芸人の人生は小説によく合う
今月刊行された「夏のピルグリム」には、芸人さんが登場します。具体的に言うと、漫才師です。
子供の頃からお笑いが好きで、今でもたくさんのお笑い番組やYouTubeを観ます。特にブレイク直前の漫才師が好きで、彼ら(彼女ら)が自分の予想通りに売れてくると嬉しくなります。最近では、千鳥、かまいたち、令和ロマンに注目していました。みんな有名になっちゃいましたねえ。
まあ、僕が知っていた時点で、千鳥やかまいたちは大阪では人気になっていたのですが。
若くして売れた令和ロマンは別にして、千鳥やかまいたちは下積み時代が長く、売れるまでの彼らの努力と、売れてくるにつれて彼らが成長する過程を見ているのは楽しかったです(今でも、もちろんおもろいですが)。
売れていく漫才師を追いかけているうちに、売れない漫才師にも興味を持つようになってきました。
テレビに出演している芸人は全体のごくわずかで、ほとんどの芸人はたまにステージに立つだけでアルバイトで生計を立てています。
そこから売れる芸人もいれば、売れずに辞めていく芸人もいます。
いつかそうした芸人の姿を小説で描きたいなと思っていたところ、「夏のピルグリム」の主人公である夏子が成長するのに、売れない若手芸人との出会いが良いと思い、漫才師「ボナサンズ」を誕生しました。
モデルにしたのは、大阪時代のかまいたちですが、ネタを作っている方が背の高いツッコミとか微妙に設定を変えています。
ふたりの雰囲気は、アニメ「オッドタクシー」に出てくる漫才師「ホモサピエンス」を参考にしました。「ホモサピエンス」はダイアンのふたりが声優しています。当時のダイアンは全国的にはまだ売れていなかったので、「ホモサピエンス」のふたりの雰囲気とピッタリとマッチしていました。
ボナサンズの漫才のネタは、オリジナルです。いくつかのネタを考えて、その中で自分が面白いと思ったネタを本作で採用しました。普段からくだらないことばかり考えているので、こういうネタならいくらでも思いつくんですよね。笑えるかどうかはさておき。
ボナサンズのふたりを書いているときは楽しかったですね。キャラが立っているし、漫才師の丁々発止のやりとりはリズムがあって書きやすいですし。このふたりだけで小説が一本書けそう。
30代の売れない漫才師が人生を語るセリフがかっこよくて、自分で書いたのに痺れます。
他にもたくさんの魅力あるキャラが登場するので、ぜひ「夏のピルグリム」を手に取ってみてくださいませ。
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