私が伝えたい「青森ヒバの温度」を求めて 店長の青森訪問記録
「私が伝える青森ヒバに「温度」を加えたい」
そう思ったのはIKEAでまな板をみたことがきっかけでした。
700円で木のまな板が買える。300円あればプラスチックのまな板が買える。そんな世界で、1枚1万円もするような「青森ヒバのまな板」を選んでいただく。
そのために私にできることはなんだろう。青森ヒバのまな板が、選んでくださった方の暮らしにもたらす「価値」をどれだけお客様に届けることができるだろうか。
私からお伝えする「青森ヒバ」にもっと熱い「温度」を加えたい。青森ヒバの魅力をもっと深くお客様に届けたい!そんな想いで青森へ飛びました。
青森ヒバで建設された「青森市森林博物館」の居心地の良さ
青森は関西より過ごしやすいとはいえ、まだ9月の汗ばむ季節。にも関わらず、青森ヒバで建てられた博物館の館内は、窓を開けているだけの状態でカラリとすがすがしい空気感。
隅々まで手入れが行き届いた館内に建物自体への強い思い入れを感じ、その居心地の良さは時を忘れてしまうほど。青森ヒバの高い調湿性とリラックス効果を、無意識のうちに全身で感じていました。
今回案内してくださったのは、森林博物館の下村館長
実は訪れる前から、突然の電話にも関わらず、見ず知らずの私に親切にしていただき、子連れの3泊4日で訪問可能な、ヒバの現地情報を教えてくださいました。(何度も電話でお話したので、私はもうすっかり仲良しの気分。)
とても柔和で、ずっとやわらかな笑顔。お昼寝から起きた娘も人見知りせず、そばでお話を聞くほど居心地が良いところでした。
古くから暮らしのなかにあった青森ヒバ
青森市森林博物館には青森ヒバを使った見事な衣装タンスもあり、当時の嫁入り道具だったのだ。現在は、青森ヒバの資材がないためすべて廃業。家具は作られていません。
館長さんのエピソード
館長さんから、こんなご自宅の青森ヒバにまつわる思い出を教えてもらいました。
やわらかな雰囲気の館長さんは、にこにこしながらとても楽しそうに教えてくださいました。
そんな風に青森では、昔から青森ヒバを家の柱に使ったり、家具にしたり、銭湯の床や壁、浴槽にまで使用したり。ごく当たり前のように生活に青森ヒバが溶け込んでいるものだったのです。
白アリを全く寄せ付けない青森ヒバ
青森ヒバは、その優れた抗菌性から他の木材とは比べ物にならないほど腐りにくい木材。その青森ヒバの特有の成分「ヒノキチオール」は白アリも寄せ付けないため、古くから全国各地で神社仏閣に使われてきました。
昭和6年の中尊寺金色堂の改修の際、中尊寺金色堂での青森ヒバの使用率はなんと93%。さらに、使用されていた青森ヒバの木材のうち、7割以上が再利用された。また、杉や栗が使用されていた床板などは腐朽や虫食いが激しく、この改修工事で青森ヒバが使用された。
今回訪れた森林博物館の建物も、95%が青森ヒバ。1908年に建てられ、100年以上もの歳月を経てなお、美しさを保ったまま。青森ヒバの驚異的な力を目の当たりにしました。
800年経っても腐らない驚異の力
青森ヒバは腐りにくいことで有名ですが、その最も有名なエピソードが800年前の埋もれ木。青森県の下北半島に位置する猿が森砂丘では、800年~1000年も昔に埋没した青森ヒバが直立したまま砂に埋もれています。
ところがこの埋没木は、800年以上ものときを経てなお直立したまま腐っていません。そのなかから、木材として使用できるものも見つかるほど。今回博物館では、500歳以上の老木を見ることができました。こんなにも立派な老木は、現代ではもう伐採されつくして見ることもできないのだそう。
青森ヒバは100年以上の時をかけて育つ
青森ヒバは他の木材とは比較できない程、強い抗菌力、防カビ、防虫に高い効果があります。これは、青森ヒバ特有のヒノキチオールという特有の成分によるもの。実はこのヒノキチオール、ヒノキには含まれません。日本では青森ヒバだけ。
青森ヒバは、青森の厳しい寒さに耐えてじっくり成長するため、木目が細かく密度が高くなり、強度も高くなります。
例えば、宮崎県のような温かくよく日が当たるような場所で育つ杉は30年~35年で出荷できるのに対し、青森ヒバは最低でも100年。青森ヒバが持つ魅力は、他の木の3倍もの時間をかけてゆっくりと成長する木だからこそ。私たちが現在手にしている青森ヒバは、100年~300年も前に植えられたもの。300年もの前に江戸時代の人々が森と共にあゆみ、残してくれた財産なのです。
青森ヒバの歴史と300年後の未来とは
そう語ってくださったのは、千葉多兵衛さん。
そう(本当は津軽弁で)誇らしげに案内していただいた写真に映っていたのは、迫力満点、大量の青森ヒバの木材とたくさんの職人たちでした。
森林鉄道と共に歩んだ歴史
昭和初期、全国に鉄道を敷くための枕木としても使用され、年間70万㎥もの青森ヒバが伐採されていた。その後、採りすぎたために資源がなくなり、現在では年間1000㎥ほどの伐採量となった。
現在、種から自生する青森ヒバを除いては、新たな植林はしていないとのこと。過去に植えたものを、量を減らして管理する方向で維持されています。
青森ヒバの未来とは
館長さんに今後の青森ヒバの未来について尋ねると、このような返答をいただきました。
現在は、減りすぎてしまった青森ヒバ。
現在、東北森林管理局では「ヒバ林復元プロジェクト」という取り組みが行われています。天然に落ちたヒバの種から育つヒバの幼樹を守り、古の天然のヒバの林を取り戻そうとしています。
私たちの5代6代先の子孫が暮らす300年後には、青森ヒバの林が青々と蘇っているはず。現代の私たちが見ることができない活気あふれる昔の風景が、未来の姿として館長さん達には見えているのかもしれません。
青森の訪問を終えて
今回の訪問で、実際に青森ヒバとともに歩まれてきた館長さんらのお話に触れ、私たちは日本の歴史を支えてきた青森ヒバの、貴重な資源を取り扱わせてもらっていると、改めて心に刻みました。
これからのヒバコレに何ができるのか、私が伝えたい温度とは一体なんなのか。これからもじっくり青森ヒバに向き合っていこうと思います。
ヒバコレとは
私たちが取り扱うのは、青森ヒバでつくられた道具たちです。さっと洗って立てかけて、飾るように愛用しながら長く使うもの。300年前の江戸時代、先人が植えた青森ヒバが、こうして現代の道具に生まれ変わりました。
使い勝手の良さ、カビに強い機能面、森の中にいるような深く爽やかな香り、100年先の世代まで受け継ぐことができる品質をお届けします。
イベントの出店はインスタグラムに掲載しています。
▼オンラインストアはこちら
今回、青森を訪れた際の館長さん達の貴重なお話はインスタライブに残しています。