世界で飼育されている三元豚の秘密
写真:ランドレース種 Zeilog@wikipedia
・ 日本で飼育される豚の主な品種
現在、日本で飼育されている肉用豚には大きく分けて白豚と黒豚があるが、豚肉生産量の9割以上は白豚であり、黒豚生産量は5%程度といわれている。
黒豚は後で詳細を説明するが英国原産のバークシャー種の純血種である。一方、白豚の多くは三元交配や四元交配といって3~4種類の豚の交配種である。その理由は、交配種は、発育が早く産肉能力高い、体質が丈夫で病気になりにくい、加えて肉質が良いなどそれぞれの原種の良い形質を受け継いでいるからだ。
我国で飼育されている主な原種は、デンマーク原産のランドレース種(白)、英国原産の大ヨークシャー種(白)、中ヨークシャー種(白)、バークシャー種(黒)、アメリカ原産のデュロック種(赤褐色)、ハンプシャー種(黒)の6種である。
1) ほとんどの白豚は三元豚 (交配種:三元交配、四元交配)
世界的に飼育されている豚のほとんどは、ランドレース種(L)と大ヨークシャー種(W)のF1交配種(L x W)にデュロック種(D)を掛け合わせた三元交配(F2交配種LWD)が主流である。(下図参照) 品種によってオス・メスの掛け合わせ方法があるが、煩雑になるので説明は省略する。また、生産者によっては、F2三元交配種(L WD)に他の品種を四元交配し、独自の肉質を追求しブランド名をつけて販売上の大きなセールスポイントとしているところもある。
L:ランドレース♀ ――― W:大ヨークシャー♂
↓
(L x W)F1交配種♀ ――― D:デュロック♂(止め雄)
↓
F2三元交配豚 (LWD肥育用肉豚)
注)止め雄(トメオス)
止め雄とは三元交配など交雑肥育豚を生産する場合、最終交配に使う“種雄豚”の事である。通常は味が良いデュロック種(D)や黒豚すなわちバークシャー種(B)が止め雄に使われる事が多い。
L: ランドレース種 (Landrace)
デンマーク原産の白色大型の豚で、発育が早く産肉能力に優れ、繁殖能力も高い。また胴体が長くロースやバラ肉が多く取れるため好まれている。デンマーク、イギリス、オランダ等で多く肥育されている。 我国には50年前に米国から導入されて以来、繁殖用の純血種が最も多く飼育されている。
W: 大ヨークシャー種 (Large Yorkshire 又は Large White)
イギリスのヨークシャー地方の在来種に中国種、英国種を交配して成立した白色大型の豚で、胴が長いため肉が多く、ベーコンタイプの豚と呼ばれている。発育が早く、繁殖能力も高い。我国には100年前の明治39年に英国から初めて導入され、昭和30年代に日本全国に広がった。
D: デュロック種 (Duroc):
アメリカ東部原産の赤褐色の大型豚で、発育がよくロース芯も大きい。また味が良など、肉質も良いため最後に交配するオス豚“止め雄”に使われるのが多い。我国には昭和30年代の終わりに沖縄経由で導入されたが、本格的には昭和45年(1970年)以降に導入された。なお一部地域では純血デュロック種を飼育して味の良い「赤豚(紅豚)」として飼育されている。
2) 黒豚 (バークシャー種: Berkshire)
イギリス南部のバークシャー州が原産地で、全体は黒いが、鼻、四肢、尻尾の6か所が白いため「六白」とも呼ばれている中型の豚である。白豚に比べて繁殖能力、発育能力など多少落ち、三元交配の豚より成育に長期間必要なため、コストは高い。また、純血種であるため三元交配種に比べて病気に弱く、2014年9月から約1年間流行した疫病(豚PED:流行性下痢)が、日本全国で流行した時にはかなりの頭数が減少し、黒豚の持続生産が危ぶまれた時もあった。(現在は回復している)
この様に生産には不利な黒豚だが、肉質が優れているため人気が高い。脂肪の融点は高くしっかりしており、肉のキメは細かく柔らかなのが特徴である。 なお、我国ではバークシャー純血種にのみ“黒豚”の表示が認められている。
黒豚は、我国には100年前の明治39年(1906年)に導入されたが、大型種に押されて一時は九州南部以外には見られない程減少したが、近年になって肉質が見直されたため飼育が増加した。なお、バークシャー種もデュロック種同様に三元交配などの“止め雄”に使われるのも多く、日本の高級銘柄豚となっている。
黒豚交配三元豚の一例
L:ランドレース♀ ――― W:大ヨークシャー♂
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(L x W)F1交配種♀ ――― B:黒豚(バークシャー)♂(止め雄)
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F2三元黒豚交配豚 (LWB肥育用肉豚)