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イマジナリーブラザー ~今日もお兄ちゃんのバイクで出勤だ~

ずうっっと、お兄ちゃんが欲しかった。
彼氏や友達は、何かあれば縁が切れてしまうけれど、血が繋がっているというだけで、なかなか完全に縁は切れないから。

私にとって、それは安心できるものに思える。不思議だ。現実の血縁とは安心できる関係ではなかったのに。

友人たちから空想好きと言われるが、子供の頃からそうだった。幼い子が、現実にはいないはずの友達と遊んだ記憶を持つことがあり、その友達はイマジナリーフレンドと呼ばれていて、珍しいことではないらしい。

私はそれが『友達』ではなく『お兄ちゃん』だった。イマジナリーフレンドならぬ、イマジナリーブラザーである。

実は今も毎朝そのお兄ちゃんに、バイクで会社まで送って欲しいと駄々をこね、忙しい朝に妹がかわいくて仕方ない兄が、バイク(雨の日には車)を出してくれるという空想で、幸せな気持ちになっている。

ギアなしの中古自転車でニヤニヤしながら走るおばさんを見て、すれ違う人は不気味に思っているだろうけれど、それ以外は誰にも迷惑をかけてない。お金もかからない。なのに、何て幸せなんだろう。

私の兄は185㎝と長身でイケメン、職業はモデル。6歳年上。クールに見えるが意外とぬけてる妹大好き人間―—ドラマによくある設定。ベタ過ぎて苦笑。

妹の帰宅が遅いと、家の前で仁王立ちで待ってるもんだから、彼氏なんてできやしない。見かねた母親が注意しても『兄貴にビビるような男ならやめろ』の一点張り。

そんなシスコンお兄ちゃんに、仕事の愚痴を聞いてもらい、嫌な事があって傷ついた時に慰めてもらったり、行きたいところに連れっててもらったり、ただただそばにいてもらったり。

空想…? いや、もはやこれは妄想だよ。

最近は、お兄ちゃんだけじゃなく父母まで会話に加わり、イマジナリーブラザーは、イマジナリーファミリ―と化している。ちらほら、お兄ちゃんの彼女まで登場したり。

私があまりにも楽しそうに、この兄の話をするので、友人までつられてハッピーな気分になるんだと。一緒に笑ってる。
やたらな人に話したら、ヤバい奴だと思われるだろうけれど、そんなの知ったこっちゃない。


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