かすり傷

わたしが大学4年生の終わりが近づいていた頃。

目の前に迫る卒業制作のことばかり考えていて、
卒業後の、これからのことが何もイメージ出来なかった。
人は不安になると行動力が上がるというのを聞いたことがあるけれど。

私の場合は当時、何も動くチカラが出なかった。
体は動かないのに頭だけは動き続けてしまう。
見えないこの先への不安や焦り、些細なことで傷ついては、1人でメソメソ泣いていた。

そんな時、人生の先輩から展示お疲れ様メールが来た。
「若い頃のあれこれなんて、かすり傷だよ!」

(え!かすり傷どころか今重症なんです…😭)
あの時はそう思っていたけれど。

あんな言葉は経験した人にしか出てこないと思った。

❄︎
そんなあの頃を経て。
最近、大学4年生の子と話すことがあり、当時のわたしと重ねてみてしまった。
何かとアドバイスらしきことを教えたがってしまったことを後から内省しつつ…
最近は自分の「あの頃」をよく思い出すようになっていた。

私の過去はもはや、かすり傷(かさぶた)に見えてしまう。
いつのまにか時が経っていたのだ。
(色々なことを忘れてしまったのだろうか)

今は「死ぬこと以外かすり傷」とまでは言いきれないけど、「泣くほどでもない」と思うことは増えた。

痛いなんて、言ってられない。
そう思うことが、大人になるってことなのだろうか。

宝石が輝いて見えるのは細かい傷が沢山あるから。
ガラス性質のものを削る仕事をしていてふと思う。
人生を宝石に例えるならば、今は研削されている途中なのだろうか。

かすり傷、ってあまり痛くないイメージだけど、
お風呂に入るとしみるタイプとか、
車のミラー部分にシャッと何本か線が入っちゃうような地味に痛い擦りタイプとか、

かすり傷にも深いもの、浅いもの、色んな種類があるんだろうな。


アーやっちゃったわ〜って笑えるくらいで居るのはカッコイイ。
だけど、やっぱり痛いわ…って、
素直で居るのも、たまには良いかもしれない。

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