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インクトーバー2日目 『発見』 ボクの魔法少女

※作品の一部に、読む方によっては不快に思われる表現があります。不安な方は、読むのをお控えになった方がよいかと思います🙏

 こんにちは!今日はインクトーバー2日目『発見』で短編を書きました。ワードが1つだと広がらなかったので、診断メーカーで出たワードを2つ足しました(結局3つのお題と同じ…)
 それでは、どうぞよろしくお願いします。


 僕はふらつく足取りで家路についていた。同じクラスの宇田うだに殴られた頬がジンジンする。
「ちくしょう…あいつ、思いきりやりやがって…」
 と、何かが近づく気配がした。顔を上げると、ウーパールーパーのようなものがこちらをじっと見ている。

「…え?」
 何だろう。ぬいぐるみ? いや、宙に浮いているぞ、こいつ…
「君、何か困ってるみたいだね。ボクが助けてあげようか」
「は? しゃべっ…」
 言葉を話してる? 何なのこれ…
「ボクはフワミンだよ。今、メンバーを探してるんだ」
「何の?」
「魔法少女になってくれる子」
「…は?」

 思考が追いつかない。しゃべるぬいぐるみが、魔法少女になる人を探している…?

「え、ちょっと待って。『少女』って言った?」
「うん」
「僕は男だよ。男子高校生」
「そんなの見れば分かるよ」
 分かってて声をかけるって、どういう…

「あ、なるほど」
 ポンと膝を打つ。
「変身したら女の子になるんだ?」
「ううん」と、それ・・は首を振る。「そのままだよ」
「そのまま」
「うん。むしろ成長する」
「えっ」
「成人してムキムキになる」
「ま、待って。衣装は?」
「もちろん、ミニスカートでフリフリの衣装だよ」
「えっっ」
「だって、魔法少女と言えばそうだろう? ヒラヒラのフリルがついた、可愛いらしいコスチュームだよ」
 当然といった顔で、ウーパールーパーは答えた。

「それっておかしいんじゃない? 誰得?」
「誰得とかないでしょ。ムキムキだから、敵も倒しやすいし」
「魔法少女は魔法を使うから、筋肉質な必要ないんじゃね?」
「肉弾戦になったら筋肉がある方がいいじゃないか」
 まあ、そうかもだけどさ…
「だけど、ミニスカートでロングブーツ?」
「そうだね。君が望むなら、ロングブーツにするよ」
 ウーパーはうんうんと頷いている。
「いや、しないけど! 男の必要性ないよね」
「それはボクの趣味です」
「は?」

 ウーパーは咳払いをした。
「いや、男子の方がこういうシチュで燃えるかなって」
 ないよ。燃える要素0だろ。
「…それで、なるって人いたの?」
「うん。何人か」
「いるのかよ!」
 …変態かよ。そうか、そうだなきっと。
「えーとね、小3の男の子と30代のサラリーマン」
「個人情報ガバガバなんだけど! 大丈夫⁇ てか、大人でもいいんだ?」
「ねえ、君もなりなよ。魔法少女」
と、そこは無視してウーパーは勧めてくる。
「だからいいって」
「君、ドブの中に咲く1輪の睡蓮すいれんにならないか?」
「…何かいい感じな風に言って言いくるめようとしても無駄だよ。誰が睡蓮すいれんじゃ」
「…チッ」
「え、今舌打ちした?」
「気のせいだよ」
 ウーパーは張り付けたような笑顔を見せる。
「君は理想にぴったりなんだ。100人に1人の逸材いつざい! 君を見た時、この子だ‼︎  って思ったのさ」
 いやー発見できてラッキーだったなあ、と嬉しそうだ。なんだか微妙な気持ちになる。
「理想って?」
「いじめられっ子で真面目そうで、何かをこうしたい! って願望を持ってる子」
 ぴったりじゃん、僕。

「でもさ、なんで男なんだよ。女の子を誘えば?」
「女の子を戦わせるなんてかわいそうじゃないか! ケガするかもしれないんだよ。下手したら死んじゃうかもしれないし」
憤慨ふんがいした。
「男ならいいのかよ…」
「じゃあ君は、女の子を戦わせて自分は隠れているつもり?」
「──いや、それはない」
「そうだろう。だから、君がなればいいんだよ」
「◯◯ライダーとか◯ル◯◯◯ンとかそういうのでいいじゃん。なんで魔法少女?」
「変身するのは、女の子の方が可愛いじゃないか」
 もはや意味不明だ。
「なりません。絶対」
「えー…じゃあしょうがない。
もう1本ステッキをあげるよ」
とステッキを2本取り出した。全体的にパステルカラーで、星やリボンのついた可愛らしい形のやつだ。一番上のハートが、振るとクルクル回り出しそうだ。
らんわ! 1個でも要らんのにもう1個なんてどうすんねん! TVショッピングかよ!」
「仲がいい子にあげるんだよ。そしたら2人で魔法少女できるじゃん」
「いや友達も要らんて言うわ!」
「えー、そうかなあ」
と不服そうだ。
「じゃあさ…」と何か言っているうちに、辺りがなんだかぼんやりしてきた。

「……」
 僕はぼーっと天井を見ていた。
 あれ? さっきまで帰り道を歩いていると思ったのに…。
 なんだ、夢か。ちょっとほっとした。

 ふと横を向くと、ウーパーが持っていたステッキが目に入る。
「……えっ⁉︎
 うわっ‼︎ 怖っっっ‼︎」
 思わず悲鳴を上げ、飛び退く。そしてそーっと部屋の窓を開け、外へ投げ捨てた。ちょうど下の道を通っていた車の上に落ち、そのままどこかへ行ってしまう。

「ああーーっ‼︎」
 窓を閉める時、どこかでウーパーの悲鳴が聞こえた気がしたけど、きっと気のせいだろう。
「やれやれ」
 僕はそう言うと、朝ごはんを食べようと階下かいかへ降りていった。

発見
魔法少女
睡蓮
の3つのお題で小説を書く

                了

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時雨
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