モウソウ建築 畑の小屋
こんにちは、ぱなおとぱなこです。
ゾウがまだ独り立ちをしていたころ、目の前の実施プロジェクトのほかに、私的な試みをしていました。今回はそんな、モウソウに取りつかれたプロジェクトを紹介します。
僕は、横浜市の田奈町というところに一時期住んでいました。
横浜と聞くと、海辺を思い浮かべると思いますが、ところがどっこい丘のまち。
田園都市線で中央林間に向かい、たまプラーザ、あざみ野、青葉台、長津田と都市の様相を過ぎていくと、それら都市の間に位置する田奈は、ぽっかりとそこだけに空白を残しているように広大な田園地帯を持ったまちです。
この美しい田園風景に魅せられ、毎日田園の川べりを散歩するのが日課となっていました。
この広大な田園風景とは裏腹に、高齢化により畑の後継者問題に悩まされています。横浜市指定の市民が使える農園も、定年退職した高齢者が主に使っています。
このままでは、この美しい風景がそう遠くない将来、失われてしまうのではいかと、心配しています。現に、スプロール(虫食い)状に資材置き場(地目が農地のため)となっています。
農業従事に関して全くの部外者だと分かっていても、夏の水田は空を映しだし、秋には実りを迎え、あたり一帯を黄金色に染める田園をなくしてしまうのは、何とももったいない気がしたのです。
田園と一口に言っても、畑や水田の周りには、様々な植物が群生し、虫や鳥が生息し、一種の生態系を成しています。
この広大な田園に一つだけ、建築を通じて小さいながらの抵抗を試みてみたいというのがこの記事の趣旨です。
市が運営する、市民が間借して、作物を育てる畑。その作業道具を置いておく小屋があります。簡素で、倉庫以外の機能がありません。
ここに、一休みできる休憩の機能をもった小屋ができないかとおもいました。
この地の作業小屋でよく使われる、木、鉄で骨組みをつくり、日影の空間で、農場のコミュニケーションスペースができないかと考えました。
小さいながらも、収納庫、ベンチ、トイレ、授乳室をつくります。幼児や若いお母さんも農業の合間に休憩することで、農作業に関することや、子育ての話なんかを肴に、母親同士で井戸端会議ができる空間。
そんな、農業に目を向ける人が若返ってくれたらな、という妄想で。
壁も、例えばコンクリートと土を混ぜたソイルセメントに鉄筋を流したものにして、極めて簡素に作れないかなと。
大きなテーブルで囲ってランチ会をしたり、広い土間で、地元農業のプロによる講習会を開いたり、収穫を祝うパーティができたり。
なんか、住んでいる若い人同士、農業の方と若い人が農業を通じて仲良くなれたら、いいな。
美しい田園風景の中に、人が楽しそうにしている風景を、ひとつぽつんと差し込みたかった。
これは、独り立ちを始めた時の私的なプロジェクトです。美しい田園を見るうちに心が洗われ、何か作りたくてうずうずしていました。
マンションがたくさん建設されて、若い人に代わっていく中で、この景色が継続していくにはどうしたらよいだろうか、と散歩で思索に耽っていました。
今も田園は美しいだろうか。
ぱなおとぱなこ
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