「菌と鉄」 面白ポイント
2024年1月9日現在 講談社の「マガジンポケット」で「菌と鉄」が4巻分まで無料で読めるので1話を読みました。
これは面白い!! と思ったので今回は面白ポイントについて簡潔にまとめていきます
面白ポイント
6つあると思います。
①【独特な世界観】
「キノコが人を洗脳する世界」で考えることや感じることを支配されている。
進撃の巨人と同じで独特なこの世界をもっともっと味わいたい・知りたい・見たい・理解したい と思わせることに成功している。
人は独創的なものに強烈に惹かれるため、先を読みたいと思わせてくれる世界観を構築したのが天才である。
②【死の危険がある世界】
冒頭での体罰や頭のおかしい洗脳活動、そして中盤で頭をうち自殺する兵士と頭を岩で潰されて死ぬ兵士。
映画の冒頭ではこれから先起きることを読者に推測して貰うことで【サスペンス】という期待を作らせる。【サスペンス】とは、【予想することが起きるか起きないか】とい【うゾクゾク・ワクワク感】だ
人が惨く死ぬ 暴力を受ける アミガサというキノコに雑巾のように扱われる
ことを読者に見せることで、アミガサに潜伏するスパイ、または、反逆者達が
惨い目に遭うか遭わないか
殺されるか殺されないか
の【サスペンス】を生む仕掛けにしているのが賢い
③【見つかるか見つからないかのドキドキ】
これも②と同じである。ばれたら殺される。でも主人公は反逆したい。これは面白い
④【構造的に対比になる主人公】
主人公の作り方に関わる点である。
現実世界では多様な価値観が認められているが、この世界ではほとんどの人がアミガサの支配に置かれていて、強制的にでも同じ非人間的な価値観を持っている
そういう世界に対する真逆がアミガサに対抗する組織が「エーテル」であり、主人公はアミガサの中にいても、「エーテル」のような異端な価値観を持っているのである。これだけでも読者は主人公に対して
人間らしい価値観を持っている
と印象づくのでキャラクターが起っている。
⑤【主人公の能力への期待】
主人公は
・アミガサに支配されない
・身体能力が高い
・失読症
というように【何か特別な力】があるな という【謎】を読者は【好奇心で知りたい】と思う。
ここの作りも面白い。これに
【アミガサを倒す という願い】と【スパイとして過ごす設定】 という2点が掛け算され、
最高級の【サスペンス】と【好奇心】の感情を読者に長期的に持たせているのが凄い!
⑥【純粋な人間の切実な願い】
この作品の凄い所は残酷な独創的な世界という対比の環境の中で【陸に上がったカッパ】、
・女性にもう一度会いたい
・人間的な価値観で生きたい【自由を獲得したい】
・自分の気持ちに嘘をつきたくない
という【切実な願い】を主人公ダンテ君が中盤で持つことで一気に読者が彼に期待をかける【トンボ返り】
*勿論体罰を受けることや発言や価値観を否定される等を見せることで、読者がダンテ君に【同情】を持つようにしている。それが中盤のエーテルの女性との出会いで、読者との距離が「隣の隣人」になり、終盤の拷問を受けながらもダンテの感情と心理を見せる中で、「家族の誰か」になったことで一気に読者がダンテに感情移入し、期待をかけるようになった。
⑦【人間VSキノコ の善悪構造】
【対立】構造も明確でわかりやすいのも読者がこの独創的な物語に没頭しやすくしている点だと思う。
脚本における【対立】とは、キャラクターの願いや夢を妨害するものである。そして物語は【対立】がないと酷くつまらないものになる。
そもそも人が物語を観るのは、これからの人生のシュミレーションをしたいからである。自分は読むという行為だけで、安全が保証された場所で酷い目に遭う中でも、克服や成長や犠牲を払いながらでも目標を叶えるために前に進む他の人の人生を観ることができるのである。
逆に言うと、簡単な目標を叶える人をみても学びはないのだ。
あーこの人は才能があるからできたんだな
そりゃあ 運がよかったからだろ
自分の人生に活かすことはできないのだ。
そういった点で、「菌と鉄」は明確な【対立構造】があるのが面白い。
そして、ダンテ君の目標が叶えられなかった時に、読者は感情的にダメージを受けるのだ。何故ならば、酷い拷問を受けてもなお、自分の中の大切な価値観や気持ちを殺すくらいなら、死を受け入れる という想い を読者は知っているのだから【家族の誰かになった瞬間】
脚本の基礎の技術が全て詰まって創られ、作られている作品であり、非常に勉強になりました。