リュウセツコウってなんだ
毎年、雪が積もるのを見るたびに、私は小学校3年生くらいの時の朝の会を思い出す。
❄︎
『あぁ、それと、この時期は"リュウセツコウ"が開いてることが多くなると思うので、皆さん気をつけてくださいねー、』
あの冬、担任の先生の口から「リュウセツコウ」という単語が出た。
リュウセツコウって、なんだ?
『はーい』
クラスのみんなは分かったように返事をしていたので私も分かった風な顔をして返事をした。
(はーい、って…。え、みんな、リュウセツコウって何なのか、知ってるのか?!)
世間知らずな私は、咄嗟に「リュウセツコウ」を龍の御伽話「龍説紀行」、略して「龍説行」の話でも始まったのかと思い、話の続きにワクワクした。
だけど「気をつけてね」で先生の話は終わったのでガッカリした。
その後、物知りな友達が「リュウセツコウ」の話をしているのを盗み聞いた。
どうやら、「リュウセツコウ」は地面の所々にある柵のことで、水が流れているところに雪を捨てる役割を持っていて、「流雪溝」と、書くらしい…。(今思うと子供同士で盛り上がる話題ではない)
(なるほど…流雪溝ね…)
確かに、あれが開いていたら…落ちたら…生きて帰れないだろう。
龍の話では無いことは残念だったが、新しい知識を得たのは大人の階段を上ったような気になった。
覚えたものはやたら口に出してみたくなる。
リュウセツコウ。
さて、どこで言おう。
(あ、ちょっとリュウセツコウ開いてないか気をつけないとね〜)
できれば下級生とかそれを知らない人にこの単語を使いたい。登下校でたまたま一緒の道になる子とかいたら言いたい。そして優越感に浸りたい…
そんなことを思っていたけど、
そんなことを言うタイミングもなく。
私はあっさり小学校を卒業したのだった。
❄︎
それにしても、なぜ龍の御伽話だと思ったんだろう。
全然違った。
地面の下には龍が居る。柵は管理人が時々開けている。水の中に潜む龍に食べ物を与えるために。
そこに落ちた子供はニ度と地上に戻れない。
みたいな。そんなお話があったら。
ちょっと怖いけどワクワクする。
また来年も、雪が積もったら思い出すんだろうな。
流雪溝に雪を捨てる時も思い出すんだろうな。
リュウセツコウのお話でした。