雨のラーメン鉢
別にトラウマでもなんでもないのに、
急に思い出す風景がある。
小学生の頃の雨の日、
出前のラーメン鉢を洗って、
玄関先に置いていた。
そこへ雨が降りかかり、
鉢に雨水が飛び跳ねている。
それを自分はただ、
ぼんやり見続けていた。
本当にこの時、
自分はなんて事なく過ごしていたはずだが、
これまでの人生の一大事と同様に、
今も強烈な印象を残している。
それが何故だかは見当もつかない。
ただ、
あの雨のラーメン鉢は少なからず、
自分の人格形成に影響しているような気がする。
この世と言っても、
人間が作った世界ではないのだから、
理屈が通る事がすべてではないだろう。
子供ながらに黄昏て、
生きている事の不思議さに、
頬杖をついていたのかもしれない。
それとも自分はあの時から、
地球に置いてけぼりになっているのか。
思い出せば思い出すほど、
あのラーメン鉢には雨が降っている。