Shima Kotobuki

主に日本史学に関する自身の見解を先人の先生方の先行研究に基づきながら綴っています。 な…

Shima Kotobuki

主に日本史学に関する自身の見解を先人の先生方の先行研究に基づきながら綴っています。 なお,私のnote記事は参考文献及び注に挙げた先行研究に大きく準拠しており,自身の見解の優越性や独自性を必ずしも主張致しません。

最近の記事

「神保町」

序  地下鉄神保町駅は、都営新宿線と東京メトロ半蔵門線の両線が乗り入れている駅で、ちょうど隣の駅である九段下駅もまた両線が乗り入れている。こうした駅が珍しいのかはわからないが、日頃より同じ地下鉄に乗り、決まったルートでしか電車を利用しない私にとっては、おもしろい構造である。  神保町駅のA5番出口から左方向に歩き、信号があるのでそれを渡ると、坂に差し掛かる。両側に飲食店やマッサージ店を構えるその坂を、下から上にほんの少し歩みを進めると道路に突き当たるから、そこを更に左折する

    • 濹東綺譚と草迷宮

      『墨東奇譚』において,女性は,私娼窟の女と特にお雪の存在が挙げられる。まず,永井荷風は,この私娼窟をどのような認識で捉えていたかについてだが,これは玉ノ井のトポロジーに則って考え,「大江匡(=荷風)が平素,居にしているところから離れた”別世界“」ということが出来る。ここで私は,この玉ノ井に居住している私娼をも別世界の住人であり,俗世(=作家荷風の本拠地)に飽き飽きしていた荷風にとって,いわば渇望するものであったといいたい。つまり,多くの俗世の男性にとって,玉ノ井は風俗街として