
30年以上生きてきてバスに乗れなかった話
私の移動手段は車か電車である。
その日はたまたまバスで移動しなければならない理由があり10年ぶりぐらいに市バスに乗った。
まずは乗降場所だがその駅は10ヶ所もある
分からなすぎてそれを理由に予定自体をキャンセルしようかと思ったぐらいであった。
何を隠そう私の父は、友人と呑みに行った帰りにタクシーの呼び方がわからず
調べるめんどくささが勝って片道10キロほど歩いて帰ってきた猛者であり
その血が私には引き継がれている。
諦めかけたその時
諦めたら試合終了ですよ。
頭の中の安西先生が語りかける
そうだ私は一家の大黒柱。一児の父でありこんなところで諦める姿を息子はどう思うだろか、、、(大袈裟)
最近は携帯という便利な道具があるので本気を出せばものの数分で乗降場所は特定できた。
案外楽勝だな、、、
そんな言葉を発する余裕もこの時にはあった。
唯一の不安要素はバスの乗り方
一応検索したが地域によって違うからか良き検索結果を得ることはできなかった。
とりあえずこの時点で前には3人の乗客がいたので多少わからなくても前の乗り方を見ていればなんとなくわかるであろう
それぐらいの温度感で解決した気になり
YouTubeを見て時間を潰していた。
そうこうしている間にバスが到着
気づけば私の後ろにも10人ほど列ができ、心なしか緊張感が漂う
ドアが開き前の3人が乗り込む
さぁお手なみ拝見といこうか、、、
おもむろにカードをだして入口のパネルに『ピッ』
なん、だと!
ちなみに私はカードを持っていない
後ろを振り返ればみんなカードを持っている
それが何カードかもわからなければ
先払いか後払いかもわからない。
とりあえず目に入る情報から何かを得ようと試みると『整理券』と書かれたオレンジのボックスがあった。
なるほどな!
カードがない人はボタンを押せばカードが出てくるシステムなんだな、楽勝じゃないか!
勢いよくボタンを押すが硬くなにも起こらない。
前の3人がバスに入り、自分の番がきてこの間約10秒ほど、確実に時間がかかりすぎている。
ダメだ。バスに乗れない。
YouTubeなんか見て余裕ぶっていたあの頃が懐かしい。
後ろのおじさんからはイライラしている雰囲気が伝わってくる
おじさんの立場からすれば
目の前の青年がバスに乗れない意味がわからないのであろう。
緊張と困惑で一時的に噴き出た汗はもうすでに乾いてしまった。
逃げ出したい欲求にかられるが、予定もあるし後ろには人の列がある。
意を決しておじさんに尋ねた。
『バスに乗ったことないのですがこのまま乗っても大丈夫なんでしょうか?』
思い返せば意味のわからない質問であるがその時の私は必死である。
おじさんからすればこのメガネ男はタイムリープしたのかと思うような問いかけだったことは間違いない。
命からがら吐き出した質問をおじさんは華麗にスルーして奥の座席に座ってしまった。
前にいた先ほどの三人衆にも聞こうかと思ったがどうも中国語で談笑している。私は中国語を話せない。
日本てこんなに不親切な国だったっけ?
それとも私の行動が不審すぎるのか?
策は尽き、絶望の淵はすでに飛び越え逆に何も感じなくなったのでそのまま乗ることにした。
仮にダメなら運転手が何か言ってくれるだろう。
目には目を歯には歯をだ。(何が)
運転手が指摘しやすいように一番前の席に座り、熱い視線を送ったが特に何も言われずバスは出発したので喉元まで用意していた『すいませんでした』を飲み込んだ。
しばらくすると目的地の名前が出てきたのでそのタイミングで電光掲示板に表示されている金額を払いバスを出る
乗り口でのすったもんだが嘘であったかのように降り口はスムーズであっけなく終わってしまった。
『降ります』ボタンは絶対に押すと決めていたので押せたのが嬉しい。
いろいろあったが見知らぬ土地で私はバスに乗れたのであった。
全然スムーズではなかったが要領がわかったので次からは乗れそうだ。
人生とは何事もチャレンジしてみることが大事で意外となんとかなってしまうものなんだなと自信がついたので良い経験になった。
ちなみに整理券は途中の駅から乗る際にしか出ず、私が乗ったのは始発であったために整理券が出なかったみたいだ。
もし自分の前の人があたふたしてたら教えてあげようと思った。
みなさんも参考までに(みんな知ってるわ!)