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夜に出発。旅には想定外がつきまとう話

11月に出雲に行くことを画策して飛行機チケットを検索。全国から集まってくる神々を迎える「神迎祭(かみむかえさい)」に合わせた便は、割高の席しか余っていなかった。安い時期の料金に比べるとその差は倍以上。さすがにこれを払う気にはなれず断念。

メモ帳にある「いつか行く場所」の候補地をざっと眺める。白羽の矢が立ったのは和歌山県。熊野三山を巡る熊野詣だ。

10月1日、20時頃。夕食と風呂を済ませてから車に乗り込んだ。静岡から和歌山まで車でおよそ4時間半。運転で時間と体力を使うので、初日は移動と泊まりだけに決めた。

真っ暗な第二東名をひたすら走る。山の中を走っている、標高が高い、それくらいしかわからない。愛知を越えてからは伊勢湾自動車道に入りひたすら直進。勢和多気JCTで降りるはずがそのまま直進してしまい、およそ30分のロス。はじめて通る道、こういうことはよくある。勢和多気まで戻ってきたと思ったら、今度は夜間工事により勢和多気IC~紀伊長島ICが使えず再び下道に降ろされる。さらに30分のロス。

旅では必ず不測の事態が起こる。万事計画通りというわけにはいかない。予定していた道が通れない、訪れる場所が臨時休業だった、忘れ物をしてしまった。「不測の事態がたぶん起きる」ということを想定しておかなければいけない。しかし立て続けの失敗続きに心を乱されてしまった。車中独りをいいことに、大声で「くそう」と叫ぶ。

気を取り直して下道を進む。知らない町、暗いので景色もよくわからない。車を走らせながら予定を組み替える。この日の宿は三重県の「鬼ヶ城」という景勝地の駐車場にした。鬼ヶ城自体はもともと訪れる予定だったので、大きな変更ではない。

到着。背後は山、見えないが地図では正面を海に挟まれているようだ。想像以上に暗い。寝る前にトイレに行こうと思って車を降りる。空を見るとものすごい数の星が光っていた。キラキラというよりはギラギラしていて、隙間なく一面に広がる様子は、綺麗だがすこし気持ち悪い。星空というよりは深淵な宇宙を見ているような、吸い込まれそうな恐怖感に駆られた。

背後の山からガサガサと大きな獣が動く音がする。落石防止の金網があるので駐車場に出てくることはないと思うが驚く。姿は見えないが、一瞬の鳴き声から鹿のような気がした。

車に戻って寝る。駐車場は微妙な傾斜になっていて、数時間ごとに目が覚めてしまった。

つづく

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