盂蘭盆万燈会
北東北地方では大雨が続いて、今現在も停電や電車の運休が続いている。そんな折、久しぶりに陽が射したので、行くのを半ば諦めていた盂蘭盆万燈会の会場に向かった。
盂蘭盆万燈会は、地元にある真言宗の寺が毎年催している行事で、大小の何百という灯籠を寺の境内に置き、先祖の御霊を供養するものだ。
寺に着くと見た、久しぶりの夕焼けが美しかった。夕方の薄暗い境内に、小さな灯籠が柔らかな光を抱いて、辺り一面に灯されていた。小さな灯籠は、故人の戒名や氏名、申込者等が記された紙様のシートと蝋燭だけの簡便な作りだが、一基500円という手軽さで誰でも申込みできる。
昨年、今年と、大切な人を続けて亡くした。コロナ禍にあって墓参にも行けないので、せめてもの思いで灯籠に気持ちを託して申し込んでみたが、無数の光の中から故人の名を探し出すのは到底不可能に思えた。
境内にはスマホを掲げて景色を撮る沢山の来訪者の姿があって、この行事は夏の風物詩のひとつになっているらしい。子どもを連れた家族連れも少なくない。
本堂の大日如来に焼香を済ませて、戸外の昭和大仏へと参道を歩くと、僧侶による読経が静かに聞こえて辺りは荘厳な空気に変わった。奈良の大仏を凌ぐ大きさの昭和大仏の周囲には箱型の灯籠が整然と配置されていた。周囲を見ると席が設けられて、神秘的な声明の響きに大勢の参詣者が耳を傾けている。灯籠が並ぶ間隔は人が間を歩けるほど余裕があって、ゆっくりと灯籠に歩み寄りながら故人あるいは先祖の名を探している人は少なくない。特に初盆を迎える人であれば、会いたさに猶更想いが募る。
夜も更けたので名残惜しい気持ちを抱えながら、もと来た参道を帰る。声明を聞きながら、ひたひたと静かに気持ちが満たされていく。
駐車場の車が移動してヘッドライトが中門を照らす。はたと足が止まった。一度通り過ぎて、振り返る。縁を感じるとはこうゆうことなのか、探していた名前がそこにあった。
ああ、お会い出来ました。まり先生。
合掌
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