労災病院の横に君と二人で
例えば病院に入院中で
例えば、もう余命僅かで
例えば、病院の庭で
例えば、陽だまりの中に佇んで
見上げるとプラタナスの木の点描画が見えて
ああ、こんな、何気ない日常が素晴らしいなと思ったりして
何で自分は今まで気づかなかったんだろうとか思ったりして
ただ、ぼんやり木々を眺め
鳥の声を聞き
深くゆっくり呼吸する
健康になったらこんな何もしない日常を
思う存分毎日味わうんだと思ったりして
でも、それ
きっと、やらないよ
例えば丸いまん丸いまるいお月様を
君と、二人で、眺める
手を繋ぎ、寒くないかいって聞いたりなんかして
君が腕を絡ませてきたりしてきて
そっと頭を僕の肩に乗せる
ああ、結婚したら、僕はずっとこうやって君を大切にして行くんだ
ずっと、こうやって君と手を繋ぎいろんな形の月を眺めて質素に生きる
それが本当の贅沢なくらしなんだ
でも、それ
きっと、勘違い
まぁるい月は催眠術師