微妙な二人（日々のエッセイ）

カイトノォトをはじめて良かったこと

もちろん大好きな文章を書けることはもとより、
何か不快感を感じたとき、
「カイトノォトとして見たらえいやん」
と
咄嗟に言葉が出たことがある

びっくりした

ああ、
そうか、
わたし個人じゃなく、カイトノォトとして見たらいいんだ！
というわたしからすれば
世紀の大発見をした気分だった

先日、
島へ渡るフェリーの中で、
前の席に座る中高年のカップルが騒がしかった

うるさいな、と思い注目してみると
女性のほうがかなりテンション高め

おばはん、うるさいなぁ、と不満が表に出始めたとき
「カイトノォトとして見たらえいやん」
という言葉を思い出した

よーし、カイトノォトスイッチオン！と一人でつぶやき、
前列の二人を観察することにした

女性のはしゃぎぶりや、身振り手振りの大きさを見ていると
おや？この二人は長年連れ添った夫婦じゃないぞ、と
見えてくる

これはがぜんおもしろくなるぞ

マニキュアはきれいに塗られ、
髪型は･･･
まあそんなもんか

ん？女性よりはおとなしめな男性
男性に注目してみると、散髪したてに見える
男性なりに頑張っているように見える

そうか、
あなたらはひょっとしてマッチングアプリでマッチングして、
今日はじめて会う感じ！？

でもはじめて会う感じで島に行くのは案外難易度高いよな？
2回目くらい？
カイトノォトの妄想が膨らむ

そうこうしてたら、
ネタも高揚も低下して、女性がちらっとタブレットを見る

これ幸い、と男性もスマホを見る

カイトノォトは思う

これ、やったらダメなパターンね･･･
ぎくしゃくするトロッコに、二人乗ってしまったね
トロッコは、こわいよー！

カイトノォトはにやにやしながらタブレットとスマホを
見ている二人を後ろからずっと眺める

長いな･･･

女性がちらっと横の男性を見る
そこでやめりゃいいのに、まだずっとスマホを見ている
おいおい

またしばらく経って、女性が隣を見る
男性は視線に気づいているのか気づいてないのか、
女性がイヤなのか逃避なのか
真実はわからないけれど、スマホを離さない

女性の心中は、
きっと穏やかでないだろうなぁと少しばかり気の毒になる

モヤモヤするよね

せっかくに晴天なのに、
せっかくの島デートなのに、
せっかくおしゃれして出てきたのに

そんなの、
若かろうが中高年だろうが老人だろうが、
きっと関係ないのに
この人好きだなーと良い思い出にしたいだけなのに

一歩前進したいのに

「こらー！スマホ見るのやめんかい！」

とわたしがお節介をやきそうになった頃、

気まずい空気をぱりんと割ったのは
やっぱり女性のほうだった

「ねえねえ、これってさ･･･」

みたいな、タブレットの操作を質問した

それで硬かった空気は、柔らかくなった

なんでわたしまで緊張するかな！？笑

そして、
すごいすごい
やっぱり女性すごい、と一人で盛り上がった

観察して、
お二人には申し訳なかったが、
このカイトノォトの視点をもつ発見で、
イライラするフェリーの旅４０分が、
楽しい旅40分になった

お二人の幸運を祈ります
うまくいけばいいな