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不妊治療の格差について

リプロダクティブ・へルスの業界に入ってから、いくつかの格差に疑問を持つようになりました。
新参者だったから感じた事なのか? それとも業界のタブーなのか? 
よくわからないけれど、これまであまり議論されていないようなので敢えて書いておこうと思います。

男女間の格差

歴史的に日本の不妊治療は女性側の対応が中心で、診療科としては産科婦人科が牽引してきた経緯があります。

近年やっと男性不妊がクローズアップされるようになりましたが、
「妊活の意識」は未だに男性側が大きく劣っているように見えます。

これはあくまでも個人的な見解ですが、そう感じる根拠として、

「不妊検査の意識」
・不妊治療を開始する際に女性単独で受診し、男性が同時に検査しない。
・遅れたタイミングで検査をしても精子機能検査や定期的検査には消極的。

「セミナーや市民講座への参加者」
・参加者は大半が女性。男性パートナーの当事者意識が希薄。

「ヘルスケア面」
・禁煙やB M Iの改善などに無関心。

「メンタル面」
・不妊治療の過程でメンタルの不調をきたすことが女性より大幅に少ない。

これまではこのような傾向だったと思います。

不妊治療では、人工受精〜顕微受精の治療を何度行っても反復不成功となり、不妊治療が長期化するケースがあります。
もし、男性因子が原因だった場合、女性パートナーに本来は不必要な過負荷がかかり、多大なダメージを与える事になります。
このような「悲劇を生む格差」は絶対に解消しなければなりません。

私たちが取り組んでいる「精子力改善プロジェクト」の成果物は女性の負担軽減につながるテクノロジーで、女性のQ O L向上の視点では
「フェムテック」の領域と重なっているように思えます。


経済的な格差

これも非常に嫌な言葉ですね。

「不妊治療は短期勝負」という言葉があります。
35歳の壁などの年齢的要素を考えても、的を得ています。

その一方で現実的には「意に反して長期化する」ケースがとても多くなっています。
また不妊治療経験者からは短期勝負なので「良いと言われることは全部やるべき」というアドバイスをよく聞きます。
(エビデンスや根拠が重要ですが)全く同感です。

私が言いたいのは「不妊治療が長期化」するとお金の負担が重くなり、
「良いと言われることを全部やろう」としてもそれなりのお金が必要になるということです。

不妊治療に必要となる費用は、生活費「衣食住」と比較しても、決して小さくありません。日本の妊活世代の世帯収入では、誰もが十分な費用を捻出できるものではないのです。

また世界に目を向けると、数10万円もするサプリメントを摂取している世帯が多くある反面、経済的理由で「不妊治療を行いたくても出来ない」世帯がその何10倍もあるという現実があります。

少なくとも少子化が深刻な日本では、不妊治療の経済的格差を解消するために、より強力な施策とイノベーション製品・サービスを幅広く普及させるための支援を強化していただきたいと思います。

居住地域の格差

日本では不妊治療において「居住地域による格差」と聞いてもあまりピンとこないかも知れません。

しかし、男性不妊となると明らかに地域間格差があると言えるでしょう。
男性不妊の生殖専門医は全国で70名ほどですから、居住地域に男性不妊外来がない地方都市は少なからずあります。

また産科婦人科においては離島などで不妊治療を受けることができないという地域や、地方都市ではセカンドオピニオンや転院が難しいケースもあるようです。

海外に目を向けると、中国では不妊治療を受けられない理由として「居住地域に生殖医院がない」が「経済的理由で受診できない」という理由よりはるかに多いと、武漢で行われた中国男科学会全国大会で聞きました。

私たちは、このような社会背景を認識した上で「不妊治療の格差解消」の一助となる、ソリューションを提供したいと考えています。

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