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伊久美川のいろんな表情

五月晴れとは文字通り、五月の晴れ模様を指す。しかし本来は旧歴の五月、つまり現代の6月、梅雨の晴れ間のことをいっていたそうだ。6月27日。晴天とはいえないが貴重な五月晴れ。島田市伊久美地区を川沿いにドライブした。

伊久美川といえば、夏は子どもの遊び場として大いに賑わう。深場を埋め立てて護岸を整備した下流域は安全快適だが、高学年くらいの子どもには少し物足りないように思える。自分が子どもの頃だったら、足のつかないポイントがあったり、流れが強くなっている箇所があったり、飛び込みができる岩場があった方がワクワクする。大人にとっても適度にヒヤヒヤするくらいの方が安全への配慮、監視にも力が入るというものだろう。

上流へとのぼる。川幅はまだ広く石も小さい。適度な距離感を保ちつつ、たくさんの釣り人。今年のアユ釣りはすでに解禁されていた。川の中に入りながら長い竿を降る釣り人の姿は、今も昔も夏の訪れを告げる風物詩だ。大きく異なるのは、近代的でスポーティなウェアをまとっている人が多いことだろう。

田んぼをつないでいる吊り橋はしっかりした作りだが、歩くとギシギシいって意外に揺れる。渡った先はこれ以上の立入を禁止する看板。引き返した側の田んぼにはたくさんのオタマジャクシがいた。四方山にして聞こえるのは川のせせらぎのみ。これで快晴なら夏を凝縮したような景色となったが、あいにくの曇天。風もなくじめっと暑い。

さらに奥へと車を走らせると、道も川幅も狭くなってくる。連日の雨でところどころ土砂崩れが起こっているのは日常茶飯事。道路が封鎖されていないだけでもラッキーといえる。

巨大な岩が水の流れに沿って削れて、天然のウォータースライダーのようになっている。この辺りは流れが非常に強いうえに、唐突に深くなっている箇所があったりする。水量は普段より多く、勢いが強い。土砂が混じり濁っているのも恐怖心を掻き立てる。

平時なら河原になっている部分も、今日は川になっている。周りの木々は押し流されたように、川の流れの向きに傾いている。流れているのか、淀んでいるのか、わからないような灰色がかった暗緑の水。ゆったりした流れでも濁って深さがわからないのは不気味だ。激しく怒り狂ったように流れる水は怖いが、膨大な量で底しれぬ静けさをたたえた水も怖い。

最初から泳げるとは思っていなかったので、川岸にキャンプチェアを出して本でも読むつもりでいた。しかし今日の川は、それすらはばかられるようなコンディションであった。泳ぐのはまた今度にする。

鼻崎の大スギ、高根白山神社の鳥居、藤枝方面へと抜ける

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