「わたし」を着替えてフィットする設計
先日の記事で、設計図はシーンや伝えたい人によって着せ替えていくという話をしました。
今回はその続きで。前回書いてるときに、設計図もシーンで表現かえるけど、伝えたい人によって話し方もまるで変わるなあと。
土地を購入するための企画案を考えるのも日常ですが、同時に実際つくる建築設計や監理も日常です。外部のお客様も最近引き受けていまして、ホテルの内外装改修や新築案件を引き渡してきました。嬉しいことですね!
と私はどんな仕事するのかをちょっとアピールしてみまして。
図面は、建物をこう建てたい!とお客さんの夢を載せて描いた成果品です。
それに加えてもうひとつあって。
設計や工事の途中で、図面を囲んで色々な人とのああだこうだと打合せする、過程のカタチが大事な図面の役割です。漫画でいうと、原稿が成果品、ネームが打合せ図面という具合です。
打合せ図面は、ふわっとしたものから仕上がりを細かく示したものまでいくつもカタチを変えていきます。
そこに図面があるから話す。のでなく、
その人に伝えるためのカタチとして図化があるわけでして。
さて、どうしていきますか、
と決めていくコミュニケーションが本体です。
ですので、スムーズに話が進むよう、話し方も内容も変えていきます。
仮の設定として、3階のリビングの窓辺とします。リビングでも、寝室でも、マンションの1Rでも、大体は同じかなと。
あ、前回の使い回しの図ですのでご容赦ください笑
フェーズによってだいたい4種類くらいの細かさでの図面に分けられると思ってて、さらに伝えたい人によって話し方も違うんですね。
おおまかでいうと、その案件に関わってく
①受注していただいたお客さん
②設計チームや外注先
③行政関係者など
④工務店さん
によって伝え方を変えます。打合せシーンをシミュレートしてみましょう。
①お客さんに話すときは、優しく丁寧に。
「3階の窓ですので、人が落ちないように腰高の窓にしています。外観からサッシの枠を見せずにスッキリ見せています。部屋が小さくならないよう、断熱材は薄くしてますが、十分な断熱性があります。内装は木材をお子様が舐めても大丈夫な自然塗料で仕上げ、あたたかいインテリアを目標にしています。(ここでインテリアの模型やパースなどイメージを見せながら話します)」
②構造エンジニアなど一緒に設計しているチームメンバーには熱っぽい語り口で。
「外観デザインの要望あり、腰高の窓にしました。サッシレスとしたいのでRC切り欠き加工にしてます。詳細図にて図示お願いしたいです。断熱材はウレタンt25と少し厚めで設定してます。」
③行政の人には淡々と正確に。
「窓はFLから1m、巾0.8、高さ1.3mとし、避難可能な寸法を確保しています。採光・換気・排煙の規定ともにこれらの窓で満たします。計算してますが、考え方合ってますでしょうか」
④工事を始め、現場の工務店さんには時には淡々と、ときに熱っぽく
「サッシにダキつくるので、4面シールできるよう型枠の端部制作、躯体フカシ内側10、ウレタン20、小断面のLGS、ラワン使って、できるだけ部屋の実有効確保でつくってもらいたいです」
◇
思い返すと、こんなポイントでそれぞれの人にこう話すよなあ、と。
・お客さん
→言葉での要望をかたちにして、目的や条件が叶っていそうか確認してもらうため。専門用語をできるだけ使わずに、わかりやすくを心がけ。
良いことばかりでなく、良くないことも同時に伝えます。提案した内容を叶えるためには工事費があがってしまったり、一部の細かな内容が相矛盾して叶えられなくなることなど。
それはまた要望を聞いて、何度もいいかたちに修正していきます。
・設計チーム
→情報の共有し、わかりやすく意図を伝え、実現に向けて考えてもらうため。思いを乗っける感じで少し情熱を乗せて。
全部を伝えきるのは彼らも忙しいし、間違って伝わることもあるので、明快に。大枠のコンセプトと、できるだけ彼らの持ち分に関係することを伝えます。
・行政関係者
→図面が法律にあっているか、適当なタイミングに事前に打合せします。行政にも色々ありまして、ここは認める、ここは認めないなどあります。カタチが変わってきそうな大事なことは出来るだけ初期段階にすり合わせをします。
実は、この例はすり合わせることなど実はほとんどなく、決まり切っていることなのですが、、例なので許してください笑
・工務店の人たち
→基本は設計図の通り工事を進めるのでして。
でも建物を建てる道は長いですから、しばしば設計図には載せきれない細かいことを決めていきます。ここでは、精緻に伝わるよう話します。一方、お客さんや我々の思いが強い部分は、この例のようにこの空間はサッシを見せたくない!て場合は必ず実現するように熱っぽく話します。
🐘 🐘 🐘
一つの建築に関わる人たちはたくさんいて、彼らの役割によって、フォーカスポイントや言葉がスムーズに伝わるよう、その人にフィットできたら。図面はそれに合わせて着せ替える。服を仕立てるように。
工務店にものすごく易しい言葉で話してしまい赤くなったり、お客さんに技術用語バンバン言ってしまい、「おいおい、分からないよ~笑」となってごめんなさいと即座に言い換えたり、たまにやらかすんですが。。
そんなこんなで、「その人に」わかりやすく、確実に伝えることが大事なのかなと。たとえば行政の人に夢を提案したとして、彼らはもっと実務レベルの設定がほしいわけで、困ってしまうでしょう。
建築はどこまでいっても人がかかわることですから、彼らに気持ちよくなってもらえるよう、、過程でもフィットした設計をしていきます。そうすることによって、一歩でも早く確実に目的地にたどり着ける気がするのです。
ぱなおとぱなこ