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Photo by
tecteckpoo
先輩と後輩 (二次創作 ショートショート)
斜線堂由紀先生の、不純文学(先輩と後輩の話)をオマージュして短編を書きました。支障があったら消します🙇♀️
私は所用で先輩を校内で探していた。先輩は3つほど部活を掛け持ちしているので、心当たりの場所へ行ってみる。けれど、いつも「さっきまでいたんだけどね」と言われる。
その代わり、先輩の一部や先輩に関する噂を見つけたり耳にしたりする。
曰く、『先輩は執行部に入り浸って銀英伝を読みふけっている』
『仲間と同人誌を作り、そのほとんどの原稿を自分で描いている』
『ショートカットでボーイッシュだけど、生け花が得意だ』
『遅刻魔で、待ち合わせに必ず1時間遅れる。けれど、他の人が遅れるとすごく怒る』
そんな話と一緒に、先輩の影や視線、笑い声、ため息、足音、香り、風になびいた一房の髪なども手に入れる。それらが混ざり合い、私の中で先輩のイメージが膨らんでいく。
けれど、それは本当の先輩と同じなんだろうか。聞いた話はどれも当てはまりそうだし、そうではない気もする。
先輩と直接話したい。イメージと本物を擦り合わせたい。そんな気持ちが膨らんで私の脳内を占める。
私は先輩の欠片たちとイメージを集めながら、所属している地学部の部室でつぶやく。
「先輩に会いたいなあ」
その時、不意に部室のドアがガチャリと開いた。
了
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