見出し画像

リメンバー【Face to Face】陽転思考

昨年12月の【Face to Face】メッセージは、「陽転思考」でした。この言葉は、悪いことがあっても、忘れよう、考えないようにしようということではありません。悪いことも1つの事実として受け入れて、その事実からいい面と悪い面の両方を考え、自分で選択していく考え方です。原子爆弾が投下された広島の街の中を、3日後には運転を再開させた路面電車があります。焼け野原という最悪の状態から、生き残ったことで何ができるかを考え努力された関係者は、「陽転思考」の考え方そのものを実践されているようだと思いました。

December 2023

陽転思考

 2023年も今月で終わりになります。今年は新型コロナウイルスの規制が解除され、忘年会なども集まって行われるようになってきました。やっと通常の年末年始を迎えるようになってきたと感じるようになりました。これからクリスマスシーズンを迎えるので、人の往来も多くなってくると思います。日本では新型コロナウイルスの脅威から開放され、平和な生活を送ることに嬉しさを感じていますが、世界の中では戦争で苦しい生活をされている方々も多く存在しています。そんな平和を感じることができる日本ですが、過去には戦争を始めたという苦い経験もあります。82年前の12月に米国ハワイの真珠湾にある米国海軍へ奇襲攻撃をかけ太平洋戦争へ突入したのでした。この戦争も、日本全国への大規模な空襲や広島・長崎への原子爆弾の投下により、終戦を迎えることとなっていきました。敗戦した日本は、空襲で焼け野原となった苦しい時代から今のような経済大国へと発展してきました。そういったことを考えると、私たち日本人には「苦しい局面を何とか打開しよう」と強く思う気持ちが存在しているように感じます。それは地震や台風などの自然災害にあった時も同様に感じます。このようなことを考えていた時に、ある雑誌の記事の中に「陽転思考」という言葉を見つけました。「陽転思考」とは、マイナスの事実からプラスの側面を探し出す思考法だと説明されていましたので、少し詳細を調べてみることにしました。

 「陽転思考」は、「悪いことがあっても、忘れよう、考えないようにしようということではありません。悪いことも1つの事実として受け入れて、その事実からいい面と悪い面の両方を考え、自分で選択していく考え方です」と説明されています。ポジティブシンキングに似ているなと感じましたが、さらに解説では、「陽転思考とポジティブシンキングの違いは、起こった事実を受け入れるか、受け入れないかの違いです。陽転思考はネガティブなことも受け入れて、その中からいい面と悪い面を探します。ポジティブシンキングは、ネガティブなことがあっても、ネガティブと考えずに、ポジティブに変換する考え方です。そのため、ボジティブシンキングは起こったことに対して、長所の部分しか目を向けません。陽転思考とポジティブシンキングは似ているような気がしますが、事実を受け入れるか受け入れないかの違いがあるのです」と述べられています。私たちは日頃、生活している中でも「起こってしまったことは仕方がない、これからどのようにしていくかだ」ということを言ったりします。この表現は、「陽転思考」に当てはまるような気がします。スポーツの世界でも同様な考え方が取り入れられていると思います。試合などに負けてしまったときには、なぜ負けてしまったのだろうかと、その原因を追究するのではなく負けたことで課題が分かり、その課題を克服するための練習を行うようなところなどです。野球やサッカーなどのチームスポーツでは本番の試合ではなく、練習試合をよくやります。これは練習だけでは実際の試合とは異なるので、実際の試合をすることで、練習では気が付かないことに気付けるというものです。ここにも「陽転思考」の考え方がうまく取り入れられていると思います。試合で負けるということはマイナスのイメージがありますが、負けたことにより自らの弱点が認識でき、その弱点を改善していけばプラスになるということだと思います。

 冒頭で、少し戦争の話をしました。太平洋戦争は、日本全国への大規模な空襲や広島・長崎への原子爆弾の投下があったことで終戦を迎えました。トップの写真は、広島の原爆ドームとおりづるタワーです。

広島の原爆ドームとおりづるタワー(2019年12月撮影)
元は広島県産業奨励館として市民に親しまれていた原爆ドーム

原子爆弾が投下された広島の街の中を、3日後には運転を再開させた路面電車があることをご存じでしょうか。原爆投下で焼け野原となった街にも関わらず、そこから復興へと立ち上がる市民を大いに勇気づけようと運転再開に向けた復旧作業が懸命に行われたそうです。焼け野原という最悪の状態から、生き残ったことで何ができるかを考え努力された関係者は、「陽転思考」の考え方そのものを実践されているようだと思いました。この被爆しながらも復活した電車は、いつしか「被爆電車」と呼ばれるようになり、復興へと歩みだした広島の街を支えてきたそうです。そして現在でも被爆電車はこの街を走り続けています。この被爆電車は「650形」という車両で、広島瓦斯電軌(ひろしまがすでんき)株式会社、現在の広島電鉄が所有しています。四角いボディーでありながら全体的に丸みを帯びた車体は、今でこそクラシカルに見えますが、完成時はモダンなデザインだったそうです。現在では、被爆電車を通じて平和を学び、そして伝えてほしいという願いを込めて、「被爆電車運行プロジェクト」が開催されています。プロジェクトは「被爆者の高齢化が進む中、未来の世代に平和について考えてもらうきっかけになれば」という思いで、毎年8月6日に開催されています。復興のシンボルである被爆電車が被爆地・広島を走行する模様を国内外に届けることで、「平和の尊さ」を発信しているそうです。被爆電車の2両は現在でも現役として活躍しているので、広島へ行かれた時には乗車されてはいかがでしょうか。その当時の関係者の「陽転思考」を感じることができるかもしれません。

平和記念公園は、旧太田川(本川)が元安川と分岐する三角州の最上流部に位置し、原爆死没者の慰霊と世界恒久平和を祈念して開設された都市公園です。被爆後、恒久平和の象徴の地として整備されました。
おりづるタワーは、原爆ドームと広島市の素晴らしい景色を一望できる建物で、その名の通り折り紙の鶴がテーマになっています。平和への静かな祈りを込めて折った折り鶴は、「おりづるの壁」の中に投入できることで有名です。

 「陽転思考」について説明してきましたが、私たちは無意識に、この考え方を活用している場面は多々あるようにも思います。最初の方で述べた「起こってしまったことは仕方がない、これからどのようにしていくかだ」というような考え方は、よく使う表現だと思います。失敗してしまったことは、どんなに考えても取り返しがつかないことですから、次にどうするかを考えるということは必要です。しかし、その後も同じ失敗をしてもよいということではありません。失敗した瞬間をどのように対応していくかを考えることは優先事項ですが、もう一つは失敗に至った原因を課題として捉え解決策を考えることです。「陽転思考」では、失敗したことを考えるのではなく、失敗に至ったのはどこに課題があったかを認識し、その課題をどのように克服するかという前向きな取り組みに変えていくということだと思います。課題が克服されることで、同じ失敗を起こさなくなるということです。私たちは課題があることを問題視することが多くありますが、課題があることが問題ではなく、課題を放置したり、解決策を考えていなかったりしていることが問題だと思います。課題を解決するために行う行為は、前向きな対応だと思います。小さな失敗から多くの課題をみつけ解決していき、小さな成功を多く作っていくことが重要です。小さな成功を積み重ねることで大きな成功をつかみ取ることができると思います。

 今回のメッセージでは、被爆電車の写真は掲載できませんでしたが、原爆の悲惨さを伝える原爆ドームと平和を象徴するようなおりづるタワーの写真を掲載させていただきました。また、戦艦大和を造った街としても有名な呉市へも訪問した際の写真も合わせて掲載させていただきました。原爆の被害を乗り越えて発展してきた広島へ、再び訪れたいなと思いました。

大和ミュージアムの真正面にある「てつのくじら館(海上自衛隊呉史料館)」。 見て、触って、体感できるのが特徴で、陸上展示された潜水艦「あきしお」は内部に入ることができ、潜望鏡から呉港の景色を見る貴重な体験もできます。
呉湾 艦船めぐりでは、クルージングで海上自衛隊の潜水艦や護衛艦など呉湾に停泊する海上自衛隊の艦船に大接近できます。停泊している潜水艦も写真のように間近で撮影することができました。

あとがき

 失敗を恐れて何もしないことは、失敗するより恥ずかしいことだと思います。失敗を想定した通りの結果が得られなかったこととして考え、想定通りの結果を得られるために努力を続けていくことが、「陽転思考」になるのではないでしょうか。


いいなと思ったら応援しよう!