「出稼ぎ」を間違った意味でメディアが報じることの罪

 2022年11月13日放送のフジテレビ『Mrサンデー』で日本人の出稼ぎについて報じていたが、経済現象について正確に理解し政策に活かすための課題意識を持たない単なる現象取材レポートに過ぎず閉口した。

 まず問題なのは報じた事例に「出稼ぎ」と類型できる事例が一つもなかったことだ。

 「出稼ぎ」とは「住所地に家族を残したまま、賃金を送金し家族を養うためにする移住労働」のことである。
 閑農期に地方から都市部へ父親だけでていくことが日本語の本来の「出稼ぎ」の意味だ。
 それに加えて、貧しい後進国の外国人が日本に単身移住してくる仕送り目的の労働者も「出稼ぎ」と呼んだ。
 正確を期すなら「出稼ぎ外国人労働者」と呼ぶべきだろう。
 経済効果を明らかにすることを目的として定義するなら「日本の国民経済市場から有効需要を収奪するための単身移住外国人労働」だ。それが「外国人出稼ぎ労働者」である。
 日本に来る出稼ぎ外国人はすべてこの目的のためにやってくる。

 しかし『Mrサンデー』が取材したものに、日本人が日本に住む家族へ送金する目的を持つケースは一つもなかった。これは「出稼ぎ」ではない。ただの「移住労働」である。

 出稼ぎと移住労働は「経済」に与える効果が全く違う。

 日本国内に居ながら外国企業の仕事を請け負い報酬を受け取るケースも取材していたが、それ込みで定義するならこうだ。

「外国為替建賃金受取り労働」の「海外移住型」と「国内居住型」。

 それを「出稼ぎ」と呼ぶことは、事実を全く不正確に認知させることにしかならない。
「経済効果」が異質なものをメディアが同じ「出稼ぎ」扱いしているから、それを漫然と視聴する日本人は経済識障害という認知障害に陥り、デフレ不況からスタグフレーションへ進む経済構造を改めることができなくなるのである。
 テレビメディアのこのマインドコントロールが、1985年プラザ合意に始まり30年を超え40年に及ぶ日本経済の構造化を牽引し、1991年に始まった「空前の下り坂」経済構造を作っていることに責任を感じ、真摯に態度を改めるべきである。

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