銀杏...<短歌>
鼻先に迫る銀杏、
行き場なく敷き詰められて
犬を労う
この時期は無気力になる。
駒場キャンパスを歩いていると、銀杏の匂いが億劫さを引き立てる。それでも室内に閉じこもるよりかは外に出た方がいくらかマシな気がして、ベンチに腰掛けてみる。
すると向こう側から、大きな犬を二匹連れたマダムが歩いてくる。どうしてマダムは大きな犬を連れているのだろうか。そしてどうして大学のキャンパスは大抵、犬の散歩コースになっているのか。犬はひたすらダルそうに見える。
そこでふと思う、犬は銀杏を臭いと感じるのだろうか。今、銀杏並木の地面には銀杏が敷き詰められて、足の踏み場もない。犬目線で考えると、つい鼻先に奴らが迫っていることになる。しかも犬は嗅覚が鋭いのでは…。彼らはこの刺激を不快には感じないのだろうか。
「かわいそうに。」と呟きたくなった。人間の勝手な都合でこんな道を歩かされて、なんて不憫な犬なんだ。君たちはよく歩いているよ、十分頑張っている。
そんな気持ちで短歌を詠んだ。
しかし、どうだろうか。本当に行き場もなく追い詰められているのは、紛れもなく作者自身の心だ。分かりもしない犬の気持ちを想像して、自身の現状を憂いている。この季節の乗りこえ方を、いつか身につけたいものである。
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