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ー漆話ー 共同生活


ー2024年3月ー


───”‬神の使いの子‪”‬なっちゃんとの共同生活がはじまった───



「なっちゃん仕事行ってきます」

「なっちゃんただいま〜。疲れたよ」

「なっちゃん、ご飯だよ〜。一緒に食べよう」

なっちゃんとの共同生活がはじまってから
約一週間。
俺はなっちゃんに対してこんな言葉をかけるようになっていた。




俺には姿は見えないし声も聞こえないが
家のどこかで見守っていてくれているのだろう。そう思っていた。






俺には兄弟がいない。






俺が一人っ子だからか、なっちゃんの存在が嬉しかった。
頼もしい妹ができたような気分で。





30歳を超えてからもこうゆう事を思うという事は、心のどこかでは兄妹が欲しかったのだろう。




なっちゃんは、俺が職場や出先で連れてくる
浮遊霊を祓って守ってくれていたらしい。




麗奈さんの事は信用していた。人柄もいいし、
俺の事をいくつもピンポイントで当てた事から信用度は高かった。







…だが、心のどこかでは‪”‬なっちゃんという子‪”‬は

今現在俺の家の中に本当に実在しているのか?と疑問には思っていた。
姿も見えない、声も聞けないのであればそう思うのも無理は無いだろう、と今でもそう思う。






そんな事を考えていたある日、なっちゃんの存在を確信させるような出来事が起こる──











──とある日、俺はネットの人達とボイスチャットをしていた。




その時に心霊系の体験談の話になり、話が盛り上がってきて
俺も幼い頃、不思議な体験が多少あった事を思い出した。


この時、自分の体験談は全て気のせいだろうとは思っていたが
話のネタくらいにはなるだろう、と思い
ネットの人達に自分のそれっぽい体験談を話してみる事にした。




俺「俺も幽霊?かは分からないですけどそうゆうの視た経験ありますよ。」




ネットの人達「え〜!なになに!聞かせてくださいよ!」





そして、自分の体験談をネットの人達に話し始めた時の事だ。






俺「俺がこれくらいの歳の時に」
俺「俺がこうこうこうして」
俺「俺がスっと振り向いた時に──」











「ピッ」











俺「…え?」






なんと、体験談の本丸を話そうとした瞬間
いきなり「ゲーム機の電源」が入ったのだ。




俺は突然の出来事すぎてびっくりしていた。
…何より、本丸を話そうとした瞬間とゲーム機の電源が入るタイミングが‪”‬完璧‪”‬すぎた。






俺(もしかして...なっちゃんがスイッチを入れたのか…?)
俺(この話は‪”‬他人に話すな‪”‬とでも言いたいのだろうか?)






俺「なっちゃん、もしかしてこの話を他人に話すなって事!?」




なっちゃん「……….」






...もちろん返事は聞こえない。
だが、この時話そうとした俺の実体験の話を他人にする事は‪”‬危険な事‪”‬なのではないか?と思い俺は話を途中で中断する事に決めた。











──後日、霊能者の麗奈さんにこの事を話してみる事にした。






俺「麗奈さん、先日ネットの人達と心霊系の話題で盛り上がってる時に
自分の幼い頃体験した実体験の話を話そうとしたら、勝手にゲーム機のスイッチが入ったんですけど...」

俺「もしかしてこの話を他人にする事自体が危険だったから、なっちゃんが俺の事を止めてくれたんですかね?」






麗奈「……..」






麗奈「そうだね…なっちゃんが止めてくれたんだよ。神城さんが昔見たその霊、めちゃくちゃ危険だから。」

麗奈「その話をしただけでも神城さんや周りの友人にも悪い影響受ける可能性があるから。
もう二度とこの話に関わったら駄目だよ」



と麗奈さんに怒られた…
これだけ麗奈さんが強い口調で言葉を発するのは初めて見る。






何より、俺は無知すぎた...

もしなっちゃんが俺の事を止めていてくれなかったら
自分の身の回りの人間を危険に晒していたかもしれない。

自分の体験談を安易に他人に話すべきでは無い、という事をこの日に悟った。






俺「そうだったんですね...知らなかったです。
本当にすいませんでした。」
俺「今後、この件に関しては二度と口にしないようにします。」




俺は感謝と謝罪の気持ちを込めて伝えた。




俺「自分にはどの体験談が危険で、どの体験談が安全なのか分からないので...」

俺「これからこうゆう話を他人にする時は
麗奈さんに、その話なら他人に話しても大丈夫。と言われたものだけにします。」



麗奈「うん。そうした方がいいと思う。」



俺「…なっちゃんも俺の事止めてくれてありがとう。」






──これが、俺がなっちゃんの存在を確信した出来事であった…


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