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イスパニア日記⑥ アルコス・デ・ラ・フロンテーラ
「世界ふれあい街歩き」で感動した田舎の白い町
そして、忘れがたき教訓の町
今回最も楽しみにして行った場所。それがアンダルシア州の小さな町、アルコス・デ・ラ・フロンテーラだ。
アルコスとは、橋のこと。フロンテーラとは国境。つまりこの辺りがイスラーム勢力とキリスト教勢力との間の境界だったことに由来するという。
斜面に白い家々が並び、山々や崖の眺めが美しい町。
家が白い理由は、ギリシャなどと同じ。景観も当然ながら、一番の理由は猛暑と厳しい日差しから家を守るためらしい。
この町は、かつてはイスラーム王朝の支配下にあった地域だが、今はどこにでもあるスペインの田舎町だ。
美しい景観を見に、ヨーロッパから多くの人が訪れる。
私はNHKのテレビ番組「世界ふれあい街歩き」でこの町を知った。この番組がきっかけでスペインに興味を持った面もあるので、ある意味私の人生を動かした番組、町でもある。
この町の回は俳優の草刈正雄さんがナレーションで、とても良い声だった。
(草刈さんかっこいいですよね。歳を取ったらああいうイケてるオジさまになりたいものです。)
この町は45分の番組でも一通り全体を回れてしまうくらいのサイズ。かなりコンパクトだ。
この町について、歴史で解説できるほどの知識が正直に言うとあまりないので、今回は写真を中心にして、町の風景とか雰囲気、グルメなどを紹介したいと思う。いくつかハプニング(教訓)もあった。
行き方
まずは行き方。電車がないので、セビリアから高速バスで行く。セビリアのバスターミナルから2時間から2時間半。
景色が綺麗。ちょうど向日葵の時期で、アンダルシア名物の向日葵を眺めることができた。それにしてもすごい広さの向日葵畑。奥にはオリーブかオレンジの果樹園があって、いかにもスペインといった雰囲気。
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ホテル、雰囲気はとても良かった
まずは今回泊まったホテルを紹介しよう。ホテルは町の少し外れで、バスターミナルの近くだった。二つ星ホテルだったが、なかなか良い雰囲気のホテルだった。
割と古めで最低限の設備ではあるが、それなりに清潔だったし、何より中庭のテラスで自由に過ごせるのが良かった。
アンダルシア州の建築の多くには、パティオ(中庭)が作られている。代表的なのはアルハンブラ宮殿だ。真夏は40度超えが普通だという酷暑のアンダルシアで、昼間に涼しく過ごす場所として設けられているもの。民家やアパートだとご近所とのおしゃべり、洗濯物干し、昼寝、パーティ、余暇など、様々な場面で活躍するらしい。
このパティオ、ローマ帝国時代にローマから持ち込まれたとも、イスラーム文化由来だとも言われるがはっきりしない。かなり古い文化で、しかもかなり合理的で必須の設備であることが分かる。
ハプニングその1 「早朝出発でキレられた」
ホテルの話に戻る。
スタッフさんの応対は人によりけり。おじさんのスタッフさんはすごく紳士的だったけど…チェックアウトの時のおばちゃんの感じはとても悪かった。
出発の日は早朝チェックアウトだったのだが、どうやら早朝出発の場合は事前に伝えておかなければならなかったようで、結構怒られた。気に入ったホテルだっただけに、キレ気味接客のチェックアウトになってしまったのが残念だった。サービスの質が完全にスタッフの裁量に依存しているのも、二つ星のクオリティならではだと思う。このホテルにはサービスを全く期待してなかったので、紳士的なおじさんには感心したけど、キレるおばさんには驚いた。値段も結構安いし、別にやる気がなくても構わないが、突然キレるのはやめてほしいと思う。
(こちらも少しは悪かったとは思うけど、契約書にも書かれていないし、早朝と夕の2本しかバスは無いわけで、言う必要があるなら事前に言っておいて欲しかった。別に早朝叩き起こした訳でもなく、他の作業中だったところを5分ほど手間を取らせたくらいなので、突然キレられるのは少し理不尽に感じた。)
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こういう文化的な時間は満足度が高い。
いざ町歩き
ホテルから町中には歩いて10〜15分ほど。実際に行くまではよく分からなかったが、結構坂がきつくて、移動はそれなりに体力を使う。
でも、田舎町をのんびり散歩できたのは良かった。
白い家々の間を縫うように歩くと、外国に来たという実感が湧く。たまに田舎町も良いものである。基本的に治安が良さそうなので、そう言う意味でも安心して過ごすことができた。
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素敵な風習だと思う。
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町の教会
日本の若者にとって、ヨーロッパの田舎町の教会はやはり憧れだ。
僕が知ってるゲームだと、城に囚われた姫を救い出して逃げる避難経路だったり(ゼルダ・神々のトライフォース)、教団に洗脳された村人たちが襲って来たり(バイオ4)と、ゲームではもう引っ張りだこ。「エルデンリング」とか「ダークソウル」でも教会建築はよく出るみたい。
ゲームの話は置いといて、この町には二つも教会がある。どちらとも素敵な教会だ。
一つは、サンタ・マリア・デ・ラ・アスンシオン教会。訳すと「聖マリア被昇天教会」
この教会はこの地区をまとめる小教区の教会。スタッフさんもすごくフレンドリーで感じが良かった。
ここの名物は塔の上にある展望台。教会の人が教えてくれたように、本当に眺めが良かった。
眺めてる時に突然鐘が鳴ってびっくりしたが、町に響く鐘は人々に時間を知らせているようだ。
「真後ろで鐘が鳴る」という経験がないので、すごく新鮮ではあった。
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陰影を強調したデザインはバロック絵画のよう。
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細部まで作り込まれた黄金の祭壇は、カトリック教会の醍醐味。
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次の教会はサン・ペドロ教会。
この教会、気まぐれで開けているようだった。最初に拝観可能な時間に行っても開いていなかった。
運が良かったのだろうけど、開いてる時の見極めが難し過ぎる。扉が開く条件は不明。
夕方になって開いているところを友人が教えてくれたので運良く入ることができた。
受付のおばちゃんはとても気怠げな感じで、いかにも田舎の宗教施設と言った感じ。
こちらも小さな教会だが、歴史を感じさせる。
祭壇には絵を中心に配置されていて、先に訪れた聖マリア教会の祭壇とは異なる趣向だった。
また祭壇の両脇には、500〜600年ほど前の聖職者と思われる方のミイラが安置されていて、ガラス張りの棺の中を見ることができる。かなり功績を残した方なのかもしれない。比較的簡単にミイラになるのは、乾燥しているアンダルシアの気候ゆえかなと思った。
なぜだかこの教会は落ち着く場所だった。
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町の高級ホテル「パラドール」で昼食
スペイン国内には、歴史的施設(たとえば修道院や教会、城砦、邸宅など)を改修した国営の高級ホテルが多くあり、パラドールという。
パラドールには泊まって贅沢な時間を過ごすこともできるし、昼食だけ食べることもできる。施設によっては人気が高く、値段も比例して高かったり、そんなに高くもなかったりと、宿泊価格はシーズンと観光地の人気度や場所に左右されるようだ。
今回は泊まることはしなかったが、ランチを食べた。眺めが良いところで食べるランチはとても良かった。
スペインでは昼をゆっくり、がっつり食べる習慣があるようで、多くのレストランではコースで提供している。お店に入り、テーブルに着き「一皿目(primer plato)」と「二皿目(segundo plato)」そして「デザート(postre)」を食べるのが一般的。
一皿目はだいたいサラダやスープなどの前菜。米料理やオムレツ、パスタなども一皿目に食べるらしい。
二皿目はメイン。魚料理か肉料理が出される。
また途中で有料でパンを出されたりする。パンが日本で言う「サービス料」を兼ねている値段設定の店も多いらしい。なのでただのパンは少し割高。(要らない時は、出される前に言えば対応してくれるようだ)
飲み物はお酒だったり、コーヒーだったりと、昼でもかなり自由に飲むらしい。昼から街のレストランではビジネスマンと思しき人たちがお酒飲んでたりする。かなり自由だ。仕事に支障が出ない程度に自己管理ができてるなら問題なしという、かなりおおらかな文化である。
シエスタ(昼寝・昼休憩)の文化なのもあるかもしれない。もっとも最近はシエスタの習慣も非効率だという理由で減っているようだが。
さて今回パラドールで食べたランチを写真とともに紹介していこう。
まずは一皿目の、更に前の皿。(なんて言うのかわからないが、テーブルチャージ? 日本の懐石でいう先付)
甘くないラスクみたいな揚げパンに、海鮮風味のソースをかけた料理。ちょっと高級なお店だと、こういう始まり方をするのだと初めて知った。
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そして一皿目。普通のレストランはここから始まる。
我々が頼んだのは、マグロと刻んだ夏野菜の酢漬け(「サルサ・ビナグレタ」と言う)。サルサ=ソースの意味。
サルサ・ビナグレタはオリーブオイル、塩、白ワインビネガーを入れてあり、程よい酸味があって美味。上品に料理されたマグロもかなりマッチしている。
サルサ・ビナグレタは、日本人の感覚で言うと山形の郷土料理「だし」が近いかも。味は異なるが、さながら酢漬けの「だし」だ。夏には良いかもしれない。
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この日は飲まなかったが、白ワインが合うだろう。
さて二皿目。今回はスズキのローストにした。
スペインでは高級食材として親しまれている魚。淡白な魚なので、シンプルな味付けはとても美味しい。
(他にもマグロやカツオ、タラやイワシ、エビ、カニ、などはスペインでもよく食される。特にエビ、マグロ、タラ、イワシは庶民的な食材としてよくレストランで提供される。)
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そして最後はポストレ(デザート)
デザートは必ず食べなければならないわけではなく、オプション。少し足りない時などに食べる。食べ終わった頃に店員さんに聞かれることもあるし、もし聞かれなくても、笑顔で「¿Tienes postre?」と尋ねれば、だいたい上機嫌で教えてくれる。聞き取れない時はメニューをもらおう。
チョコレートケーキ、アイスクリームなどが定番。たまにこだわりのデザートを出す店もあったりする。スペインもスイーツ文化だと思う。
美味しいと思ったお店なら、デザートまで食べるととても喜ばれる。売り上げが伸びるという意味でもあるだろうし、美味しく食べてもらえると嬉しいようだ。
今回食べたのは、パラドールの周年記念(何十周年かは聞き取れなかった)で提供しているというオリジナルのオレンジシャーベット。
これもかなり美味しかった。甘味と酸味のバランスが良かった。手作りのオレンジシャーベットと、下に添えられたオレンジソースが絡み合って、これまた美味しい。
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とても良い昼食だった。スタッフさんの対応もかなり良いし、パラドールはさすがのクオリティ。
今回の旅行中に訪れた店の中でも良いお店だったので、満足だった。
ハプニングその2 「詐欺師に気をつけろ」
この町、基本的には良い町なのだが、当然良い奴ばかりではない。我々は常に気をつけなければならない。ここは外国。無知で無警戒でお人好しな観光客をカモにしてやろうと、あくどい詐欺師が待ち構えているのだから。(特に日本人は狙われやすい。お人好しは日本人の良さで、ヨーロッパでどこに行っても歓迎されるのはすごいと思うけど、ここでは悪い方向に作用した。)
我々がパラドールを出たその時、一人の男が話しかけてきた。気の良いお兄さんと言った感じ。あとよく喋る。(この時点で本来は違和感に気づかなければならない)
良い場所があるから紹介すると言われたので、ずんずんついて行くと、展望台があった。そして20ユーロ支払うことになった。
恐喝ではなくて、向こうもあくまで「なあ、これも仕事なんだぜぇ。お気持ちくれよぉ」のスタンスだったので比較的少額で済んだが、一歩間違えればどんな目に遭っていたかわからない。強盗や凶悪犯罪者だったらその時点でアウト。旅行どころではなくなる。女性だけだったらもっと危険な目に遭わないとも限らない。(本当に気をつけてください)
結論を言えば、特に不潔な感じもしないし…と思って、話を聞いて、ついて行ってしまったのが間違いだった。「知らない人についていかない」は今時小学生でも知っている超重要ワードである。よくお巡りさんが小学校に来て紙芝居で教えてくれる、かの有名な呪文「いかのおすし」である。それを良い大人が実行できなかったのである。少しショック…
金銭的ダメージより精神的ダメージの方が大きかった。
しかも私は知っていたのだ。旅の前にスペイン在住の方のブログや動画で「いくら陽気でフレンドリーなスペイン人でも、知らない人に突然声をかけたりしない。急に話しかけてくる奴は全員ろくでなしだから無視しろ」という超重要アドバイスを読んでいたのだ…
ニューヨークのタイムズスクエアで恐喝まがいの手口で金を取られた経験がありながら、再び騙されてしまったのだった。都会ではなくよりによって田舎町で…
逆に言うと、小さい町だからこそ、よそ者(forastero)の判断がつきやすい。特にスペインでは今でも日本人=「金持ち」のイメージなので、特にスリや詐欺の被害に遭いやすい。もしこれを読んだあなたが危険な人間に目をつけられてしまった時、私たちのように少額・無傷で済む確証はない。ヨーロッパは世界でも相当な先進地域だが、少なくともスペインは日本のように安全ではない。
それは貧富の格差であったり、移民の問題、あるいは経済が停滞しているという問題が根底にあるのだが、今回の件はそこまで深堀りするまでもない。「まずは知らない人、詐欺師に気をつけろ」なのだから。
多少高くついたが、大切なことを教えてくれた。貴重な20ユーロ(約3,000円)の授業料だった。
今回私が得るべき教訓は…
「憧れの観光地だからと浮かれるな」
「急に笑顔で話しかけてくる人に警戒せよ」
「知らない人にほいほいついていかない」
の4本立てでした。海外ではごく普通の心構えなんだろうけど、本当に気をつけなければなりません。
何度もブログなんかで見かけたし、経験として知ったけれど、笑顔でフレンドリーに突然話しかけてくる人は、かなり高い確率で悪い人の可能性がある。(少なくとも「何かをさせたい」という動機の下の行動なので、注意しよう。無視しても問題なし。丁寧に断れば紳士的だけどね。)
以上、アルコス・デ・ラ・フロンテーラでした。
色々あったけど楽しかったし、勉強にはなった。
でももう良いかな…と思う。今度行く機会があれば、この町の近く、シェリー酒の発祥の地ヘレス・デ・ラ・フロンテーラには行ってみたいと思う。
さて、次回はイスパニア日記最終回。トレド。