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「プレイヤーからマネジャーへの転換」vol.6

2019/05/10 野元義久

企業における最も古典的な断絶であり、ダイバーシティ対応への鍵ともなる、
「”優秀な個人プレイヤー”から”チームを率いるマネジャー”への転換」をテーマに連載しています。
月刊人事マネジメント(株式会社ビジネスパブリッシング)

今号は「チームを組成するスキル」です。前号でおすすめした、一つ上の“マネジャーの視界で捉えた問題”において、必要なメンバーを募り、チームで問題解決に取組む方法を紹介します。

vol.6 ◆◆チームを組成するスキルを備える◆◆

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チームの目的に納得しているか?

「ある特定の目的のために、多様な人材が集まり、協働を通じて、相乗効果を生み出す少人数の集合体」
(Jon R. Katzenbach)
「組織成立の3要素は、共通の目的、協働意思、コミュニケーションである」
(Chester I. Barnard)

ということは、まず、
ある特定の共通の目的があるか?それを関わる人たちが納得しているか?
がポイントです。

何のため(目的)に存在し、何のため(目的)にその仕事に取り組むのか。
目的が大切だということはわかっていますが、見失うことは少なくありません。
目的を考え始めると各社の経営理念や個々人の人生の目的にまでさかのぼることになりそうです。
実際、今日の顧客訪問の目的、今日の会議の目的、がすぐに答えられない人も多い。
際限ないので、ここでは前号で考えた“解決したい問題”に留めましょう。
留めたとしても、関わって欲しい人たちそれぞれが、“いったい何のため(目的)に、自分はその問題に取り組むのか”を納得しないと協力は生まれません(強制指示で貢献させている状態をチームとは呼びません)。また、同じ会社、同じ職場のメンバーに関わって欲しい場合でも、それぞれの人にとって目的は異なるかもしれません。旗を振ろうとする私たちは、まず自分にとっての目的を添えて取組みたい問題を机の上に載せ、関わって欲しい人たちにとっての目的を尋ねてみることからチームつくりが始まります。それぞれが自身の関わる目的を明らかにしようとし始めたなら、大きな一歩が踏み出せています。

決めつけずに、“具体的に”“客観的に”に努める

目的を添えて取組みたい問題は“理想”と“現状”のギャップです。
こんな状態から(現状)→こんな状態にしたい(理想)という説明が必要ですが、多くの人がここで躓きます。熱いオモイをもっている人ほど陥りやすいのが、決めつけてしまうことです。熱いと急いてしまうのでしょう。
これ(現状)は良くない、こうなるべき(理想)だ!だから、こう(手段)しよう!”
「これ:現状」「こうなるべき:理想」「こう:手段」において決めつけた説明で通用するのは、よほどの強制権を持った場合か、熱さ先行がほほえましい若者か、だけでしょう。

例えばあなたが同僚から「今の職場は非効率です。だからみんな残業が減りませんし、疲れてしまってさらに効率が悪くなっています。無駄をなくして生産性を上げましょう!」と持ち掛けられたら、どんな返事が浮かぶでしょうか?
こんな質問をしたくなりませんか?
・「今」っていつのこと?いつからのこと?いつものこと?
・「非効率」って何の基準でみているの?
・「何の」効率をさしてるの?具体的に何が起きているの?
・「みんな」って誰?
・「減って」ないかな?
・「疲れている」って何をみて言っているの?「みんな」かな?

これらに具体的に客観的に答える準備をしておくということです。この時、“自分の解釈、評価”や“それが起きている理由”は控えます。まず、“現状の認識が揃うか否か”に留めます。
よって、カメラやビデオで撮ったように、現状を相手に説明することを勧めています。現状とは“現在の状態”です。状態にはあなたの評価や起きている理由は含まれません。あくまでも起きている事実です。これは訓練しないと出来ません。なぜなら、「結論は?」「つまりは?」「あなたはどう考えるの?」という問い掛けに浸かっている私たちは、丁寧に事実を確認することを飛ばしてしまう傾向にあるからです。
自分に見えている状態にも限りがありますし、偏りもあるでしょう。関わって欲しい人たちと、“今、起きていること”を具体的、客観的に挙げ合う時間が持てれば、さらに大きな前進です。現状がかみ合えば、自然と理想状態(チームの共通目的)のすり合わせに進み、放っておいても手段のアイデアが出てきます。

共に、天使と悪魔になる

理想状態がすり合い始めた頃に、必ず出てくるのが“いや、出来るのかなぁ。。そこまでは難しいよなぁ。。ホントにやるの、みんな。。”といった不安・懸念です。時には何度も行ったり来たりします。私たちにとってはネガティブな反応にみえて、萎えそうになります。
しかし、ここはチャンスです。みんながリアリティをもってこの問題解決に乗り出しているからこその反応です(みんな理想を実現したいけれど、大きな傷を負いたくもないので、当たり前の反応でもあるわけです)。だからもう一歩、進めます。
天使の視点で“この理想が実現したら、こんなに良いことがある(効用)”“この理想の実現には、こんな後押しがある。使えそうな力や資源がある(促進要因)”と、悪魔の視点で“こんな反対勢力がある。きっとこんな壁がある(阻害要因)”を挙げ合います。
ここで大切なのは、関わる人全員で、両方の視点を共に体験することです。天使の視点でエネルギーを高め、アイデアを出し、悪魔の視点で気になっていることは吐き出して対策を講じる。このプロセスを共に出来れば、チームの協働意志も高まります。

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