農協をはじめとする既得権益と中間団体のことを考える②

農協をことあるごとに、「悪い既得権益だ!」と批判する人たちは、農協を株式会社化したいと考えている。これは農協の組合員が持つ既得権益を、株式を多く持てる金持ちの株主に渡せということになる。

ちなみに農協の組合員は正組合員と准組合員に分かれており、前者は農家と農業法人、後者は非農業者である。准組合員の場合は組合の事業や設備を利用できても、農協における総会の議決権がなく、役員の選挙とかには参加できない。農協が株式会社になったら、准組合員の制度もなくなるから、非農業者の組合員の既得権益も消える。

未得権益層からは、「准組合員(非農業者)が存在する農協は真っ当な相互扶助といえないから、彼らは悪い既得権益だ!農協は組合員を農家だけにしろ!」という批判があるわけだが、そんなことをやったら、農協も農家も軒並みに経営破綻してしまう。
「それで農家や農協が潰れるのは当然だ!甘えるな!」といいたいのかも知れないが、問題はそんな事態まで招いて、農家と農協の既得権益を剥奪してそれが株式を多く持てる金持ちの物になった状態が、本当に十分な「公益」になり得るのかということだ。

答えはNOだろう。そもそも農協の既得権益を欲しがっている未得権益層側から、「農協の持っている権益を我々に渡してください。我々の既得権益にした方が、国家や国民に対しての公平な利益を齎します」と述べた試しはない。彼らはただ農協をメディアを使って口汚く罵るだけだ。自分たちが新しく既得権益を手にする形になることを、完全に棚に上げてな。
「日本は経済自由主義の社会だから、そのイデオロギーに従うべきだ!だから農協の在り方は間違っている」という意見もあるだろうけど、ただの独善にすぎない。というか無理がある。ここでいうところの経済自由主義は、新自由主義や市場原理主義とほぼ同義語なので、岸田政権は一応それらを否定している。
「実際は岸田さんは口ばかりだ」という批判もあるが。

株式会社が農業や農協が行う事業をするのであれば、法律を改正して、参入する株式会社がその農業地域に根を下ろして、簡単に撤退できない仕組みを作るしかない。もちろんその株式会社に対する政府の強力な保護と支援も必要だ。

岸田政権が本気で公益資本主義を実施するのなら、株主の利己心を上手く制御していく必要があるが、それが農業や農村に関係するものなら尚更である。