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鬼ヶ城と自然のこと【三重県熊野市】

10月2日、起きたら鬼がいた。

赤鬼と青鬼の人形、間には「鬼」の文字看板。ぐっと伸びをするとやわらかな潮風が頬に当たる。少し遠くからは波の音がする。昨晩はまったく気づかなかったのが不思議だ。

鬼ヶ城(おにがじょう)は流紋岩(マグマが冷えて固まった岩)を波風が削って作った奇岩、洞窟の遊歩道。真下に海を見ながら岸壁沿いを歩けるようになっている。地図でみると片道1キロくらい。朝の散歩にちょうどいい距離なのですべて歩くことにした。

鬼ヶ城、岩場のところどころが鬼の顔のよう
岩場のギリギリまで下りて釣りをしている人たち
蜂の巣状の風蝕痕、見る人によっては苦手かもしれない

流紋岩の崖は地盤の隆起の影響で段々になっている。岩の上部は鋭い牙のように尖り、下から天井部分を見ると蜂の巣のように小さな穴が無数あいている。これらの穴は風蝕によるもの。風に運ばれた砂が岩を削って作るそうだが、なぜこうなるのか、どれだけの年月をかけて出来上がるのか。興味深い。鬼の口のなかに入ってしまった気分。

猿戻り、犬戻りと呼ばれる狭い道。岸壁ぎりぎりを歩く。対面から人が来たらすれ違うことも難しそうだ。

鰐岩

鰐岩と呼ばれる岩場には強い波が繰り返し当たる。寄せては返す波には強弱があり、強い波のときは鰐岩を飲み込み手前側まで海水が流れてくる。岩に当たった波は激しい音と共に千々に砕け、白い泡となって岩の隙間を流れていく。深い青をたたえた熊野灘はとてつもなく力強く、美しく、そして怖い。ずっと見ていられる。

熊野灘は船行の難所としても知られ、しばしば海難事故を起こしている。またプレート境界地震の震源域でもあり津波被害、伊勢湾台風をはじめとする台風被害も受けやすく、自然の力がダイレクトにぶつかる地域といえる。

その結果として力強く禍々しい岸壁地帯が出来上がったのは、なんともよくできている話だと思った。流動的な自然のエネルギーを形として残したら、こんな風になるのではないか、という姿を地で行っていると思う。

ちなみに、鬼ヶ城は星の観測スポットとしても有名らしい。昨晩の尋常ではない星空に納得がいった。

つづく


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