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研究発表スライドの作り方 ver.齋藤光貴

はじめまして。BridgeLab(共創データ工学研究室)に所属している学部4年次の齋藤光貴と申します。

7月末に卒業研究中間発表会で発表をして、9月中旬には大学院入試で今までの研究と大学院でやりたい研究のプレゼンをしました。その時のスライドは下に載せておきます。

この記事では、研究発表スライドを作成する時にどのような流れでどのようなことに気をつけて作成したのか、を自身で振り返りをする意味も込めて、紹介します。


良いスライドを作るためにスライドを作らない

良いスライドを作るためには、いきなりスライドを作らないことが重要だと思っています。

なぜなら、誰かに自分の研究の意義やスゴさを伝えることを目的に研究発表をするからです。決して、研究発表スライドを作ることが目的ではありません。

では、誰かに自分の研究の意義やスゴさを伝えるためには、どんな要素が必要なのか。そもそも、発表する相手って誰なのか。自分の研究の意義やスゴさって何なのか。そこを自分が把握していないと、自分の研究の意義やスゴさが相手にうまく伝わりません。

なので、自分の研究の意義やスゴさが相手に伝わるように、3ステップで伝えたいことを明らかにしていきます。

伝えたいことを書き殴る

まずは、シンプルに自分が伝えたいと思っていることをひたすら書き殴っていきます。「これ要るかな」と悩むものも書きます。

卒業研究中間発表会の時はそんなに書き殴れなかったですが、大学院入試でのプレゼンの時は書き殴れたと思います。

7月末の卒業研究中間発表会に向けて伝えたいことを書き出したもの
大学院入試でのプレゼンに向けて伝えたいことを書き出したもの

そうすることで、自分が伝えたいことをしっかり言語化できる上に、足りないところも見えてきます。なので、後々「この部分の説明を忘れてた」という事故を防ぎやすくなります。

5W1Hを考える

自分が伝えたいことを言語化できたら、次は5W1Hを考えます。みなさんご存知の通り、5W1Hとは when(いつ) where(どこで) who(誰に) why(なぜ伝える) what(どんな内容を) how(どうやって伝える) の英単語の頭文字を取ったものです。

なぜ5W1Hを考えるのかというと、相手や状況によって最も伝えるべきことや伝え方が変わってくるからです。

卒業研究中間発表会での主な聴衆は学生です。学生たちは、そもそも自分の研究に関する知識と興味を持たない人が多そうです。また、発表時間は5分と短かったです。

なので、この時は「自分の研究の意義を5分で初心者にも分かるように説明する」という方針にしました。

卒業研究中間発表会の時に書き出した5W1H

一方で、大学院入試でのプレゼンは大学院教員が聴衆となります。大学院教員は、自分の研究について「ちゃんと研究内容を考えているかな」と興味を持っていますし、知識もありそうです。プレゼン時間も10分程度でした。

なので、この時は「自分の研究の意義と本学でやる意義を10分で詳しく説明する」という方針にしました。

大学院入試でのプレゼンの時に書き出した5W1H

つまり、相手の特性や状況によって、伝えたい内容と伝え方が大きく変わります。したがって、5W1Hを考えるのは重要になります。

ただ、2つとも why(なぜ伝える) を書き忘れてしまいました。反省してます。

テイクホームメッセージを考える

5W1Hも考えられたら、いよいよテイクホームメッセージを考えていきます。テイクホームメッセージとは、最低限伝えたいメッセージのことです。

卒業研究中間発表会のテイクホームメッセージは「自身の経験と興味から自己調整学習をスムーズに進められるように支援することが大事である」でした。興味も知識も持たない相手に5分だけで研究内容や実験計画を細かく伝えるのは、至難の業です。なので、自分の研究の意義を伝えて「この研究は役に立ちそうで面白そう」と思ってもらうことを目標にして、このテイクホームメッセージにしました。

大学院入試でのプレゼンのテイクホームメッセージは「本学で自分の研究をやる意義は『質の高い教育をみんなに提供する』ことで、研究内容もきちんと提供できるものになっていること」でした。興味を持って聞いてくれる知識のある大学院教員には、きちんと意義と内容両方ともに納得してもらう必要があるので、このテイクホームメッセージにしました。

このように、書き殴った伝えたいことと5W1Hに照らし合わせて、改めてテイクホームメッセージを考えると、最も伝えたいことを言語化できるようになります。

良いスライドを作るためにスライドを飾らない

テイクホームメッセージが決まったら、いよいよスライドを作っていきます。しかし、図表やアニメーションなどで綺麗に作っていくわけではありません。テイクホームメッセージが相手に伝わるためには、どのようなシナリオでそれぞれのスライドで何を伝えたいのかを明らかにしなければいけません。

一番伝えたいことだけ書く

最初にやることは、それぞれのスライドで一番伝えたいことだけ書くことです。シナリオや図表などは一切考慮せず、とにかくテイクホームメッセージに基づいて伝えたいことだけを書いていきます。

僕の場合、あらかじめテンプレートスライドを用意しています。そのテンプレートスライドには、一番伝えたいことを上に置いてあります。その下に本文や図表を置くスペースを空けています。

テンプレートスライド

まずは、本文部分には一切手を触れず、一番伝えたいことだけを書き込んでいきます。その時、必ず一文一行で書きます。

一番伝えたいことだけを書き込んだスライドの一部

一番伝えたいことだけを書き込んだスライドを複数枚作っておきます。この時、スライドの流れがめちゃくちゃ、図表がなくて分かりづらい、ということが起きます。しかし、それは後ほど考えていきますので、このステップでは、とにかく一番伝えたいことだけをスライドに書き込んでいきます。

シナリオを作る

一番伝えたいことだけ書いたスライドを複数枚作ったら、シナリオを作っていきます。伝えたいことがはっきりしていても、シナリオがめちゃくちゃだと、伝わるものも伝わりません。なので、作ったスライドを並び替えてシナリオになるようにしていきます。

スライドを並び替える時は、スライド同士を接続詞などで繋げられるかを意識しています。主に接続詞で繋げられるかを見ていますが、伝えたいこと同士をつなぐ言葉になっていれば、シナリオはできていると考えて大丈夫です。

接続詞で繋げられるようにスライドを並び替えた

スライドを並び替えてシナリオを作ることができれば、研究発表スライドはほとんど完成していると言ってもいいと思います。図表などがなくても、"なんとなく"言いたいことは分かるはずです。

ですが、あくまでも"なんとなく"であって、相手にきちんと伝えたいことが伝わるわけではないのです。なので、次のステップは伝えたいことを補足する材料を集めていきます。

伝えたいことの材料を集める

伝えたいことの材料にどういうものが必要かを考えるためには、相手が疑問に思うことや知りたいと思うことを想像してみると良いと思っています。

例えば、下のスライドを見た人は「LLMチューターと対話ってどんな風にやるのかな?」「SRL能力って具体的になんだろう?」という疑問を持つかもしれません。

LLMチューターと対話してSRL能力を伸ばすということを伝えたいスライド

なので、対話の例を図示したものやSRL能力の具体的な説明が伝えたいことの材料になりうると考えられます。

このように、各スライドに伝えたいことの材料を集めていきます。

良いスライドを作るためにスライドを詰め込まない

各スライドに伝えたいことの材料を集められたら、いよいよ本格的(?)なスライド作りに入ります。ここでは、今まで考えてきたものをスライドに反映していくだけの作業になります。

ここで、情報量が多くて見づらいスライドにしてはいけません。なぜなら、発表で聴衆がスライドを見る時間は限られているからです。聴衆が見るものはスライドだけではなく、手元にある資料や発表者などもあります。なので、5秒程度で伝えたいことを聴衆に分からせる(または分かった気)ことが大事となります。

特に、ろう・難聴者が聴衆である場合、なおさら大事なポイントとなります。聴者なら聞きながらスライドを見ることができますが、ろう・難聴者はスライドと手話(あるいは文字通訳)を同時に見ることができません。なので、スライドはパッと見て分かるものにし、口頭説明に集中できるようにしてあげる必要があります。

単文で完結する

これはシンプルです。長文だと読む気を失せる上に短い時間で分かった気にならないので、単文で完結しましょうという話です。

図表を活用する

単文だけでは伝えられないというものもあります。その時は図表を活用すると良さそうです。

自分の例でいうと、卒業研究と大学院での研究の違いを説明するスライドがあります。

卒業研究と大学院での研究の違いを説明するスライド

これを文だけで説明すると長くなってしまいます。ですが、図を活用することで、少ない文で説明することができています。

このように、図表を積極的に使うことで、パッと見て分かりやすいスライドにすることができます。

配置を考える

特に気をつけていることは、余白と視線移動です。

スライドの周囲や図表の間に余白を入れないと、スライドが窮屈で見にくくなってしまいます。僕の場合は、あらかじめスライドにガイド線を入れています。図表や文はガイド線の内側に置くことで、余白があって見やすいスライドになるように目指しています。

余白を作るようにガイド線を入れている

視線移動では、「Z」「N」のような形に視線が動くのが自然らしいので、その動きを邪魔しないように、図表や文の配置を考えています。

詳しいことは、『伝わるデザインの基本 増補改訂3版 よい資料を作るためのレイアウトのルール』という本で説明されています。参考文献としてURLを載せていますので、気になる方はクリックしてみてください。

参考文献

下野孝一, 吉田 竜彦:プレゼン基本の基本 - 心理学者が提案するプレゼンリテラシー -. コロナ社.2021.

高橋佑磨,片山なつ:伝わるデザインの基本 増補改訂3版 よい資料を作るためのレイアウトのルール.技術評論社.2021.

榊巻 亮:世界で一番やさしい 資料づくりの教科書.日経BP.2019.


以上、齋藤光貴バージョンの研究発表スライドの作り方でした。

特に、BridgeLabに所属している後輩たち、これから配属されるであろう後輩たちが、この記事で自分の研究の面白さを人々に伝えることができるようになれば嬉しいです!もちろん、自分もより洗練されたスライドを作れるように頑張っていきたいです!

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