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欧米では高級肉、美容と健康にも良い、ラム(羊肉)の基礎知識 2
前回に引き続き羊肉の基礎知識について述べて行きたい。
古代から世界中で羊は飼育されており、1000種類を超える品種があると言われる。家畜の中で、牛も豚も鶏も特別な神の使いとは言われていないが、羊だけは別である。
Agnus Dei (神の小羊) として知られる羊はモーツァルトやヴェルディ、フォーレのミサ曲レクイエムにも詠われている典礼文が以下のAgnus Deiである。
♪♪♪Āgnus Deī, quī tollis peccāta mundī dona eis requiem.♪♪♪
「神の小羊、世の罪を取り去り、与えたまえ、彼らに安息を」
中東で生まれたユダヤ教、キリスト教、イスラム教で最も重要な動物と認識されていたのが「神からの使い」や「神への生け贄」とされた羊であった。
なお、Agnus Dei (神の小羊)は、イエス・キリストのことだとも言われる。人類の罪をあがなうために十字架にかけられた姿を表していると言われているのである。
主な羊の品種
さて、昔話と宗教の話はこのくらいにして、現代で飼育されている羊で特に重要な品種をピックアップして解説したい。 なお、食用としては、肉用種は主としてラム肉、羊毛種は主としてマトン肉、乳用種はミルクが生産される。
サフォーク種(肉用種)
英国原産のノーフォークホーンの牝とサウスダウンの雄をかけあわせて誕生した大型肉用種。顔と四肢が黒く角はない。肉質に優れ、輸入ラム肉の主流である。また、日本で少ないながらも飼育されている羊の8割がサフォーク種と言われる。
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ポールドーセット種(肉用種)
英国南部ドーセット・サマーセット州原産のドーセットホーン種の突然変異を利用してアメリカで開発された品種である。角は無い。肉とウールが利用されており、最大の特徴は繁殖シーズンが長く1年中繁殖が可能な事が特徴。 ラム肉として輸入される。
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サウスダウン種(肉用種)
英国南部のサセックス州原産、最も古い代表的な肉用品種であり、他のダウン種めん羊の基礎となっている。 ラム肉として輸入される。
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メリノ種 (羊毛種:マトン)
羊の代名詞的存在の種であり、世界各地に広く分布し、優れた品質の羊毛を最も多く産出している。主なメリノ種にはオーストラリアメリノ、フランスメリノ、NZメリノがある。
メリノ種の原型はローマ帝国時代にスペインのイベリア半島でローマのタレンティーネ種とアジア系・北アフリカ系・半島土着種を交配しできたとされ、15世紀にスペイン帝国が成立するとともにメリノ種は王室の独占する羊毛を産出する家畜となった。
その後、19世紀初頭にナポレオンのイベリア半島進出によってメリノ種は戦利品として持ち帰られ、英国によって新大陸オーストラリアやニュージーランド、南アフリカで飼育されるようになった。現在、食肉としては、羊毛の副産物として、豪州・NZのマトンとなる事が多い。
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ロムニー種 (羊毛種:マトン)
英国ケント州のロムニー地方の原産。NZ で飼育されている羊の約45%がこの羊種と言われている。ロムニー種の羊毛は繊維が太く硬いため衣類には向かずカーペットなどに使用されている。カーペット用の羊毛原料の70~80%がロムニー種である。食肉としては、羊毛の副産物のマトンが多い。
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イースト フリージアン種(乳用種)
ドイツ領のイースト フリージアン諸島が原産の乳用品種。北欧、東欧から南米まで世界各国で飼育されている。飲用される他、羊乳チーズなどの原料にもなる。なお、羊乳はヤギ乳より脂肪分が高く濃厚な味わいのためアイスクリームも作られている。羊乳やその製品は、牛乳アレルギーの人々に愛用されている。
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家畜化された羊の祖先
今回は羊の品種について解説したが、家畜化されたヒツジの祖先は、モンゴルからインド、西アジア、地中海にかけて分布していた4種の野生ヒツジに遡ることができるといわれる。それらは、中東にいるアジアムフロン、中央アジアのアルガリ、インドやパキスタンのウリアル、南欧のヨーロッパムフロンである。
大英帝国の影響
ところで、現在世界的に多く飼育されている家畜としての羊が英国原産であることの驚かれたことと思う。これは、羊毛やラム肉を生産するための飼育地の多くがオーストラリアやインド、ニュージーランドなどの旧英国領だったからではないかと考える。この点は肉牛や肉豚、ニワトリなどの品種でも同様に英国原産の家畜動物が多いことと通じるものがある。それだけ過去の大英帝国(British Empire)の影響は現代まで続いているのである。