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生体信号とその測り方

今回は自分の勉強と知識の整理も兼ねて書いていきます。
(後ほど加筆修正する場合があります)
 


生体電位とは


 
生体電位は神経や筋肉から発生する電気信号です。
弊社製品のPowerLabはアンプと組み合わせることで生体電位を電極から拾い、測定することができます。
ADInstruments PowerLabハードウェア
PowerLabを使った生体電位測定は主に下記のものがあります:
 

生体電位まとめ

※上記パラメーターはいずれもヒトのケースです。
 
神経の場合、静止電位は-90 ~ -70mV、活動電位は30 mV程度ですが、体表から測ろうとすると半導体に相当する骨や皮膚を通ることになるので、結果的にµV単位のシグナルを拾って測ることになります。

生体電位の測り方

 
これらの生体信号を測ろうとすると、周辺環境――特に照明や電波などから発生するノイズの影響を受けます。
これらのノイズはだいたい数10 mV程度と結構大きく、生体から取った電位をそのまま受け取っても測定は基本的に無理です。
そこでグラウンドという電極を+-とは別の位置に貼り付けることで、平時の電位を取り、周辺環境の電位を差し引きます。
 
例えると人混みでがやがやうるさい中で音楽を聴くようなものです。
喧噪が大きいと聞き取りにくいので、それだけを外から拾って、音波から消しちゃう、というイメージです。(ノイズキャンセリングヘッドホンみたいな)

 


ちなみに生理学実習でよく行われる神経線維刺激(カエルやイカ由来の脊髄・座骨神経などを単離して電気刺激を加える)では「ノイズがあってうまくシグナルがとれない」というご相談をよく受けます。
そういった場合はReference電極を付ける代わりにグラウンドへ誘導するといった処置で対処します。
これも照明などの電磁波で影響を受けているからです。
 

PowerLabで生体電位を測定する

PowerLab自体はアナログ信号を増幅させるアンプを内蔵していますが、それだけでは生体電位をうまく測ることができません。(ただし、バイオアンプ(後述)を有しているTシリーズを除く)
というのも、例えば26シリーズだと:
 
入力レンジは±20 mV~±10 V
分解能は 625 nV~313 µV
 
とある一方、生体信号は一番大きな心電図でも2 mV程度、繊細な脳波だと数µVのレベルになります。
これだと分解能に対してシグナルが小さすぎます。
ここで登場するのがバイオアンプです。
ADInstruments PowerLab フロントエンド
バイオアンプにはシグナルを増幅させる機能のほか、ローパス・ハイパス・ノッチフィルターを備えており、電源由来のノイズや必要ないシグナルを除外することができます。
 
こちらのシングルバイオアンプの回路を見るとバイオアンプでシグナルは最大で10×100×5×1.66=8300倍になります。(ほかのバイオアンプだと16600倍)
これでPowerLabでも測れるようになります。


シングルバイオアンプの回路図

各生体電位について


 最後に、各生体電位についてさらっと説明します。
 

 心電図

健康診断のとき、胸に電極いくつか、手首・足首にクランプを取り付けられるそれです。
日常生活において最も身近なものではないでしょうか?
生体電位としては特に大きくて測りやすいものです。
電極の位置によって取れる波形が異なり、手首・足首から取れる波形はI~III誘導と3種類の波形が取れます。


https://sindenzukenkyuujou.com/sindenzutoha/

 特にII誘導は振幅が大きくて特徴的で、心電図の模式図やアイコンでよく見られます。
「いやあ、分かりやすい波形があるならそれだけでいいじゃない」と自分を含めて素人は思いました。
ですが、心電図は左右の心房・心室・神経――それぞれの活動の複合体ですので、どこに問題があるかを複数の視点で確かめる必要があります。
 

一視点からは普通に見えても――
視点を変えると異常が見られたり、というわけですね。

脳波

ヒトの場合、頭に電極付きのキャップを被るなどして脳由来の生体電位を測定します。
基本的には電極近傍、もしくは遠隔部の神経細胞集団の電気活動の総和が見られます。
例えば睡眠時・覚醒時それぞれの脳波を記録して、その際を評価したりします。
脳波は周波数によって:
0.5~4 Hz (δ)
4~7 Hz (θ)
7~13 Hz (α)
13~30 Hz (β)
31~50 Hz程度 (γ)
に分けられ、それぞれが活動状況によって強度が異なります。

筋電図

筋細胞由来の電位差を測定します。
よくあるケースだと運動生理学実習で腕や脚に電極を張り付け、収縮運動中の電位を記録することがあります。
膝蓋腱反射時・電気刺激を与えたときの反応速度を測り、随意・不随意運動の評価をすることもあります。

胃電図

胃が蠕動運動をする際に発する電位を腹部から記録します。
消化器運動の確認や自律神経の評価等で測定します。
 

眼電図

眼機能や眼球運動の機能を評価するために測定します。
視神経側が-、角膜側が+に帯電している性質を活かし、眼の周辺に電極を貼って測定します。

参考文献

生体電位 - Wikipedia
表面筋電位(EMG)とは | 技術紹介 | (株)ALTs
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmbe/57/4-5/57_149/_pdf/-char/ja
眼電図検査|眼科の検査 | 看護roo![カンゴルー]
A New EEG Acquisition Protocol for Biometric Identification Using Eye Blinking Signals
 
 
 

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