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口癖が企業文化をつくる

2016/12/26 小野寺友子

最近様々な企業に携わる中で感じるのは、顧客不在の発想です。企業が大きくなればなる程に、役割は分けられ、仕事は効率化・細分化され、最終的な価値提供の対象である顧客の話は遠のいていきます。ついつい自分たち提供者側の話が中心となってしまう状況に、掲げられた目指したい企業文化の「文言」(行動指針やDNA等と言われることが多い)とのギャップを感じてしまいます。
今日は、主にto cビジネスを念頭に置きながら、企業文化に関して書きたいと思います。

エドガー・シャインは、企業文化を「ある特定の集団が外部への適応や内部統合の問題に対処する際に学習した、集団自身によって創られ、発見され、また発展させられた基本的仮定のパターン」と言っています。
難しい表現ですが、つまりは、表面的な「文言」だけをいくら掲げても無意味ということです。普段、どんな風に顧客に接しているのか、どんな風に社員同士で話をしているのか、そこで使われる言葉や態度が文化を作り、醸し出されていきます。現場社員の行動を変えたければ、企業としての目指したいことを掲げるだけでなく、実態に合わせて現場をデザインする、双方のアプローチが必要です。

ビジネスを「なぜ誰に何をどのように」で単純化して考えれば、なぜはミッション、誰にはマーケティング(ターゲティング)、何をは商品サービス、どのようにはオペレーションとなり、経営をはじめそれぞれの担当部署が知恵を絞ります。一見、これら部署間の連携がとれれば顧客不在にはならず、常にターゲットした顧客にフィットする商品を生み出し、うまく流れるように感じます。
顧客接点現場の改革プロジェクトに多く携わる中で、不足を感じるのは現場社員の行動に対するアプローチです。川上から整えられた台本も、現場で体現されていないことが多いのです。(台本がうまく整っていないこともままありますが…)現場では、「与えられた」台本を「間違わずに読む」ことが重視されがちで、少しずつもともとそこにあった「なぜ」がずれていきます。間違わないための仕組みや間違わないための教育が主となり、いつの間にか内向きに自分たちの理屈を通すことが企業文化になっていきます。体現されていない、のは社員のスキルの問題だけではないのです。

BRICOLEURのプロジェクトでは、「普段の言葉を変えると思考が変わり、思考が変わると行動が変わり、文化が変わる」と言い続けています。
ナレッジマネジメントのプロジェクトでは、スタート段階で「なんとなく」「私には簡単」の言葉を禁じることを決めました。ささいなことです。しかしながらそうすることで、ハイパフォーマーであるプロジェクトメンバーは「新人にも分かるようにするには?」を考え始め、「自分の技術を伝えるためにこれは何と表現すればいいのだろう?」と悩み始めます。プロジェクトが進むにつれ、徐々にプロジェクトメンバーを発端に現場での新人メンバーへの関りが変わり、周囲にも伝播し、新人を育てる文化が育まれつつあります。
「人を育てよ」と掲げるよりも、近道でリアリティがあると思いませんか?

シャインの言葉は、企業文化は「よく機能して有効と認められる」で締めくくられます。普段の口癖を変えることで、実現したい企業文化が生まれ始めるかもしれません。

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