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【レッドブル】(超短編小説)
日常的にこんなものを飲み続けなればいけないような仕事なんて、いっそ辞めてしまった方がいい。
朝靄の立ちこめる早朝6時の公園。
俺は一口飲んだだけのエナジードリンクを、草むらに向かって力一杯放り投げた。
黄色い液体を撒き散らしながら、放物線を描いて飛んだそれは、思っていたより随分手前に落下し、それから転がってなんとか草むらのヘリまでたどり着き、そこで動きを止めた。
その身をすり減らしながら目的地に向かい、たどり着いたと思ったらそこで力尽きる。
その様はまるで、今までと、そしてこれからの自分を見ているかのようだった。
生きるために働いているのか、働くために生きているのか、よく分からないような日々。
いつか見た夢は、とうの昔にどこかに捨ててきた。
働くことが全ての中心となり、それに合わせて生活をする。
それがもし生きると言うことなのであれば、そんなものクソ喰らえだ。
俺は、スマホの電源を落とした。
そして、職場へ向かうはずだった足を逆方向に向ける。
行くあてなんてない。
でも、きっと大丈夫。
なんとかなる。
いや、なんとかできる。
少なくとも、今までの人生よりは良くできる。
そんな気がした。
流されるままに生きてきた俺が、自分でちゃんと【辞める】と決めることができたのだから。
顔を出したばかりの太陽が、朝靄にかすむ道を照らしている。
今はまだ先の見えないその道に向かい、俺は一歩踏み出した。
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ゴミを拾って短編小説を書く。
SNS上(主にInstagram)で、そんな創作活動を半年ほど続けています。
もっと正確にいうと、ゴミ拾いをして、そこで拾ったゴミから妄想を広げて短編小説を書くという活動です。
決まり事は二つ。
「『そのゴミは、悪意を持って捨てられたものではないかもしれない』というところから妄想を広げること」
「読んだ後に、読んだ人の中に何かしらの良い感情が芽生えるようなストーリーを考えること」
せっかくなのでnoteにもあげていってみようと思います。
よろしければぜひお付き合いください。
Kindleにて電子書籍も出版しています。
短編小説集です。
Kindle Unlimited加入で無料で読めます。
よろしければそちらもどうぞ。