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サンタがいてもいなくても

今年に入ってから、絵本と児童書に関わるたくさんの素敵な方たちと出会いました。

なかでも、なんだか憧れのような気持ちを抱いている方がいます。

松岡享子さん。

長年にわたって、児童文学の研究、翻訳、創作活動をしてこられた方で、今年の1月にお亡くなりになりました。

松岡さんの声や言葉にふれると、なんだかふわっとやさしい気持ちになります。

そして松岡さんの残されたたくさんの本を読みながら、ああ、お会いしてみたかったな…と思います。

先日のこと。

銀座にある教文館“ナルニア国”で、松岡さんが書かれた『サンタクロースの部屋』という本がふと目にとまりました。

そこには、サンタクロースが実在するかしないかが重要なのではない。幼い時に、サンタクロースを心に住まわせること、目に見えないものを信じることで生まれる心の空間こそ、かけがえのないものなのだと、書かれていました。

冒頭を読んで、わたしはなんだか胸がいっぱいになってしまいました。

「本当はサンタはいやしないんだ…」とむなしい気持ちになる必要なんてない。
(そのむなしさだって本当はかけがえのないものだけれど…)

でもたとえサンタクロースが心から出て行ったとしても、そこにはたくさんのふしぎが住んだ宝箱みたいな空間が残るんだ。
その宝箱さえ持っていれば、これから先の人生で出会う不思議でわくわくするもの、泣けちゃうくらい美しいものをたくさんたくさん、その中にしまうことができるんだから。。。

お店で思わず泣きそうになるのをぐっとこらえました。

この本と出会えてほんとうに幸せです。
わたしの宝箱にしまっておくんだっ。

そして、これはほんとうに大事な、いろんなことのヒントになるような言葉だと感じたので、シェアさせてください。

トリック撮影のフィルムでは、空飛ぶ主人公のうしろに、見えないはずの針金をいち早く見つけて、もっと幼い弟や妹の夢を無情に破るその同じ子が、お話の時間には、月の精のつえのひと振りで、冬の森が瞬時に春へと変わるのを、息をつめて見守るのである。本当らしく見せかけることによってつくられる本当と、本当だと信じることによって生まれる本当を、子どもはそれなりに区別している。

『サンタクロースの部屋 子どもと本をめぐって』
松岡享子著


とても巧みに本当らしくつくられたものが溢れる世界の中で、それでもわたしたちは、

ひとが心の底から信じて生まれた奇跡のような
“本当”をちゃんと知っているし、

大人になったいまだって、

そのキラキラと輝く“本当”をずっと探しているような気がするのです。


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