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「シビルウォー アメリカ最後の日」感想2 赤いサングラスをして人を殺す男の正体

赤いサングラスをして人種差別をし、人を殺す男の正体


アメリカでは市民たちが武装して訓練するミリシア(民兵)の伝統があるようです。
普段は労働者として働きながら日曜日になると森や砂漠でキャンプして射撃や戦闘訓練し、オバマ大統領が大統領に就任した時には黒人大統領に反発する白人至上主義や銃規制を恐れるミリシアの軍事訓練が活性化したようです。
BLMに便乗して騒乱や内戦を画策する過激主義運動ブーガルーや過激派の反ファシスト勢力アンティファ、武装右翼団体オースキーパーズなど、銃社会のアメリカでは自分の思想を、自分の考える正義の名の下に武力に任せて主張する集団が多い

今作に登場するジェシープレモンスもこれに当てはまる。
一見出身地を聞いて誰を殺すか決めているようにみえるが、最初に殺されるアジア人は出身地を聞かれていない。
赤いサングラスというフィルター越しに世界が見えているコイツにとって、真のアメリカ人(アメリカ生まれの白人)以外の人は殺しても何の感情も湧かないらしい
コイツの中でフィルタリングされた正義の名の下に殺しているからだ。
ワグナルモウラ演じるジョエル(非白人)が殺さないでくれと頼んだときも、命令するなと取り乱し銃を向ける。
コイツの隣で同じく人殺しをしている男は白人男性だ。

誰もが理想のアメリカ像を掲げて戦っている。コイツはナショナリズムや優生学、白人がマイノリティになることで選挙の票が自分以外を優遇する政治家に流れることを恐れているだけで、何かの報復心で動いてるわけじゃない。
冒頭の自爆爆破テロのシーン、画面の端に一瞬、特攻する女性が映るが彼女が持っているのは星条旗なのだ。







物語の語り方と監督が元ジャーナリスト志望だったということの関係

ジェシーやリーなどの戦場カメラマンは自分の思想を表に出さず、起こった出来事を淡々と撮影していき、見たままに伝えることこそがジャーナリズムだというスタンスをとっている。
監督も信頼される報道とは公平であるべきだと語っている

「ジャーナリストが信頼を得るよう努力する」ということに尽きます。公平で信頼されるよう努力すれば、人はその意志を受け取るものです。人間もバカじゃない──ほとんどの場合はね。

問題は、大手メディアであれSNSであれ、ジャーナリズムが公平であろうと努めていないことにあります。「FOXニュース」は右翼からの支持を得ようと努力はしていますが、左翼の有権者から信頼されようとはみじんも思っていません。同様のことは左翼でも起きています。
SNS上の報道ではその状況がさらに極端です。SNS上の発言は何かしらの計略のもとでおこなわれている可能性が高いことを、ほとんどの人は認識しています。だからこそ、逆に不信を招くのです。
──読者にとって都合がいい内容のほうがお金になるというマネタイズの仕組みにも問題がある気がします。
その通りです。これはジャーナリスト個人の問題ではありません。実際、個人単位で見れば、ジャーナリストの多くは信頼を得る努力をしています。しかし、組織がユーザーベースや購読者数の維持のために読者に迎合するようになると、読者が聞きたくないであろう情報をわざわざ伝えなくなるのです。それがたとえ、読者が知っておくべき情報だったとしても。

その時点で、その組織は報道組織ではなくプロパガンダ組織になります。これはマネタイズの仕組みによって引き起こされる問題です。

https://wired.jp/article/civil-war-alex-garland-interview/

今作の登場人物は全員イデオロギーやバックグラウンドは説明されず、内戦の様子を淡々と描写している。主人公たちジャーナリストと同じように、この映画自体が政治色をつけずに起こっていること、起こりそうなことを淡々と撮影していく。
これはアレックスガーランド監督がが元々ジャーナリスト志望だったからゆえの構成だろう。



見えない敵との狙撃合戦

物語中盤、主人公たちは普通の民家に潜伏する遠くのスナイパーに命を狙われる。
お互い遠距離から命を狙い合い、ジョエルが移動すると相手が狙撃し、それがサンタクロースの置物に当たる。
隣人愛の精神のカケラもない

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