海外の友達がいっぱいできた
この2か月ほどで海外の友人が増えた。毎晩のように様々な国の20~30代くらいまでの若者たちと世間話をしたりゲームをしたりしている。
お話をした人の国名を挙げていくと、アメリカ、インドネシア、カナダ、韓国、タイ、中国、トルコ、フィリピン、フィンランド、フランス、ベトナムなどなど。
前にもどこかで書いたかもしれないが、僕の英語力は小学生から中学生レベルだ。もちろん他の言語もほぼ話せない。それなのになぜ海外の人たちとコミュニケーションできるのか。
VRChatというゲームを御存じだろうか。2017年頃からサービススタートした基本的に無料で遊べるゲームだ。けっこう長く世界中で遊ばれている。
何をするのかというと、自分の分身としての様々なアバターを動かしてワールドといわれる場所を訪れてそこにいる人々と交流する。ほぼそれだけ。
星の数ほどもあるワールドは有志ユーザーが作ったもので、居酒屋風の世界だったり、神社の境内だったり、カジノだったり、雀荘だったり、脱出ゲーム会場だったり、風光明媚な温泉宿だったり、つまりなんでもある。
その中に、日本語話者と英語話者が交流するのを目的としたワールドがあって、僕はこの2か月間そこに入り浸っていた。
小~中学生程度の英語力しかない僕が様々な国の人と交流できる秘密はここにあって、日本語を学びたくて来ている人と話すのだから楽ちんなのだった。
話し相手が日本語でどう言うかわからない言葉を僕が日本語で教えてあげて、僕が英語で何と言うのかわからない言葉を、話し相手が英語で教えてくれる。そうやって話しているうちに友達ができた。
特に親しくしているのはフィリピンの男の子とインドネシアの女の子を中心としたグループで、物静かであまり騒がないライトなオタクといった面子が6~7人集まっていつも話をしている。
話題はゲームやアニメ、現実世界がいかに生きにくいか、仕事がクソであること、田舎に住んでいてつらいこと、人間関係のこと、言語のこと。などなど。皆お喋りが好きで話題は尽きない。
どの国の人と話していても同じような悩みがあるのとオタクカルチャーの話ができることに驚いた。そういう人が集まる場所にいるからということはあるにしても、想像以上に世界中に漫画アニメ文化が浸透している。日本語ができない人でも日本語歌詞でアニメソングを歌えるくらいだ。VTuberもかなり文化としては広がっていて、VTuber達の歌や喋り方などもう僕では付いていけないくらい知っている人も多い。
そういう世界を僕は人間サイズの茶トラ猫のアバターで歩き回っていて、若い人に「なちょさんミャンミャン!」などと挨拶されていい気になっている。
当然年齢を聞かれることも多く、ごまかさずに「君たちの倍くらい!」とか言って毎度驚かれている。それでも遊んでくれるのは僕が世界の若者に順応できているからだと信じたいが、そうではないのだろう。たぶん本当の姿が見えないからじゃないかと思っている。彼らにとって僕は大きな茶トラ猫だ。英語が下手で日本語流暢なネコ。他の情報はコミュニケーションに不必要だ。
アバターはおじさんである僕を隠すだけではなく、人種や性別も見ただけではわからなくする。つまり話しかけてある程度会話するまではその中の人のアイデンティティーは何もわからない。第一印象はアバターの外見だけだ。
ゴスロリ美少女の外見で中身がアメリカの海兵隊所属35歳男性だったり、無機質なロボットの中身が20代のパキスタン人女性だったりする。175センチの茶トラ猫の中身が日本のおじさんであっても不思議はない。
そういうわけなので毎日英語を少し話す機会があり、これはすごく英語の勉強になるのではないかと思わないでもない。しかし上達する気配はない。そりゃそうだ。先方が理解しようと頑張って聞き取ってくれるので、僕のしょうもない英語が通じてしまう。それどころか日本語に英語を混ぜて「なんでHated everythingなの?そのうちWill be goodよ」などと言う怪しい言語使いになってしまっている。
聞き取り能力については多少訓練になっているかもしれない。ただ各国の訛りが激しい英語なので、すべてを混ぜた変なミックスイントネーションが身につきそうで怖くもある。
ちなみに個人的にはフランス人の話す英語が最も聞き取れない。それでも大丈夫、皆日本語が上手だから。
だいたいアニメ見てたら日常的な日本語は喋れるようになって、それから文字の勉強してるとか、書けないけど話せるとか、そういう人が多い。読み書きはやはり漢字が難しいらしい。まぁ音読み訓読みとか複雑怪奇だからそうだろうと思う。話せりゃ十分とも思う。
どちらかと言うと人に気さくに話しかけるのが苦手な僕でも、このくらいできてしまうのがこのVRChatのすごいところだ。謎神社ワールドの石燈籠の隣でボーっとしてりゃ向こうからコンタクトしてきてくれる(こともある)んだから。
時にはアメリカ人とタイ人の口喧嘩に挟まれてアワワワしたり、東アジア圏の人に煽られたりすることもあるが、どの世界でもあぶない人はいるので慣れてきてしまった。日本人がハラスメント発言をするのを見かけるの多いなとも思った。かなりセンシティブな話題を平気で繰り出す率が高い気がする。僕も気を付けないと知らないうちに虎の尾を踏みそうだ。
異文化交流は楽しい。世代の離れた人と話す機会も貴重なものだ。その両方を気軽にできてしまう今の状態がいつまで続くかわからないが、参加できるうちは遊び続けると思う。
このテキストを読んでもし気になったなら、youtubeなどでVRChatで検索すると雰囲気がわかる動画がたくさんあるし、無料なのでいきなり始めてしまってもいい。なちょの名前で歩き回る人間サイズの茶トラ猫がいたらたぶん僕なので、見かけたら話しかけてみてほしい。