昨日のThe Street Slidersは老いてなお美しかった|Report
40th Anniversary Final 「Thank You!」
行ってきました、4.12沖縄市ミュージックタウン音市場。The Street Slidersデビュー40周年を記念したイベントのファイナルツアーです。
スライダーズを語るときによく使われる時代区分が、『天使たち』の以前(未満)か以後か。〈以前〉におけるリトル・ストーンズと呼ばれた頃からの野太いグルーヴ感のロックンロールに比して、〈以後〉ではより多様な音楽要素を取り入れ、メロディアスで洗練されたサウンドになる。詩作も、〈以前〉はハリーが感じた日常に潜む虚無感や苛立ちが中心なのに対し、〈以後〉はJOY-POPS名義になることも増え、情景的だったり思索的だったりと懐が深くなった。
沖縄ツアーでは〈以前〉から9曲、〈以後〉から7曲だった。JOY-POPSの比較的新しい曲が2曲だが、客のほとんどが40~60代だったことを考えると、懐古趣味オンリーでよかったんじゃないかな。てゆうか、そうしてほしかった。『BAD INFLUENCE』からエントリーゼロは、スライダーズのブレイクを予感しながら聞いていた世代にとってはさみしい(事故で全国ツアーがキャンセルとなり、ブレイクは未遂に終わる)。
今日は私が感じた次のふたつの疑問を短く検証してみたい。
①デビューアルバム『SLIDER JOINT』から4曲なのは沖縄だから?
②「風の街に生まれ」はなぜセットリストに入ってるの?
①1stから4曲なのは沖縄だから?
スライダーズは府中市の生まれだが、福生という米軍基地の街で音楽的に育った。福生時代は、米兵が集まるライブハウス「UZU」で演奏したりデモテープを作成したりするなど、音楽性を磨き演奏技術を向上させた頃で、〈以前〉の曲の世界観はこの地から生まれたものも多いと想像できる。
そんな彼らにとって、米軍基地だらけの沖縄はどこか懐かしさを感じる場所なのではないか。とくにハリーはソロのライブでも沖縄に何度か訪れている。2018年の6.2桜坂劇場では、蘭丸と一緒にJOY-POPSとしてステージに立った。
『SLIDER JOINT』の曲はスライダーズとして一番場数を踏んだということもあるだろう。メンバー同士の信頼関係や友情が深まった時期を、基地のフェンスやうろつく米兵たちを眺めながら思い出すというロマンチシズムもあっていいと思う。
②「風の街に生まれ」はなぜセトリに入ってるの?
活動休止前のライブでこの曲が頻出していたかは知らない。なのであくまで印象論なのだが、ファン受けがそれほどよかった曲には思えないのに、今回のツアーでセトリに含まれているのはなぜ?という単純な疑問。
ハリーは肺がんを患っている。「いまやらないと二度とできないかも…」という思いで、スライダーズは再集結したはず。オフィシャルは再結成とは言っていない。今回のツアーはハリーたっての希望に、メンバーが、いや古くからのダチが応えてくれているのかもしれない。
ハリーは「今夜もまた奇跡待つだけ」「ほしいものはひとつだけ」というリリックに願いを託しているのだろうか?――ラストで4人が手を取り合う姿を見て、そんなことを考えた。
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