫類(はちゅうるい)のように冷たい肌の自分を…
水木はあの村での出来事で、以前とすっかり変わってしまった。野心にあふれて精力的な性格だったのに、今は白髪になり、物腰も柔らかくなっている。何より、あの窖(あなぐら)で幽霊族の血を大量に浴び、人間とは違う者に変化しつつある。青い虹彩がさらに薄くなり、犬歯が伸びて同胞と似た匂いを漂わせ、妖気さえ放ち始めていた。勘のいい者なら人間でも気づくかもしれない。そして、自分と交わる事でそれを加速させている。
儂と出会わなければ……あの戦いに巻き込みさえしなければ。否、汽車で出会った時にもっと強く忠告していたら、こんな事にはならなかったかもしれない。そう思うと、後悔の棘(とげ)がゲゲ郎をズキズキと苛(さいな)むのだった。
「どうした? ゲゲ郎…」
ほおを紅潮させ、ぼうっとした顔で彼が問う。
「……」
ゲゲ郎はそんな様子を目にして想いがつのり、紅く染まったほおをそっと撫でた。
「…?」
怪訝(けげん)な表情をするが、優しい手の感触にすり、と顔を寄せる。
名前を呼ぶと、ふふ、と笑いをもらした。
「なんでそんな目で見てるんだ」
「?」
「泣きそうな顔をしている」
「な…!」
そんな事はないと慌てて顔をこする。その様子をじっと見ていた彼はゲゲ郎に口づけした。
「…!」
「今は俺が目の前にいるんだから、俺の事だけ考えろよ」
そう言うと、不敵な笑みを浮かべる。その表情は以前の彼を彷彿(ほうふつ)とさせるものだった。
愛しさがぐっと込み上げて、ぎゅっと抱き寄せる。
「う…、苦し」
「! すまん、痛かったか」
小さなうめきを耳にし、慌てて手を離すとまたクスリと笑われた。
「…初めて会った頃と全然違うな」
「儂(わし)が?」
「最初は何を考えているのか分からん妙な奴と思ったが」
今はとても分かりやすい、と腕をからませてくる。少々ムッとしながらもその背中に腕を回した。
──お主の心配をしておったのに、人の気も知らんで。
そう思うが、なんだか幼稚な気がして言わずにおく。
けれど、彼は前よりずいぶん表情が柔らかくなった。それだけでも僥倖(ぎょうこう)だが…
もしも人間でなくなってしまったら、彼の居場所も消えてしまうかもしれない。そう頭で理解していても、ゲゲ郎は今の幸福を手放したくはなかった。
「水木や、」
そう問いかける。
「なんだ」
「お主が欲しい」
すると、ハッと息を飲んで瞳を揺らめかせ、やがて何かを決意したような顔をした。
もしかして、自分と触れ合う事で変化しているのを無意識に感じ取っていたのかもしれない。そう気づいて、言葉を取り消そうとするゲゲ郎に彼は言う。
「やだね」
そして、ゲゲ郎を強く抱きしめた。
了