中学校たのしかった
息子がそういったときは心底驚いた。
『ほんとに?あなたの学校生活のどこに楽しかったことがあった? 』
そんな動揺を隠して、さもないふりで何が楽しかったのか尋ねると
「だって優しい人、沢山いたから。あとはまあ、言いづらい」
とにやりと笑う。
そうかそうか、楽しかったのか……。
元もと、このnoteは、発達症の息子が小中学校でした経験を、我が家と同じような誰かの参考にしてもらおうと始めようとしたものだった。実際、わたしの後悔たっぷり愚痴めいた下書きを沢山用意していた。さて、これを整えて、公開して…と考えていた矢先の、息子の学校楽しかった発言である。なんだか、毒気が抜かれてしまった。
「ガイシャ」「マクラーレン」「スペ」「ヤバいやつ」 そう呼ばれて一挙手一投足見張られ、揶揄され責められる日々は、確かに辛かったはずだ。家に帰って唸るように声を殺して泣く姿を何度も見てきた。
それでも尚、中学生活を「楽しかった」と総括してくれた。
彼は、大人がいくら言ってもいじめをやめない連中に怒り、うらめしく思うわたしと違って、「いじめに加わわらない」「決してバカにしない」人たちの方を見ていた。
小中9年間、仲の良い友達は1人もできなかった。けれど、「ぼくが声をかけても嫌がらずにいてくれる人がいた、困ったら声をかけてくれる人もいた」それが嬉しかったのだそうだ。
我が子ながら、優しい。強い。
そんな息子に、これまでどれだけ救われてきたか。感謝してもしきれないことがたくさんある。 だからこそ、もっと、楽しくしてあげられたんじゃないかな…という考えが頭をもたげるけれど。
とにかく卒業おめでとう。よくがんばったね。
彼にはそういうにとどめることにした。
3月某日。息子の卒業に際して