『東京最悪最低最高』読んだ

X(Twitter)で流れてきたから読んでみた。
感想ツイがたくさん流れてきたからどんな酷い面が出てくるのかとウキウキして呼んだら拍子抜けだった。
私にはあぁこういう子いるよね〜って感じの主人公が上手く折り合いつけて生きてる話だなとしか思えなかった。

前にも日記に書いたが、福岡というところは主人公の両親のような人間たちが意外と多い。多分同郷の人間ならわかると思う。あの手の母親は近所の人の目を気にすると同時に近所の人間のことを死ぬほど気にしている。
全くもってなぜかは理解できないが、同じマンションに住んでいる人に○○ちゃんは良い高校に行ったのにねとか、大学がどうとか、料理を始めとした家事が出来るかとか見た目のこととかとにかく気にする。
そのコミュニティーの中で良いとされているのは本人にとって良い学校かどうかではなくの偏差値の良い公立校に行くこと、地元で就職して結婚し世帯を持つことであってそれ以外の道は“ちゃんとしてない”のです。
留学してるなんてのは最たるものなので今は母が色々言われてるみたいです。
両親が周りの目を気にしない人だった私は運が良かったのです。女の子だからと弟を優先するように言われ四年制大学に行きたかったのに奨学金を借りて短大に行った幼馴染もいます。
ちゃんとした仕事でなければとか本を読むことはサボっているとかもきっとどこかではあるんだろうな、みんな違ってみんな地獄なので。
男に生まれていたらどれだけ楽かと思うこともあるけども、男の人は男なら“こうあらねば”が強いのでそれもまた大変なのです。

そんな中で適応していくか、離れていくかのふたつに別れて主人公は離れて妹は適応した。でも主人公が歪んだ主観を持っていたように、妹もきっとどこか歪んでいるので。
あの家族の中で育ったらちょっと都会なところからしたら歪んだ人間になるだろうよと。ヒステリックな母親大まかなって描かれているのではなく、旦那が浮気しても子供育てるために別れられなかった。特に母親くらいの世代だと結婚した時点で仕事を辞めるように会社から言われる時代だった。お茶くみから始まってやりたいこともあったのに信じて結婚した人が家にお金も入れず浮気して、自分が仕事するにも空白期間が長すぎてパートくらいしか出来ないから別れるのは現実的じゃない。
そう考えると可哀想だと思うけど、子供からしたら知ったこっちゃない。昔は今より地元から出れない女の人が多かったし、結婚しないって生き方の市民権がなかった。
本編で言われていたけど彼女もまた被害者であり、子供たちにバトンを繋げた加害者だ。全てがとは言わないが、割とリアルで気分が悪くなった。凄い事だ。

それから他人の感想も面白かった。
東京に限らず田舎の感性から遠い家庭で育った人達はネットで見た事を詰め合わせたような話だとか、どこでも閉塞感があるのは一緒だとか家庭の話を一般化するなとかそれはもう私には考えつかなかった事たちで。
それは凄く幸せなことなので、願わくばこの先も幸せでいて欲しい。自分の個性を笑ってきたり、性別という分別でしかひとを判断しない世界にいて欲しい。

色々なポストを読むのは楽しかった。
その中でも移民文学と言っていた方が強く心に残っている。
あれだけ内心とはいえ散々貶して置いても一応結婚の挨拶には連れていくし、悪態をつきながら家事をして、母譲りの女の面を使っている。

きっと芯の部分は変えられない。もし私がこれから先どれだけ長くカナダで暮らしていても、私は日本人でしかないように彼女もまた福岡の人間なのだ。
それでも同化できるように頑張ってる。

東京に限らず、生まれ育った所から離れて暮らす人はみんなそうなのかもしれない。帰りたい場所なのか耳にもしたくない場所なのかは人によるけど。


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