これから飛行機に乗る度に思い出す人
先日、1年半ぶりに飛行機に乗った。
ひとりで乗るのは4年ぶり、この目的地も久しぶり。
一泊二日のひとり旅。
そこで、ひとつの出会いがあった。
これから飛行機に乗る度に、この日のこと、その人ことを思い出すと思う。
思い出深い旅になったから、noteに残すことにした。
*初日
空港近くの有料駐車場に車を停めてスマホを見る。出発時刻まで2時間近くあるから、余裕だなぁと思っていたら、使用する機体の手配がつかないため欠航…なるメールが届いていた。青ざめる。
研修前日の前乗り、明朝の便でもギリ大丈夫だけど、遅延したら間に合わない。通勤ラッシュの混雑に対応できる気もしない。
余裕がないとしんどいからお昼過ぎ、おやつの時間に飛び立つ便を予約していた。
初めてのことだから、どう動けばいいかわからない。台風や大雪予報があれば事前に調べておくけれど、朝から快晴だったこの日においては欠航なんて想定していない。
車内で5分ほどスマホとにらめっこした後、空港カウンターまで行けば、スタッフさんが対応してくれるだろうと思い、とりあえず駐車場の受付を済ませてシャトルバスに乗り込む。
お客さんは、スーツ姿の男性がひとり。
これが、一泊二日のひとり旅を彩ってくれた彼との、不思議なご縁のはじまりだった。
車内は運転手さん、彼、私の3人。
運転手さんから予定を聞かれたんだったかな?
「私の行きの便、欠航になったらしくて、またすぐ戻ってくるかもしれません…」といったことを話した。
行き先も告げたら、彼の目的地も同じだった。あと小一時間ほどで出発する、私の乗る便より早い時間に飛ぶ他社の便。
航空会社から届いたメールを彼に見せたら、彼には欠航の連絡は来ていないとのこと。
それなら天気のせいではなさそうだから、後続便への振替ができるかも…と期待を抱いてシャトルバスを降りた。
彼とは予約している航空会社が違うから、受付カウンターももちろん違う。
情報共有してくれたお礼を告げて別れた。
受付カウンターに行くと、欠航理由の説明はなかったけど、直近で飛ぶ他社の便へ振替ができると言われたので、振り替えてもらった。
それは、彼が乗ると言っていた便だった。なんという偶然。
搭乗口の近くはお客さんが多くて、座るところが空いてなかったから、売店を見て、搭乗案内が始まるぐらいの時間に近くまで移動した。壁に持たれて音楽を聴き、時間をつぶす。
少し時間を空けて彼がやってきた。
彼が乗る便に振り替えてもらえたと伝えると、よかったねーと言い、搭乗までの話し相手になってくれた。
風が強かったから結構揺れたけど、無事到着。手荷物受取場への道中で、彼とまた一緒になったから、話しながら向かった。
後頭部についた寝癖がかわいかった。
私の荷物は出てくるのが早く、彼の荷物はまだまだ流れてこなかったから「気をつけてね!」と声をかけられ、そこでお別れした。
前乗りしたものの、これと言って予定は立てていなかった。観光するような地域でもないから、とりあえずホテルにチェックインしようと思い、地下鉄乗り場へ向かう。
こっちで良かったよね…と思いながら、はしっこでSuicaの準備をしていると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
またまた彼だった。
さっきお別れしたよね??!
地下鉄だろうなぁとは思ったけど、階段やエスカレーターはいくつかあるし、人も多いから、また会うとは思わなかった。
降りる駅も同じだったから、並んで座り目的の駅へ向かう。この人も右側に来るんだなって、別の人を思い出す。
さすがにホテルは別だったけど、同じ方面だったから、駅に着いてからも、途中まで一緒に歩いた。
私が泊まるのは、何度か泊まったことがあるホテルで、彼のホテルより手前にあるようだった。
駅から3分。余裕ぶってスマホを見ない私、たどり着かない。
目印の銀行とコンビニ、出てこない(銀行名の記憶違い&閉店してた)。
車社会である地元ではほとんど歩かないから、迷うぐらいでいい運動になると話す私に、ほんとよ!と言って付き合ってくれる彼。
たぶんこっちだと思う〜と言いながら歩く私(地方民。都会は細道が多くてアプリを見てもよくわからない、まず自分の立っている向きがわからないから地図は見ない、それでもいつもたどり着く)、スマホを見て案内してくれる彼(営業職やから地図アプリは慣れっこらしい、すごい)。
想定の何倍もの時間を歩いてくれて「ここまで来たら最後まで一緒に行っちゃる」と言い、また駅まで戻ってくれた。
高架下、すごく暗かったからひとりで歩いたら怖かっただろうな。自転車からも避けてもらったし。
長々と歩く中でスタバの話になった。地元と違って店舗がたくさんあるから、至るところで目に入る。
結構な距離を道案内してくれたお礼に、ごちそうさせてほしいと提案すると、快く了承してくれた。
その話をしたあとで、スタバが出てきたけど素通りしたから、あれれ?と思いながら駅まで歩いた。
本当は初対面の相手と寄りたくなかったのかも…と思って、その場では言えなかった。
駅についてから、さっきスタバあったね〜って話をしたら、そこまで戻ることになった。
早く言ってよ〜!と言ってくれて安心した。全然気づかなかったらしい。だよね、地図見てくれてたんだもんね。
駅の側には、私が参加する研修の建物があったから「下見できてよかったね〜!これで明日は大丈夫やね」と言ってくれた。
あんなに歩いて暑かっただろうに、この発言。
優しさが染みる。
スタバでは仕事の話や、空港で起こった失敗談、ブラックコーヒーが飲めるようになった理由などなど、色々と聞かせてくれた。
似たような業界で働いたことがあって、バイト先も同業他社で、歳も1つ違い。共通点が意外と多くてびっくりした。
営業職の賜物かな、すごく話がうまいし、聞き上手。話している間、ずっと笑ってたと思う。
偶然がいくつも重なって、長い時間を一緒に過ごした。
彼も、流石にここまでの偶然が重ならないと話かけないと言っていた。
駐車場でシャトルバスに乗り込むとき「お願いします」と挨拶をした。思ったよりも大きな声が出て、車内に響いたから、他にもお客さんいるのに恥ずかしかった。
彼にはこれが印象に残ったらしくて、思わず「お願いします」ともう一回言ったらしい。
この話を聞いたあと、挨拶が持つ力を改めて実感した。
夜に飲み会を控えた彼とは、今度こそお別れ。おそらく時間が迫っていて、タクシーでホテルまで向かうと言った彼を見送る。
スマホの充電が切れたらしく、駅のロータリーでタクシーを拾う。
地図をいっぱい見てくれたからだと思うから、お礼と謝罪を伝えると、iPadと連携してるから??電池をつかう???(タブレット持ってないからよくわからんかった)から気にせんで!と言った彼の優しさには感謝しかない。
帰りの便も他社同士だけど、出発時間は同じ。
出発空港でも到着空港でも会うだろうし、シャトルバスも重なりそう。
だからだと思うけど、彼が別れ際にかけてくれた言葉は「また明日ね〜!」だった。
最後まで「こっちの道だからね」と気にかけてくれた心優しい彼が、楽しい時間を過ごせていますように。
**2日目
研修が終わった夕方、JRの駅は人で溢れていた。
駅構内のカフェは人がいっぱいだったから、地下鉄に乗って早々と空港へ向かった。
早めに着いておけば、昨日みたいなことがあっても対応できるし。
手荷物も無事に預け終わり、時間を持て余したから、空港内のスタバへ向かう。
席が空いててよかった。
小一時間過ごしてからスタバを出る。
書店やお土産売り場をブラブラし、それでもすることがなくなったから、早々と保安検査場へ。
彼には会えなかった。
定刻より10分遅れの出発だったけど、予定通りの時間に到着。
案内板を見ると、彼の便は10分前には着いていて、手荷物受取場には誰もいなかった。
待ち合うような仲ではないから、いたら逆にびっくりするけど。
だから、ひとりでシャトルバスの待機場に向かった。「また明日」できなかったな、昨日がすごかったんだよなぁと思いながら。
待機場が見えてきたから、あのワゴンかな?と思いながら歩いていくと、道の先に人がいた。
暗くて見づらかったけど、彼だった。手を振りながら「おつかれー!」と声をかけてくれた。
なんでいるの?早く着いたんじゃないの??!と尋ねると、到着は早かったけど、忘れ物があったり、手荷物が流れてくるまでに時間がかかったことを教えてくれた。
あと、シャトルバスの待機場に着いたけど、バスがいないから、呼び出し用の電話番号が書かれた予約表を探しているところだったらしい。
途中から「また明日」は叶わないと思ってたから、再会できてうれしかった。
シャトルバスに乗り込むとき、彼の挨拶は惚れ惚れするぐらい素敵だった。
この人の印象に残る挨拶なんて、どれだけ大きな声だったんだろう…
駐車場に着いて、支払いを済ませる。
さよならの挨拶をして、今度こそ本当に最後のお別れをした。
…と思いきや、振り返って連絡先を教えにきてくれた。
このご縁はまだまだ続くみたいだ。
そんなこんなで、ひとりのようでひとりじゃなかった一泊二日のひとり旅、これにて終了。
貴方がいてくれたから、2日間とても楽しかった。
ありがとう!
*後日談
あれからそこそこの時間が過ぎ、改めて地元で待ち合わせた。
偶然の積み重ねで親しくなったから、待ち合わせをしてから会うのは違和感がすごくて、思わず笑いが出る。
彼に伝えると、ほんとよ〜!と言って笑っていた。
彼はいつも笑顔で接してくれる。
ニカッ!って感じで笑ってる。
仕事の話をする姿は格好良く、思わず「〇〇くん、かっこいいね」と言葉に出る。
「こんな感じやけど、俺もちゃんと仕事してるんだよー!」と、また笑ってた。
ほんとはもっと訛ってる。お互いに。笑
出張も入ったから飛行機にも乗った。全く同じ目的地で。
駐車場、空港、スタバ。
あのときはこうだったなぁ、と思い出しては懐かしくなった。
いつかまた、シャトルバスで会いたいな。
そしたら笑いがとまらなくなるんだろうな。
そんな日が来ることを、心待ちにしている。
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