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お猿さんのピクニック

子供の頃、父と祖母と祖母の妹の大叔母と私で山形県からの帰り道、車の中から落ち穂拾いをする猿の大群を見たのだ。


今はもう田んぼではなく何かイベントをする為の大きな建物が立った場所がまだ田んぼだった頃、西日が綺麗に指す田んぼに猿の大群が落ち穂拾いをしていた。


それはさながら幾つもの家族連れがピクニックをしているようだった。


「○○お猿さんがピクニックしてっから見てみろ」

父が笑いながら言った。



お父さん私もそう思った(笑)




あんなにも西日が綺麗でのどかで楽しそうな自然の風景をもう見れないのはとても残念に思う。

そして一緒に見た祖母も父ももう居ない。自然の摂理とはいえ、なんと切ない事か。





時間はすすんで私の子供達が中学生と小学校で反抗期真っ盛りな時期。

上の子の凶暴な言葉使いと態度に日々辟易していた頃だ。もちろん学校にも行きたくないと毎日泣いて喚いて罵詈雑言を繰り返し、私にも多少の反抗期の態度に身に覚えはあるものの、さすがに困り果てていた。

下の子も下の子で上の子の不安定さに心を乱されたのか引き摺られるように反抗期を迎え、矛先は母親では無く担任の先生に向けられ何度も担任の先生と教頭先生と私で三者面談をした。


全部捨てて楽になりたいくらい本当に本当に疲れていた。


そして迎えた夏休み。


その年は雨続きで、ずっと梅雨が明けず毎日毎日雨ばかりだった。軒並みプールも低温の為中止になり本当に憂鬱だった。


そんな折に下の子が暇を持て余し何処かへ行きたいと言う。


何処に?


聞き返すと山形にラーメンを食べに行きたいと言うことだったのでついでに実家の両親も誘う事にした。


両親は急だったにも関わらずふたつ返事で了承してくれた。


その日は子供達もちょっと調子が良かったようで上の子は眠いからお留守番をすると家に残る事に。いつもの嫌味も罵詈雑言も無く「猫と留守番してる〜」と眠そうにゴロゴロしていた。

一人になり気持ちをリセットする良い機会だと思い私もそれ以上は何も言わなかった。



下の子と二人で実家に両親を迎えに行きそのまま山形県へ。


下の子も祖父母と一緒に山形へドライブと言う事でいつもよりよく喋り、担任の先生と気が合わないと2人に力説していた。


うん、まぁそうだと思ってたけどあれはやり過ぎ。

などと思いながらもあまり口出しはせず私は3人の会話の聞き手に回っていた。


山形県に入りいつもラーメンを食べる道の駅に入り3人は辛味噌チャーシューメンと私は天ぷら蕎麦を食べた。


ゆっくり清々しい気持ちで食べた蕎麦は凄く美味しかった。


父はビールを飲み上機嫌になり下の子に串焼きやらアイスクリームなども追加で買ってあげていた。


併設されている地場産品売り場で私は上の子の大好物のマスカットとサクランボを購入し、両親も色々な品種の1合米やら果物やら山形のお菓子を買い込んでいてご機嫌だった。


帰り道、久しぶりにチヤホヤされ機嫌が良くなった下の子は寝てしまい、まったりと静かな帰り道、この辺に猿の群れいたんだよなぁ。なんて思いながら七ヶ宿を走行中に父が不意に言ったのだ。



「○○ここさ猿の大群いたの覚えてねか?」


覚えてるよ。ここ通るたびに猿の大群を思い出すよ。


「稲刈り後の残りば集めて食ってたっけなぁ。あれは100頭近くは居たな」


そんなんいた?(笑)


笑いながらそんな話をした。またまた父と考えた事ががシンクロしたなぁなんてちょっとワクワクした。母もそんな事があったのかとニコニコしていた。


その日は曇りで小雨が降るジメジメした暑い日だったけど、あの時、祖母達と一緒に見た西日と猿の大群がはっきりと思い出された。綺麗でのどかな風景だった。



その後もダムの話や山菜の話、キノコの出るポイントや父が電柱を建てた話などをしながら宮城まで帰って来た。久しぶりに楽しい日だった。


あと何回こうして両親を連れて何処かへ思い出話し等をしながら出掛けられるのかと考え、ちょっと切ない気持ちにもなった日だった。



まぁ結局、その日が最後だったのだけれど。



お猿さんのピクニックを覚えているのは私だけになってしまった。祖母が旅立ち父も旅立ち大叔母は生きてはいるけど痴呆症が進み夢の中の住人になってしまった。


本当に楽しい日だった。私はずっと覚えているよ。



子供達の反抗期はその日を堺にピタリと終わった…はずも無く、緩やかに激しい日とちょっとマシな日を繰り返しゆっくりゆっくり落ち着いて行った。


お土産のマスカットとサクランボは美味しい美味しいと喜んで食べていた。猫とたくさん寝た。とちょっと満足げだった。

良かった。久々にみんな笑顔だ。そんな事を思った日だった。



もう見れない幼い日のあの綺麗でのどかな光景は、子供達の反抗期の苦しい思い出と、両親と下の子と行った楽しい山形までのドライブの思い出と、猫を抱っこしながら久しぶりの笑顔でニコニコとマスカット食べる上の子の思い出を上書き保存し、色々込み込みセットで私の心の中に大切にしまって置く事とする。













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