ノベライズ(文学とは何か⑯)
ノベライズになると、文学は下級のものになってしまう。
アニメや映画や漫画があって、それをノベル(小説)にする。
映像作品との違いは、見たまんまでは現れない描写を盛り込むことである。
映像の中では喋らない人物も、何かしら心の内では考えているものである。
内面のことは、喋りでもしない限り、わからない。
モノローグとして、脳内のことを語ったりするシーンもあるが、長さには限界がある。端的にしか語れない。
その点、ノベライズでは、いくらでも思考がだだ漏れてかまわない。
過去と未来。
映像は「今」しか映せない。
しかし、ノベライズになると、過去も未来も描くことができる。
彼/彼女の生い立ち。
そこにあった小道具がどこからきて、どこへゆくのか。
この場所の成り立ちから描写することもできる。
詳細描写も可能になる。
映像では、例えば5人の登場人物が集まって話していたとして、そのシーンに盛り込める情報量は限られてくる。
ノベライズなら、5人の服装から内面、関係性、過去と未来、生い立ち、なんなら下着やバッグの中身まで描写することができる。
内臓の病気、持っているスマホの中身、皮膚の肌触り、ニオイ、味。温度。空気感。
こう書いてみると、文章表現が持っているアドバンテージは結構あるものだった。