『鏡』
鏡を見るときは大概誰かのため。
周りの人に良い印象を与えたいから。
周りの人に可愛い、カッコいいと言われたいから。
僕は好きな人とご飯を食べるとき紙ナプキンで口を何回も拭いて、したくもないのにトイレに行っては鏡の前で髪チェック、鼻の穴チェック、歯のチェックをする。
今日も僕は好きな人、同じ会社の同僚の南さんとご飯を食べていた。
僕「ごめんトイレ行ってくるね」
南「トイレ多いよね!」
僕「本当近いんだよ!」
嘘。なんなら遠い。
鏡で全てチェックした後、わざと少し手を濡らして戻る。手を洗ってきた事を明確にするためだ。
南「そうだこの前〇〇先輩がさ〜」
そこからまた普通の会話が始まる。
今日は辛い鍋を食べていた、口元が気になって仕方ない。少しスパンが短いが
俺「トイレ行ってくる」
南「また??」
俺「世界一トイレ近い男なの!」
自慢じゃないが世界一トイレ遠い男だ。
トイレに入り口元を見て何もない事を確認して大の方だと思われないようにすぐ戻った。
僕「お待たせ!あ!」
南「わぁ!早いね」
南さんが慌てて言う。
僕はその姿を冷静に分析した。
その姿とは、
南さんはコンパクト鏡で前髪や口元をチェックしていたのだ。そして声をかけた瞬間鏡を素早く鞄にしまった。そして驚きながら照れ隠しの「早いね」
まとめると、
南さんは僕と全く同じ事をしていたんじゃないか?
同じ事をしていたって事は南さんも僕の事が好きなのではないか?そう思った。
そう思っただけ愛おしく思えた。
僕はその帰りに告白をした。
振られた。
僕「でも、トイレ戻ってた時髪とか」
恥ずかしながら告白をするって決めた理由を伝えた。
女性はみんなするもんらしい。