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画家たちが憧れたブルターニュ展、国立西洋美術館とSOMPO美術館で3月から開催

3月から開催されるブルターニュの展覧会

  ちょうどほとんど同時期に東京の2つの美術館で下記のような展覧会があります。近代絵画史に「ポン゠タヴェン派」そして「ナビ派」誕生のきっかけとなったブルターニュの魅力をたっぷり楽しんでいただけるます。

ブルターニュって何のこと?

 今年の春はブルターニュづくし。「ブルターニュて何?」と思っている方もいると思います。ブルターニュは地方名です。何処の国にあるのかというとフランスです!

 パリのモンパルナス駅(Gare Montparnasse)から西に向かい、ブルターニュ東部にあるレンヌ駅(Gare de Rennes)までTGV・高速列車でわずか1時間半で到着します。

なぜブルターニュだったのか?

 19世紀はじめまでの旅は乗合馬車か船がほとんどでしたが、鉄道網が整備され1862年にパリからブルターニュ西部のカンペール行きの鉄道が開通すると、パリなど都会に住む人々は自由な時間を活用してブルターニュへ来るようになったのです。

 ブルターニュは北は英仏海峡、南は大西洋に面した半島です。風光明媚で食べ物も安くて美味しいのです。特にオマール海老や蟹、ホタテ、生牡蠣など海の幸は絶品です。

 そして村ごとに異なるケルト系言語や民族衣装、素朴で信仰心あつい人々が行うパルドン祭のような宗教儀式、他の地域にはないカルヴェール(キリスト磔刑像)や独特な宗教建築など、フランスにおける内なる異郷がそこにはありました。

◆憧憬の地 ブルターニュ 国立西洋美術館(東京・上野公園)


ポール・ゴーガンの描いたベル=イル

憧憬の地 ブルターニュ モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷
La Bretagne, source d’inspiration : regards de peintres français et japonais

19世紀後半から20世紀にかけ、各国の画家たちがフランス北西端のブルターニュ地方を訪れ、この地を多くの作品に描きとめました。本展では国立西洋美術館の「松方コレクション」をはじめ、国内美術館や個人コレクションおよそ30か所からブルターニュを表した作品約160点を選りすぐり、それぞれの画家たちがこの地に何を求め、見出したのかを探ります。さらに、同じころブルターニュを訪れた日本の画家たちにも注目する初の展覧会となります。
【会期】2023年3月18日(土)- 6月11日(日)
【会場】国立西洋美術館(東京・上野公園) 〒110-0007 東京都台東区上野公園7-7
【主催】国立西洋美術館、TBS

国立西洋美術館


 第1章「見出されたブルターニュ:異郷への旅」で、イギリスの風景画家ウィリアム・ターナーの柔らかな色調の水彩画、チェコ出身アール・ヌーヴォーを代表する画家であるアルフォンス・ミュシャのコワフを身につけた女性像、フランスの画家や版画家が手がけた豪華挿絵本、「ピクチャレスク・ツアー(イギリスで19世紀初め頃に流行した絵になる風景を探す旅)」を背景とした作品を集めています。

 第2章は「風土にはぐくまれる感性:ゴーガン、ポンタヴェン派と土地の精神」です。ポン=タヴェン村にはフランスだけでなくアメリカやイギリス、北欧をはじめ世界中から画家が集まっていました。流派や国籍の枠を超えた交流から美術史に新たな息吹が吹き込まれました。

 憧憬の地 ブルターニュではゴーガンの作品10点以上が展示されるので造形様式が変遷する様がよくわかります。ポン=タヴェン派の画家たちは、1889年、パリ万国博覧会の会場内にあるカフェ・ヴォルピーニで「印象主義および綜合主義グループ」と称する展覧会を開きます。また村からパリに戻ったポール・セリュジェはピエール・ボナールやモーリス・ドニらアカデミー・ジュリアンの仲間とナビ派を結成します。

 上記のポスターはクロード・モネが描いたベル=イル(南岸に位置するブルターニュ最大の島)の風景です。アトリエのあったノルマンディー地方とは異なる色彩の海を描くため2週間の予定を75日に延ばし、取りつかれたように絵筆を握っていたそうです。

 第3章は「土地に根を下ろす:ブルターニュを見つめ続けた画家たち」と題して、ブルターニュにおいて画家が長期にわたって培った土地との対話のなかでのまなざしを追っています。ブルターニュに魅せられた一人が版画家のアンリ・リヴィエールでした。浮世絵に興味を抱いた彼は独学で木版画技術を習得し、ブルターニュに別荘を構えその自然を多色摺り木版画に残しました。

 第4章「日本発、パリ経由、ブルターニュ行:日本出身画家たちのまなざし」です。この頃パリに留学していた日本人画家たちもこぞってブルターニュを訪れました。今回は黒田清輝や久米桂一郎、山本鼎、藤田嗣治、岡鹿之助らが残した作品も展示されます。

◆ブルターニュの光と風 SOMPO美術館(東京・西新宿)


アルフレッド・ギユ 「さらば!」

ブルターニュの光と風  画家たちを魅了したフランス〈辺境の地〉
La lumière et le vent de Bretagne, collection  du musée des beaus-arts de Quimper

豊かな自然と独自の文化を持つことで知られるフランス北西部の地、ブルターニュ。本展は、ブルターニュに魅了された画家たちが描いた作品を通じ、同地の歴史や風景、風俗を幅広くご紹介する展覧会です。深緑の海や険しい断崖が連なる海岸線、平原と深い森とが織りなす固有の景観、また、そこに暮らす人々の慎ましい生活と敬虔な信仰心は、19世紀初め以来、数多くの画家たちの関心を掻き立ててきました。本展では、ブルターニュに関する作品を多数所蔵するカンペール美術館の作品を中心に、45作家による約70点の油彩・版画・素描を通じて、フランス〈辺境の地〉ブルターニュの魅力をご覧いただきます。
【会期】2023年3月25日(土)- 6月11日(日)
【会場】SOMPO美術館  〒160-8338 東京都新宿区西新宿1-26-1
【主催】SOMPO美術館、フジテレビジョン

SOMPO美術館

 

 第1章は「ブルターニュの風景:豊饒な海と大地  」です。 ブルターニュ出身のアルフレッド・ギユはパリでアカデミックな絵画を学んだ後故郷に帰り、海と共に生きる人々が逞しく生きる姿を描き続けました。ポスターの「さらば!」は嵐で転覆した漁船の残骸と命を奪われた我が子を抱擁する父親の姿を描いたものです。国立西洋美術館のクロード・モネが描いたベル=イルの風景とは対照的ですが、どちらもブルターニュの魅力を引き出してくれています。

 第2章「ブルターニュに集う画家たち― 印象派からナビ派へ」1886年にゴーガンがポン゠タヴェンに居を構えると、若い画家たちとの交流の中で新たな技法を模索します。そして印象派とは異なり強調された輪郭線と平面的な色彩を特徴とする「クロワゾニスム」を作り上げ、「ポン゠タヴェン派」が誕生します。それはパリでピエール・ボナールやモーリス・ドニらによる「ナビ派」へと繋がってゆきました。彼らは、心象的なイメージを重んじ自由な筆致で色面と線で大胆に表現する手法をさらに展開しました。奥行きがなく片面的で、空白部分も意識的に配置する画面構成は浮世絵の影響もあると考えられています。

 第3章「新たな眼差し ― 多様な表現の探求」新印象派の明るい色彩はブルターニュの画家たちにも影響を与えました。またサロンを中心に活動していたシャルル・コッテやリュシアン・シモンら「バンド・ノワール(黒い一団)」と呼ばれる一派は、ギュスターヴ・クールベの写実主義を継承した風景画や黒を多用したコントラストの強い劇的な作品を描きました。

 20世紀に入ると、アンリ・マティスの自由で激しい色彩と動きを特徴とするフォーヴィスム、ついでパブロ・ピカソの形の再構築を表現したキュビスムなどが起こります。ブルターニュでもこれまで描かれてきた民族衣装を身につけた女性を新たな様式で描いています。

カンペール美術館とブルターニュ博物館へ行ってみよう

  ブルターニュに興味を持っていただいたら、実際に現地においでください。画家たちが夢中になった大自然が今でもあなたを待っています。パリのモンパルナス駅からカンペール駅までTGV・高速列車で約3時間半です。

 カンペール美術館は1872 年に開館して以来、フランス国内各地の美術館に散逸していたブルターニュをテーマとする作品をカンペールに移管し、コレクションを充実させてきました。

カンペール美術館
Musée des Beaux-Arts de Quimper
40, Place Saint-Corentin
29000 Quimper


   Musée des Beaux-Arts de Quimper
のすぐ隣に大聖堂がありますが、その南にMusée départemental breton ブルターニュ博物館があります。先史時代から20世紀初めに至るブルターニュの歴史や文化を紹介しています。伝統家具や美しい衣装、カンペール焼きなど必見です。

ブルターニュ博物館
Musée départemental breton

1, rue du Roi Gradlon
29000 Quimper




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