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文学の毒(文学を人生のBGMに②)

9/26に、「社会人になる時に、心を硬くして武装するのはどういうことだろうか」と書いた

都合の悪い自意識や反抗心、感受性豊かな心、繊細な心、そういったものは、社会の求めに応じてバリバリ働く際には、余計なものとなろう。
従順な奉仕の魂だけでいい。
心を硬くせよ。
執事のそれだ。

クリストファー・ノーラン監督版の『バットマン』が好きだ。
主人公の金持ちブルース・ウェインの執事、アルフレッドも大好き。
彼は小さい頃から、両親を亡くしたブルースのそばで仕えてきた。
いろいろ小言を言いながらも、主人の言うことには基本的に従う。
でも、どこかで一本芯を持っていて、譲れないところは譲らない、一個の人間として描かれている。

ノーランの『バットマン』シリーズには、『ダークナイト』という名作がある。
ヒース・ロジャーがジョーカーを演じて、絶賛された。
ヒースは、ジョーカーを演じた後、28歳の若さで亡くなった。
無理な役作りがあったのかもしれない。
ジョーカーという役を演じ、その狂気に毒されてしまったのかもしれない。

ともかく、芸術作品は時に、毒を含むものだ。
それは、身を滅ぼすようなものでもある。

そんな毒を抱えて、毎日出勤♪、は難しい。
疲れた時に、さらに疲れるような体験は御免こうむりたい。
かくして、私たちは、心を硬くして、文学の毒を遠ざけていく。

ちなみに「武装」とは、ハックスなどのお手軽スキルを装備すること、自己啓発本で理論武装すること、などが当てはまる。
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』の第7章「行動と経済の時代への転換点」では、教養から行動へ、について書かれている。
またいつかあらためて書きたい。

***

カズオ・イシグロ氏の『日の名残』も、スティーブンスという執事を扱った小説だそうだ。
カズオ・イシグロ氏の著作は、読もうと思って読めていない。
そういう作家はたくさんいる。
三島由紀夫、大江健三郎、カズオ・イシグロ、ガルシア・マルケス。
これらの作家たちの世界は、入りにくく、いつも入り口で引き返してばかりだった。
毒を引き受けようと思う今なら、読めるかも知れない。

※タイトル画像はバットマンの執事アルフレッド役俳優が『ダークナイト』でジョーカーが怖くてセリフを忘れたシーンは? - FRONTROWより。

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