シュレディンガーの猫とは/「ある」と「ない」が一つの不思議な世界
量子の世界では「ある」と「ない」が同時に存在できる
皆さんこんにちは。
量子力学の世界の粒子は「観測」するまで、さまざまな状態が混ざり合っており、観測すると同時に一つの状態に決定されるという独特の性質があります。
ニュートンの運動方程式に代表される古典力学において、時間・位置で決まるような物体の運動は私たちが観測しようがしまいが、すでに決定されています。物体が坂から転げ落ちる様子を想像してみてください。私たちが観測するかどうかに関わらず、物体は転げ落ちていき、運動の軌跡は一意にもとまります。
一方で量子力学の世界では、ある時間・位置の粒子はそこに「存在する」状態と「存在しない」状態が重ね合わさったような状態になっています。観測するまでは、雲や波動のようにそこに「ある」ようにも「ない」ようにもぼんやりしており、観測するとそれらのどちらかの状態に決定されます。
古典力学の世界でも量子力学の世界でも、観測しないと粒子がそこに「ある」のか、それとも「ない」のかはわかりません。しかし、両者は観測する以前の状態が根本的に違い、とりわけ量子力学の世界は、観測するかどうかが粒子の状態に大きな影響を与えます。
この例え話を、量子力学で扱う小さな世界から、私たちが住む大きな世界に持ってきたのが有名な「シュレディンガーの猫」です。シュレディンガーの猫をはじめ、量子の世界の不思議さをこちらの記事にまとめました。興味のある方は下のリンクをクリックしてご覧ください。
今回の記事紹介は以上になりますが、上の記事からやや発展したtipsを以下に書いておきました。「ある」と「ない」の重ね合わせのお話を「波束の収縮」という性質を使ってやや専門的に書いているので、興味のある方はお読みください。
重ね合わせの原理と波束の収縮
波動関数は重ね合わせることができる
まず前提として、量子力学の世界では考えている系全体の波動関数を別の波動関数の重ね合わせで表現することができます。この原理を重ね合わせの原理 Superposition principleと言います。先ほど説明した「ある」と「ない」のような二つの状態しかない場合、重ね合わせの原理に従って波動関数を表すとこんな感じにかけます。
$$
\Phi(\boldsymbol{r})=C_1\phi_1(\boldsymbol{r})+C_2\phi_2(\boldsymbol{r})
$$
ご覧の通り、「波動関数を重ね合わせる」とは波動関数を足し合わせるということです。
$${\phi_1(\boldsymbol{r}),\phi_2(\boldsymbol{r}),\Phi(\boldsymbol{r})}$$は波動関数で$${C_1,C_2}$$は係数です。
二つの状態しか重ね合わせ出来ないのかというと、そんなこともなく、考えている状況に応じで、理論上は無限個の波を重ね合わせることが出来ます。式で書くと、
$$
\Phi(\boldsymbol{r})=\sum_{n=0}^{\infty}C_n\phi_n(\boldsymbol{r})
$$
のように、無限個の波動関数の重ね合わせで別の波動関数を表現することさえ出来ます。
これらを前提知識に置いた上で、状態は観測するまではさまざまな波(波動関数/固有状態)の重ね合わせで表現されており、観測するとともにその重ね合わせが崩れて、その中の一つの波動関数、すなわち状態が決定されます。
この性質は日本語では波束の収縮と呼ばれています。波束とは波の重ね合わせによってできた局所的な一つの塊のような波のことです。私の脳内で連想される印象は、波の重ね合わせで表された波動関数のどれかに観測によってギュッと収束する感じです。
英語ではwave function collapseやwave packet collapseなどと呼称されるようです。こちらは波束が"壊れて"、波束を構成していた波動関数のどれかが決まるという印象です。
上に書いた式において、波束の収縮とはざっくりと説明すると$${\Phi(\boldsymbol{r})}$$を構成する波動関数のうち、$${\phi_n(\boldsymbol{r})}$$のどれかの波動関数に決定されるということです。
このように、量子力学には一見するとぶっ飛んだ性質が多く登場します。
それらが我々の常識から大きくかけ離れているので、どうしても難解に感じてしまいますが、それらこそが量子力学をより奥深い学問にしていると感じています。
今回のnoteは以上になります。ご覧いただきありがとうございました。
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