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Fieldwork #6 Tyringham
今回のニューイングランド地域のフィールドワークはニュージャージーを基点にするため2回のラウンドに分け、スケジュールを組みました。
第1ラウンドは、ニュージャージーより北に位置する、ハドソン川周辺のウォーターブリット、マウントレバノン、ハンコックを目的地としていました。
マウントレバノンのヒストリックサイトを散策し、その後、私がアメリカを巡っていることを知って声を掛けてくれたコレクターのMillerさんと合流し、オルバニー周辺の別荘を訪問させていただきました。
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個人邸なので写真は控えますが、大変貴重なコレクションを快く見せていただき、じっくりと触れることが出来ました。
可愛らしいアームレスロッカーはNo.4のサイズです。ミラーさんは座面を編み直すなど修復を行ってから、販売などを行っています。
コレクターの方々は、あるモノに対し、その時点の値段をつけるという意味で、文化保存の観点で、客観的な価値を与える大変重要な役割を担います。
多くのコレクターの方はシェーカー文化に惹きつけられ、家具や道具を集めるようになり、また適切な物の価値を知るために、年代やコミュニティの判別のような知識も豊富です。
彼らは店舗や様々なアンティークフェアへの出展も行い、出版物へのコレクションの提供など精力的に広報も行います。
ミュージアムが行うような地続きの文化発信とは異なる角度、第三者的な文化発信がコレクターの人々によって行われています。
シェーカー様式の家具を作る私たちは、コレクターの方々の立場によく似ています。
様式全体の理解度を深め、シェーカーという文化に興味を持ってもらえるように発信を続けていく必要があります。
ミラーさんとは本邸に後日お誘いいただき、さらに多くのコレクションを見せていただきました。その後、関西へいらっしゃった際にお会いすることもできました。
ニュージャージーに戻るため、オルバニーから南下する途中、マサチューセッツのティリンガムのコミュニティサイト周辺に立ち寄りました。
ティリンガムはハンコックビショップリックに含まれるマサチューセッツ西側にあったコミュニティです。初期のコミュニティ群(1787-1794の創設コミュニティ)では最小規模のコミュニティでした。ティリンガムは1875年に解体されることとなり、南北戦争以来、傾きつつあったシェーカー教団の衰退を決定づける出来事として、歴史的に重要なコミュニティでもあります。
コミュニティサイトのエリアから少し外れた位置にShaker Millという建物があります。
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この建物もかつてはグリストミルとして、シェーカーの人々が使用していました。今はローカルのブックストアとして利用されています。訪問時は残念ながらお休みでしたが、とても可愛らしい書店です。
歴史を辿ると、実はこの建物はシェーカーの建築した物ではなく、購入した建物でした。このミルのように、すべての建築をシェーカー自身で行なったわけではなく、必要に応じて物件を購入するケースもしばしば見られます。
シェーカーがアメリカに入るころには、すでに多数の開拓者たちが思い思いに、土地を開墾していました。もちろんこの地域にはそれ以前から、ネイティブの方も多く生活をしていました。
ボストンのような古い歴史を持つマサチューセッツ周辺は、すでにある程度の開発が行われている地域です。他方、シェーカーの人々が入植したウォーターブリットのように、新たに開墾していかなければならない地域もありました。
このミルのように購入し使用された物件や設備から、彼らの目指す自給自足やDIYというのは作ることが目的ではなく、そこで暮らしていくための環境を形成する手段であったことがわかります。