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残念!東電!!(東電=東京電力)

 【明細(めいさい)】
 goo辞書のによれば、「細かい点まではっきりとしてくわしいこと。また、そのさま。」とある。また、【明細書】は、「数量・金額などを項目別に細かく書き出したもの。めいさいがき。」と記されており、概ね世間の認識通りであろう。
 唐突な書き出しだが、東京電力の「残念な話」である。
 東京電力に関しては、原子力発電所事故をはじめ、「残念」な話題に事欠かない。しかしここで書きたいのは、「ダメな企業は小さなこともできない」ということである。「小さなこと」は「基本的なこと」に置き換えても良い。きちんとした組織や大きな仕事を成し遂げる組織ほど、基本的なことができているのだと思う。裏返せば、基本的なこともできていないようでは組織の底が知れている、ということにもなる。

 前置きが長くなった。我が家は福島市東部の「大波地区」にあり、両親が農業、私が勤め人の兼業農家であった。米作と夏季のキュウリ、山林を利用した原木椎茸栽培、少額だが山の恵み(山菜・タケノコなど)による売買もある、いわゆる山村の農家であった。その豊かな農地・山林は原発事故により「汚染地帯」となった。その年の秋、「大波地区」は日本で初めて、「米から規定を超える放射線が検出された」地区として有名になってしまった。翌年は米作の作付けが禁止され、原木椎茸や山菜類は出荷が制限(禁止)され、この状態は今も続いている。

平成21年の出荷記録(明細)

 一昨年、定年退職してから、農業関係の整理や、公共料金の名義を父親から私に変更しているうちに、ふと気付いた。「原発事故前まで出荷していた、稲わら、乾燥椎茸、タケノコの補償はどうなったのだ?」と。
 父親に聞いても要領を得ない。農協(JA)や森林組合が関係しているものは組織が対応してくれているらしいが、個人売買していたものについては、何も行動していなかったようだ。多くは語りたくないらしい。原発事故から10年以上が経っていることもあり、しばらく考えたのだが、結論として、「正当な補償は請求する。(黙っているのはおかしい。)」という考えに至った。ただ、この「正当な」という意味も立場によって異なるのは当然なので、行動を起こすにあたっては、「客観的に」「当事者以外がみても明らかに」という考え方を大切にしようと思った。

稲藁(わら)業者の手書きの明細

 この交渉を始めたのは、今年の2月。電話での問い合わせの後、福島での相談窓口で対面での相談・書類作成。電話でも対面でも繰り返される「ご迷惑をおかけしております」という決まり文句に辟易としながらも、窓口の担当者は親身になって相談に応じてくれた。「何故10年以上経ってからの請求なのか」「震災当時耕作してた証明はできるのか」「確定申告の書類は残っているか」など、東電側からの疑義に応え、青果市場の記録や農業委員からの証明などをそろえ、請求の書類を提出(投函)したのが5月の連休前。しばらく捨て置かれたあと、1~2ヶ月ごとに担当者からの連絡、追加書類の送付、が繰り返された。1回ごとの反応が遅い!また、「稲わら」と「タケノコ・乾燥椎茸」では担当部署が違うのだそうで、対応も2度手間。これでは、「対応を遅らせて、請求をあきらめさせようとしている」と思われても仕方がないではないか!
 それでも、何とか東電側が納得できるような書類(客観的な書類)をそろえ、11月下旬に「稲わら」の補償額が確定。そして届いたのが写真の「明細書」である。

 冒頭の引用を確認するまでもなく、これを「明細書」と呼べるのか?企業でも官公庁でも「これが明細書です」と通用するところがあるなら、教えていただきたい。宛先もなければ、発行元の記載も無い。世間一般とのズレは何だ?!これが東電である。
 黙っていられないので、東電の窓口に電話をする。相手は何度も話をしてきている人なので、怒っている、というより「残念だ」という趣旨で話をする。こういうものがまかり通る企業体質だから、色々起きるのではないか、等々話をする。担当者は「システムがこうなっているので」と繰り返す。まぁ、そう言うしかないわな。でも、誰か変えようとしなかったのか?これで通用すると、皆思っていいのか?だからダメなんじゃないのか?こういう言い方はしなかったが、脱力感と共に、そんなことを考えていた。
 そして12月下旬、もう一通の明細書が届く。

項目は加わったが、、、

 担当者は「ご指摘があったので何の賠償かわかるように「(しいたけ、たけのこ)」と明記しました」と言う。私に言われたから変わったの?簡単にシステム変えられんじゃん。でも、これでもまだ「明細書」にはなってないけどね!と、毒づきたくなる気持ちもあるが、これ以上言っても仕方ない。末端の事務方にこれ以上、「めんどくさい相手」と思われるのも癪なので、止めておく。本当に悪い奴らは、別にいるのだ。
 折しも、石破内閣は脱原発から大きくエネルギー政策を転換し、再び原子力発電が日の目を見ることになりそうだ。問い合わせをはじめてから10ヶ月を振り返りながら、「ご迷惑をおかけしております」というマニュアル通りの言葉が、空しく耳に残る年末である。

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